須永剛司 先生から教えてもらったこと1

(※この記事は2015年2月4日に書いた会社のブログからの転載です)

 ここ2〜3年、多摩美術大学情報デザイン学科でお世話になった須永剛司 教授(以下:須永先生)と一緒に仕事をする機会に恵まれ、大変ありがたく感謝しています。打ち合わせをしていると、まるで特別講義を単独受講しているかのように錯覚し、授業料を払いたくなります(笑)。学生の時にきちんと話を聞いていればの後悔の反面、学生の立場ではハードルが高く、現場に出ないと理解しづらい内容だったなという気持ちが同居します。
 今、学んだことを振り返れば新しい発見があるのではないか。そしてそれは、自分がデザインを通して社会に提供している価値とは何かを見つめ直すことになるのではないか。あと2年も経てばデザイナー歴10年を迎えます。残り時間を濃密に過ごすためにも、原点である須永先生に教わったことを振り返ろうと筆を執りました。また、須永先生が2015年の3月で多摩美術大学を退任されると聞いたので、何か恩返し?ができればという想いもありました。

 全ての始まりは2003年の4月。今から12年前に遡ります。情報デザイン学科のオリエンテーションにて、須永先生が「これからは『コト』のデザインです。」と発言していたことは、印象深く覚えています。今でこそデザイン業界全般でこの言葉が飛び交うほどの市民権を獲得していますが、当時はそうでもなく、AXISなどのデザイン雑誌のワンコーナーで取り上げられる程度だった記憶があります。
 須永先生は目に見える「モノ」ではなく目に見えない「コト」のデザインを経験を描くデザイン。つまり、エクスペリエンスデザインの文脈として語っていたと想像しますが実際のところはまだ分かりません(笑)。プロダクトデザインやGUIデザインの延長線上の文脈にある「使いやすいUIを提供して心地よくなってもらう」みたいな狭義の意味合いより、デザイナーこそユーザの活動が豊かになるような体験の設計をしろ、上流工程をやるべきだ!と訴えていました。
 その一方で先生も業界としても、広告やブランド体験の文脈ではあまり語られていませんでした。広告・クリエイティブの専門誌『ブレーン』を眺めてもエクスペリエンスという言葉より、インタラクティブという言葉の方が多く扱われていた印象があります。「スターバックスはコーヒーを売っているのではない!体験を売っているのだ!デザインされた体験なのだ!」と聞いて「それは当然だよね。うんうん」と頷くデザイナーは少なかったのではないでしょうか。

 学生目線で見ると注目を浴びるどころか、2ちゃんねるの多摩美術大学のスレッドで叩かれていた印象の方が強かったです。「情デの言っていることは意味不明」みたいな罵詈雑言を見かけるたびに、須永先生は間違っているのだろうかと心配になり、情報デザイン学科からグラフィックデザイン学科へ転科したい気持ちでいっぱいでした。

 そんな状況の中、須永先生は周りの空気を気にすることなく「旅を10倍楽しくすることのデザイン」や「野菜に愛着を持つための道具」とは何か?を研究テーマに学生と日々模索していました。そんな時代の中、以下のような言葉を残しています。

“これまでのデザイナーの仕事は、そこに在って、具体として見え、手に取れる「対象物」の実感に支えられてきたはずだ。では、情報デザイナーを支える実感はどこにあるのだろう。活動に溶け込んだ「形」はきっと、人々にいい経験をもたらすのだろう。言葉となり語ることのできる「経験」こそ、21世紀のデザイナーを支えるモチーフとなるかもしれない。”(須永剛司, 2003)
多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科 卒業制作作品集 2003 pp249より一部抜粋

 最近「モノづくり」から「コトづくりへ」デザインが領域拡張していくみたいな話を耳にしたり、UX(ユーザーエクスペリエンス)に関する記事を見かけます。そのたびに須永先生が予言していたことは本当だったと嬉しく思います。「iPhoneを代表するスマートフォンを使って『trippiece』のアプリを使って旅を10倍楽しくする体験」は須永先生が見据えていたコトのデザインの1つの解なのかもしれません。しかし、そのような世界が本当に現実化されるとは、12年前の自分は想像もできていなかったのです。

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平野 友規

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