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ぼくは海洋恐怖症

 人それぞれ苦手なものというのはあるものだ。

 例えば僕は「苦手なものは?」と聞かれてまず答えるものとして「虫」がある。幼い時分は全然怖くもなんともなく、バッタなども平気で捕まえたりしていたのだが、いつの間にか近寄ることもできないほど苦手な相手になってしまった。
 この恐怖感の原因や正体はいまいちつかみきれていないところもあるのだが、虫の中でも蝶々やカブトムシといった世間的にイメージのいいタイプの虫は割と平気なところから、単にそのイメージに流されているだけのような気がしないでもない。
 とはいえこれに関しては今後もちょっと克服できそうにないレベルで苦手である。なので事務所にバッタを送りつけたりしないでね。

 そんな中つい最近自分の中で新しく発覚した苦手なものがある。


 である。


 別に泳げないわけではなく水が怖いとかでもない。海が怖いのである。
 これは割と以前から持っていた感覚ではあるのだが、おそらく人によっては美しい風景として見えるであろうひろーい大海原の写真などを見たときに、得も言われぬ不安感に襲われるのだ。

 果てしなく広がる群青色の海。そこから感じられる「無」の感覚。しかしその群青色の中には得体の知れない様々な生物が蠢いている。そんな海という偉大なる大自然に対してある種の“地球の狂気”のようなものを感じてしまうのだ。
 さらにはもし自分がそんな大海原に一人放り出されたら、などというところまで想像して余計怖くなってしまう。身動きの取れない海の中でどんどん呼吸も苦しくなり、暗く深い海の底にゆっくりと沈んでいき、サメなどのおっかない連中に我が体が残酷に蹂躙されていく。そんな映像が頭に浮かぶことで圧倒的な人間の無力さを感じ、絶望感すらも覚えてしまうのである。


 この感覚をどうやら『海洋恐怖症』と言うらしい。


 「高所恐怖症」や「閉所恐怖症」、「先端恐怖症」なんかはよく聞くが、『海洋恐怖症』はあまり聞き馴染みのない言葉である。しかしその言葉自体が存在しているということは、同じ感覚を持つ人が一定数以上はいるということだ(まあ上記の僕の感覚と全く同じではないかも知れないが)。

 海洋恐怖症という言葉を知ったのはつい最近で、ネットでたまたまそれに関する記事を見つけたからだが、海洋恐怖症についてわかりやすい例がある。

 即ち、これから見せる画像群を見て不安や恐怖感を覚える人はどうやらその気があるということだ。


 というわけで“これであなたも海洋恐怖症?画像で見るイッツア海洋恐怖SHOW”スタート。

※既に自覚があり本気でそういう画像を見るのもだめという人は見ないでください。



画像1

 大海原に浮かび上がるデケークジラ。
 クジラ自体に危険性はないのかも知れないが、こんな巨大生物が蠢く海の深さと広さに恐怖を覚えてしまう。



画像2

 沈没船。
 個人的には船の存在自体は人工物なのであまり怖くはない。しかしやはり底の見えない暗い海が怖い。曇ってるのもなんかやだ。



画像3

 これはむしろ怖くない人なんているのか?というレベル。正直言葉にもしたくない残酷な想像をしてしまう。ブルッ。



画像4

 モーリシャス島。これはむしろ美しいと思う人も多いかも知れない。
 ただ我ら海洋恐怖オールスターズからすればこの吸い込まれそうな海の底の巨大な穴には絶望感しか感じない。透明感があり見えすぎているがゆえに怖いやつだ。巨大な船に乗っていたとしてもこの穴の上はちょっと通りたくない。



 いかがだっただろうか。
 これらの画像を見て初めて自分が海洋恐怖症だと自覚した人もいるかも知れない。まあ「恐怖症」という言葉が乗ると何だか重い響きに聞こえてしまうが、その度合いは人それぞれだろうし、僕に関しては結局まだ虫の方が怖い。
 むしろ苦手なものがわかったというのに新たな自分を発見できたことに対してちょっとテンションが上がっているくらいだ。おそらくそもそも海という環境があまり身近でないため、体験するというよりあくまで画像や映像で感じる恐怖の域を出ていないからだと思う。対して虫はそこらじゅうにいやがるもんだから…。


 ちなみに他のメジャーどころの恐怖症(「高所恐怖症」「閉所恐怖症」「先端恐怖症」など)に関して僕個人はどの程度当てはまるかというと、恐らく一般的なレベルを超えていない程度であり、恐怖症と言えるほどではないと思う。多分。勿論どれも状況によるが。

 そういえば昔友達と「一番怖い死に方は何か」というテーマで、僕は「大海原で溺死」、友達は「焼死」を挙げケンカになったことがある。思えばその時既に僕は海洋恐怖症だったのか。

 そう考えると自分という生き物はそれこそ海のように深く、まだまだわからないことだらけだなと思う。


 え、怖い。自分怖い。やだ、自分恐怖症になりそう。


よろしければお願い致します。お気持ち大切に使います。