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読むと恋愛巧者になれるかもしれないBL

こんにちは、ひらりさです。Twitterで『美男の達人』というBL小説の一節を「モテ指南がびっしり書き込まれているので男性にも読んでほしい」とツイートしたら思いのほかRTしていただいてました。そう、実はBLって男同士の関係をファンタジーに描いているわけではなく、意外とリアリティがあったり、男女の恋愛について言及したりしているものなのです。

というわけでせっかくなので、「男性が読むと女性の気持ちがわかってモテるかもしれない(と私が勝手に思っている)BL」を5冊紹介させていただきます。

美男の達人

四の五の言わずにとりあえずこれだけ読んでほしい。
舞台が「モテない男たちにモテテクニックを伝授する『美男塾』」で、イケメンなのに彼女いない歴=年齢(表紙の右の人)な主人公が、つきあいで美男塾の説明会に行ったらうっかりそこの男性講師(左)に一目惚れしてしまって入塾し、おそわったモテテクニックを彼に駆使するも、ことごとくはねかえされ、しかし七転八倒のすえ愛を獲得する……というようなお話です。

「恋愛市場においてあぶれる原因は傷つくことを過度に恐れて消極的になり絶対大丈夫という自信がないと告白せず、振られたらかっこ悪いというちんけなプライドを捨てきれないことや、理想や条件を絶対曲げず相手を受け入れわかりあおうという柔軟な姿勢が足りないことです」 

とにかくびっしりとモテ指南ばかり書かれており、「これはBLなのか?」と腐女子が狐につままれる怪作ですが、めちゃくちゃ秀逸なジェンダーコメディです。非モテが読むと女子でもつらい。

恋する遺伝子

『美男の達人』で小林節にハマった人はこちらもぜひ。なんと、この作品では攻め(右)が、敬愛する劇作家(どう考えても三谷幸喜がモデル)が冷凍保存していた受精卵が、その劇作家の息子(左)によって廃棄されそうになっているという情報を聞き、「自分が育てる」と名乗りを上げてその受精卵の代理母になります。設定はめちゃくちゃ荒唐無稽ですが、彼が代理妊娠して出産するまでの経過の苦労はめちゃくちゃリアルです。

「……世のお母さん達はみんなそういう妊娠のリスクを乗り越えて母親になってうわけだし、俺も無事産めるっていう可能性に賭けたいんですけど、俺が妊娠途中で死ぬかもしれないなら、それはそういう運命だったんだって思うことにする」

ふったらどしゃぶり

過去記事でも何度か紹介していますが、攻め(右)は彼女と同棲中のノンケで、だがしかしセックスレスに悩んでいます。それでひょんなことから「好きな相手と同居しているけど恋愛対象として見てもらえないゲイ」である受け(左)とメールのやりとりをはじめ、それが恋愛に発展していくのですが、彼女とのセックスレス部分についてもかなり紙幅がさいてあり、セックスレスな彼女の心情がえぐい感じで書いてあります。つらい。

「その報告してる時、たまたま本部長がいたんですよ。で、『何だ君は、嫁とやってるだなんて案外変態だな』って」
「どういう意味?」
「もう完全に家族だから、性欲を抱くのはむしろアブノーマルって言いたいんだと思う」


●ステノグラフィカ

まだまだつらいよ一穂ミチ作品。こちらのBLは政治部記者×国会速記官というお仕事BLなのですが、攻めに片思いしている女性記者の、男ばかりの職場で働く上での悩みなどがかなり描かれており、それがつらい……。

「私も、キャバクラくらいなら行きたいんですけど……(中略)……男集団と一緒にキャバに行く私を、『男と対等に付き合えるざっくばらんな私』っていうふうに勘違いした痛い女、って思われるのがいやなんです」

この攻めはバツイチなのですが、奥さんと離婚した理由が「奥さんのほうが能力が上だったから」だったりしてまたさらにつらい。

365+1

上の2作と異なり、別に女子が恋愛にからんでくるわけではないのですが、高校の同級生でともにファッション・美容業界を目指したにもかかわらず、かたや家庭の事情で地元にとどまることになり、かたや東京に出てきらきらな人々に囲まれて活躍している、という状況の男同士カップルが、仕事でのライバル意識と相手への愛情の間でもやもやする話です。

「以前、働きに出たいと言ったら夫に反対された客の話を思い出した。何度も話しあい、最後は夫が折れたらしいが、『しかたないな』という上からの許しの言葉に、あのときは本気で離婚を考えたという。」

BLなんだけど現代の共働き夫婦の悩みが象徴されているような感じです。つらい。



……というわけでいつのまにか「男女の恋愛のつらさが描かれていてつらいBL」紹介になっていましたね。つらいBLマニアなので、ほかにつらいBLをご存じの方、なにとぞよろしくお願いします。


いつもありがとうございます。より良い浪費に使います。