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男子向けサンリオキャラクターの歴史とこれから

サンリオ好きになってから約1年半。
相変わらず周りの芸人らと話す中でサンリオのことを聞かれることは多い。やはり女性はもとより男でも皆ある程度はサンリオに興味はあるようで、ほとんどの人が人生のどこかで(主に幼少期)何かしらのサンリオキャラクターを通ってきているため、どこかサンリオに対して懐かしいものという印象を抱いているのだと思う。

さて僕が主によく話す芸人は自分と同世代、つまり30代の男芸人が多いのだが、ここまで彼らと話をしてきて僕の中である一つの説が浮かび上がった。

即ち『30代の男性が人生の中で必ずと言っていいほど通ってきたもの』


それは、


ドラゴンボール


バックトゥザフューチャー


ブルーハーツ


そして、


けろけろけろっぴであると。



これはもうおそらくそうである。まさに30越え男子の青春のお供四天王といってもいいと思う。

ちなみにドラゴンボールは1984年に始まり95年に終了。バックトゥザフューチャーはパート1が85年公開、パート3が90年公開。ブルーハーツは87年にデビューし95年解散。けろっぴは88年デビューである。歴で言えばけろっぴが一番新しいものということになるが、ほとんどの人がむしろこの4つの中で最も早く出会ったのはけろっぴだと思う。それもおそらく小学校低学年頃までで、それ以降は少しずつ大人の文化と接していくことになるため、子供のためのものだったけろっぴを大人になって忘れてしまっている人が多いのも無理はない。

しかし事実としてけろっぴがデビューしてからの数年間の勢いは凄まじいものがあった。グッズの売り上げはサンリオキャラクターの中でもトップクラスを誇り、90年のキャラクター大賞では第1位に輝いている。僕も幼少期の記憶をたどると自分を取り囲む文房具やらなんやらといったものの中にけろっぴが大量に繁殖していたのを覚えている。まさにあの時代男の子向けのキャラクターといえば完全にけろっぴの独走状態だったわけである。

要するに今大人になってけろっぴの存在を忘れかけている人たちに、今一度けろっぴというキャラクターがどれだけ偉大であったか思い出してほしいのだ。(「偉大であった」と過去形にしてしまったが、けろっぴはいまだに全サンリオキャラクター含めての人気でも上位に入るほど息の長いキャラクターである)


ところでこれほど偉大な男の子向けのキャラクターを生み出したサンリオだが、果たしてけろっぴ以外には男の子向けのキャラクターは存在していないのか?


答えはは?何言ってんだよいるよばか。は?である。


まあ厳密にどこまでが男の子向けでどこからが女の子向けとして生み出されたのかはサンリオ側にしかわからないところではあるが、いちファン目線として「男の子でも好きになる要素が多い」と思えるキャラクターは存在する。

年代順で見ていくと、サンリオキャラクターが初めて生まれた70年代はどうか。この時代を代表するキャラクターといえばキティちゃん、キキララちゃん、マイメロディ嬢がなんといっても有名だが、このお三方はやはり女の子向けだろう。もちろん僕はハイパー大好きだし男ももっと好きになっていい存在だが。
では同じく70年代の人気キャラであるパティ&ジミーはどうか。片方は男の子だし全体的にスタイリッシュでテーマも身近なので男の子がパティ&ジミーのグッズを持っていてもほとんど違和感はないと思う。まあ僕はリアルタイムでパティ&ジミーを体験していないので当時男の子からの支持がどれだけあったのかはわからないが。

また70年代に生まれた有名キャラクターといえばタキシードサムもいる。丸々とした可愛らしい見た目だが、実は初期の頃はしっかりとした紳士のイメージで売り出されていた。80年代中期頃になって「実はドジっ子」という一面を見せることになるのだが、初期の紳士的なイメージと青を基調とした色合いは何気に男の子の琴線にも触れるものがあったのではないかと思う。


続いて80年代のキャラクターはどうだろう。当然80年代ならけろっぴが群を抜いて男子人気は高かったと思うが、けろっぴに次いで多くの男子がグッズを持っていたキャラクターにみんなのたあ坊がいる。
脱力系のゆるい雰囲気で一気にブレイクした男の子のキャラクター。キャラクター大賞でも88年と89年の2年連続で1位を取るなどその勢いは相当なものだったようだ。よりアイコン的な印象の強いけろっぴの方がグッズとしては持ちやすかったというのは子供ながらにあったかも知れないが、サンリオ史上において男の子向けのキャラクターとしてはけろっぴの次点を争うほどの存在ではあったと思う。

80年代は他にもハンギョドンぽこぽん日記、ゴロピカドン、ザ ラナバウツ、あひるのペックルといった男の子にも受けそうな有名キャラクターが多数存在する。特にラナバウツはおそらく完全に男の子をターゲットにして生みだされたキャラクターで、僕もナプキンと筆箱を持っていた記憶がある(ナプキンにはゲボを吐いた記憶もある)。

また80年代最後の大物といえばポチャッコマンズソウルを忘れるわけにはいかないだろう。プリン君に先立って「THE・犬」といった設定のキャラクターで、現在においても圧倒的な人気を誇る彼だが、色合いやデザイン的に見ても男の子が持っていても何ら違和感はないと思う。

こうして見ると80年代はまさに男の子受けするようなキャラクターの黄金期的な時代だったのだなと思うが、なんといっても忘れてもらっては困るのがゾウ自転車である。ゾウが自転車に乗っているキャラクター、ゾウ自転車。名前に「自転車」とついていてもあくまで「サイクリングも趣味のひとつ」ゾウ自転車。名前も設定もデザインもシンプルの極みのようなキャラクターなので、男の子の持ち物に普通にゾウ自転車のデザインがあしらわれていても全く違和感はない。なので世の親御さんたちは是非お子様にゾウ自転車を持たせてあげてください。

グッズこそありませんが。


そして90年代。この時代の男の子向けのキャラクターといえばまずなんといってもバッドばつ丸だろう。黒を基調をした色合いに正義の味方を嫌う天の邪鬼な性格。サンリオ史上おそらく最も尖った設定のキャラクターである。そういうちょい悪な設定はまさに男心に響くというもの。特に僕より少し下の世代(20代後半~30代前半あたり)の男子でばつ丸のグッズを持っていたという人はかなり多い。がっつり男の子受けするキャラクターという意味ではけろっぴ以降はやはりばつ丸が筆頭になると思う。ちなみにけろっぴと同じくキャリア的にはベテランの域に達しながらもいまだに上位人気を保つ息の長いキャラクターである。

他90年代の男の子向けキャラクターといえば、おさるのもんきちウィアーダイナソアーズ、それにラナバウツ以来の乗り物系人気キャラクターであるシンカンセンあたりが有名だろうか。
また96年には男人気も高いプリン君(ポムポムプリン)が登場するが、おそらくプリン君に関しては子供より大人男子からの支持が高い気がする。



2000年代。このあたりになってくるとわかりやすく男の子向けのキャラクターっぽいものはあまり見なくなってくる。ただここからの時代は世間的に他人の趣味趣向に対する偏見が少しずつ薄れていく時代でもあるので、男の子っぽいとか女の子っぽいとかはあまり関係なくキャラクターを好きになっていく人が増えたのではないかと思う。
例えばシナモン(シナモロール)なんかは、その圧倒的人気の中には男性ファンの数も非常に多い。おそらくうちのますモン。をはじめ主に大人男子だが、ぱっと見女の子受けしそうな見た目であるのに男のファンも多いというのは、それだけ人の趣向に性別の壁は重要でないという時代になってきたからだと思う。

また同じ2000年代にはクロミ様も華々しいデビューを飾っているが、クロミ様も男人気はおそらく高い方だと思う。黒と基調とした色合いにちょい悪な性格など、女版ばつ丸のようなキャラクターなので、男受けする要素も多分に持ち合わせていると思うのである(あのヤバTのこやまさんもクロミ様ファン)。

クロミ様と同じ年にデビューしたピアノちゃん(マイスウィートピアノ)もしっかりとした日本語を話す他の多くのキャラクターと違い、「あっぱめ~」「ぷぎゅる~」という珍妙な鳴き声で話す子なので、より動物的な魅力が強く、男女関係なく愛せるタイプの子だと思う。

2000年代で男受けもしそうなキャラクターといったら代表的なのは大体このくらいだろうか。ちなみにラナバウツをスタイリッシュに進化させたようなフォーミュリックスゼットという乗り物系キャラクターも存在するが、あまりヒットはしなかったようだ(見た目は子供向けっぽいがプロフィールが大人でも理解不明な複雑さ)。


そして2010年代。今のところ代表的な人気キャラクターといえばウィッシュミー大先生(ウィッシュミーメル)、ショウベエロック(SHOW BY ROCK!!)、ぼんぼんりぼん、ぐでたま、KIRIMIちゃん.あたりだろうか。
そしてその中でもおそらく最も男のファンが多いのはショウベエロックだろう。男女比率でいったらもしかしたら過去最高に男の割合が多いキャラクター(作品)かも知れない。というのもこの作品でサンリオはこれまでになかった「人間型の萌えキャラ」という路線に踏み込んだからだ。時代の流行を敏感に読み取ってキャラクターに反映させるサンリオなので、アキバ系萌えキャラブームの昨今の流れも見事に取り入れたというわけである。そのうえショウベエロックは何しろキャラクターの数が非常に多く、イケメンキャラも多く登場するので、オタク系の男子女子両方から熱狂的な支持を受けることになる。
そしてショウベエロックの登場以降、同じ路線のとなりの研究生マシマヒメコ。デビルミント鬼龍といったキャラクターがここ最近の間で生まれているが、まだまだこれからといった感じである。

その他2010年代で見逃せない重要なキャラクターといえばサンリオ男子がある。サンリオ好きの男子高校生をサンリオキャラクターとして生み出すというややこしい設定だが、ターゲットは完全に女性であり、当然ファンの比率も圧倒的に女性が多い。しかし作品自体に込められたメッセージにより本来女性や子供が好きになるものというイメージが強かったサンリオのキャラクターを男が好きになるということに対して偏見を持つべきではない、という考えが少なからず広まったのではないかと思うので、そういう意味でサンリオ男子という作品の存在意義は大きいと思う。

その他わかりやすく男の子向けのキャラクターといえばビートロイドもいる。昆虫とロボットという男の子の好きな要素をミックスしたキャラクターだが、あまりヒットはしなかったようだ。

2010年代は大体こんなところだろうか。個人的には2017年にデビューしたまるもふびよりはなんとなくシナモンに近い性質を感じるので、今後男女含めた人気を獲得していける存在のような気がしている。



というわけでここまで時代ごとにサンリオの男の子向けキャラクターについて触れてきたが、やはり時代によってその性質も変化していっているのがわかる。大きく変化が見えるのは2000年を境にしたあたりだろうか。
それまで80年代を頂点に男の子向けのキャラクターも多く生み出してきたサンリオだが、2000年以降は大人男子が女の子向けっぽいキャラクターでも好きになり、2010年代はショウベエロックで新たな大人男子のファン層を獲得し、サンリオ男子でより男女のファンの垣根を低くする。今後はおそらくどんどん男のサンリオファンも増えていき、好きになるキャラクターも女の子っぽいとか男の子っぽいとかは関係なく、好きなものは好きと堂々と言える時代になっていくと思う。
ただそれはあくまで大人男子の話。今現在の子供男子たちにとっての友達となれるサンリオキャラクターはいるのだろうか?子供社会は大人社会よりも当然遅れている。大人社会で個人の趣味趣向に対する偏見がなくなってきたといっても、子供社会にはまだそれは浸透していないだろう。周りと違う個性を持つものを残酷なまでにいじめ、排除しようとするのは子供ならではの思考である。それゆえに女の子向けっぽいサンリオキャラクターのグッズなどは男の子はまだ持ち歩きにくいと思う。
けろっぴやばつ丸といった今でも上位人気を誇るベテラン勢がまだ頑張って今の男の子たちの友達でいてくれているのだろうか。そのあたりは不明である。

なんにせよ昔も今も変わらないのはサンリオの圧倒的な“攻め”の姿勢である。ストレートに「カワイイ」だけでなく、どこか突っ込み所のある変な設定のキャラクターや、新しいジャンルに踏み込むチャレンジ精神(今年はなんとお笑い芸人のキャラクターも誕生)には、これからも面白い歴史を作っていこうという強力な意志とエネルギーを感じさせてくれる。

今後男も女も関係なくサンリオファンがどんどん増えていき、カワイイ文化それイコールサンリオであるということを世界が知る日も近いかも知れない。


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追伸:
これまでサポートしてくださった皆様ありがとうございます。いただいたお金で新しくサンリオグッズを保管するための大きめのガラスのショーケースを2セット購入させていただきました。何とか工夫して置き場も確保したのでしばらくはサンリオグッズの置き場にも困らなそうです。
今後とも気が向いたらよろしくお願いいたします。

気が向いたらお願い致します。サンリオ資金にさせていただきます。