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商業BL小説デビューにおすすめ!一穂ミチ作品を紹介していくよ

2014年10月18日現在
刊行数:27
うち読了数:23

商業BL小説がとにかく大好きなのですが、いまそのなかでも一穂ミチさんにめっちゃはまっていまして、というかBLを読んだことのない方にもとてもおすすめしたくて、そろそろ病気なのではないかというくらい一穂さんの話しかツイートしていないので、それならばどこかにきちんとまとめようと思った結果ものすごく長くなったんですが、よかったらどうぞ。

一穂さんの小説はストーリーと設定がしっかりしていて、濡れ場もそこまでないので、商業BL初心者の方にも楽しんでいただけるはずですー。

★まず読むなら(2冊)

ふったらどしゃぶり When it rains,it pours(2013年、竹美家らら、メディアファクトリーフルール文庫)

毎度毎度しつこいくらいにおすすめしていますが。同棲する彼女とのセックスレスに悩む攻めと、同居する好きな男に受け入れてもらえないことに悩む受けという、いい意味でBLっぽくない設定と、BLっぽくない感情描写が続きつつも、本質にはきわめてBL的なものが描かれている超傑作なので、まずはこれを読んでみていただけるといいのかなと。

最近、スピンオフが出たのですが、これもめちゃくちゃおすすめです。
しかもKindleだと今半額だ!

ナイトガーデン(2014年、竹美家らら、メディアファクトリー、フルール文庫)


★個人的にめちゃめちゃすき(8冊)

「ふったらどしゃぶり」読んで一穂さんおもしろいなと思った人はぜひ。あ、でもBL的なものが全然おっけーな人はこっちから読み始めてもいいかも。個人的な好き度でいうと、実はここのラインの作品のほうが思い入れがある。

【NMBシリーズ】
NMBといっても、難波で踊っているあの子たちではなく「ニューマリーナ・ベイ」という、架空の公営カジノのこと。公営カジノが舞台で、受けや攻めがディーラーだったりするので、ギャンブル場面がいろいろ出てきてかっこいい。BLではけっこう受けの過去のトラウマだったり当て馬などの外敵が二人の恋の邪魔をするんですが、このシリーズはそれもありつつ、お互いの最大のライバルがお互いなところがとても好きです。もっと続くといいな……。

ノーモアベット(2014年、二宮悦巳、新書館ディアプラス文庫)

ディーラー・一哉×都の広報職員・逸。
実は二人は従兄弟で、一哉のディーラーとしての腕は、凄腕ギャンブラーである逸の父にしこまれたもの。自分よりも父に可愛がられていたように思える一哉に反発し、カジノのことも好きになれなかった逸が、最終的に一哉に勝負を仕掛けるのがめっちゃかっこいい。あと、受け攻めの直接対決だけで終わらせず、その後ふたりがさらに「あること」のために命を賭けた大勝負に協力して挑む展開になっていて、どちらかがどちらかを負かすだけの関係でなく見せようという一穂さんの美学が感じられる(気がする)。
それにしても二宮悦巳さんのイラスト好きすぎる。

ワンダーリング(2014年、二宮悦巳、新書館ディアプラス文庫)


ノーモアベットからのスピンオフ。NMB社長・藤堂×一哉の同僚ディーラー・芦原雪。前作でも意味深なやりとりをしていた二人が実は義理のおじと甥(雪が藤堂の兄にひきとられた)であり、雪の名付け親が藤堂であることが明らかになったらもうテンションは上がるしかない。食えないキャラに見せてるけどおぼっちゃんで育ちがいい藤堂(華僑の大富豪の19人の子供の末っ子)と反発をしまくる雪(カジノ狂いの父親にネグレクト)のじりじり感がすごくよかったです。こちらもやはり受け攻めがギャンブル対決をし、その後さらに「あること」のために同じ相手に立ち向かう展開なのがとても好きです。
そして、一穂さんの作品はどの文章も流麗だけど、『ワンダーリング』の台詞は本当一つひとつでの体温の上がり方が半端ない。「人生なんてつまらなくてたまらないって思ってるだろう? そりゃそうだ、お前の人生がつまらないのはな、一度も自分で選んでないからだよ」って雪の育ての親・令輝が言い放つシーンがめっちゃかっこいいんですよね……。その後も、中国人の数字の吉兆を重んじる風習と数字で賭けるギャンブルであるルーレットの特質がうまく噛みあいながら物語がすすむのもめっちゃいい。カジノ行きたい……。


【明光新聞社シリーズ】

明らかに朝◯新聞っぽさのただよう大手新聞社がからんでくるBLのシリーズ。といっても登場人物すべて記者というわけではなく、国会の速記官だったり、不祥事をリークされた製薬会社の社員だったりいろいろなのですが、「おしごと」部分が丁寧に描かれているのがとても好き。

off you go (2012年、青石ももこ、幻冬舎ルチル文庫)

新聞社シリーズだといちばん好きだ……。病弱な妹・十和子のことを気遣ってきた兄・良時(整理部記者)×十和子の夫であり、良時の幼なじみでもある密(特派員)。良時、密、十和子は、密と十和子が同じ病院に入院していたことで出会い、30年近い腐れ縁。日常生活は難なくこなせる程度に健康になった密は良時と同じ明光新聞社に同期入社し、海外特派員として出世コースをわたっている。互いに順風満帆に見えたが、良時は妻の不倫により離婚することになり、その後十和子も密と離婚すると言い出す……というところまでが物語の導入。
その後3人の出会いから現在にいたるまでのいろいろなエピソードが描かれていくんですが、その描き方が本当に良時と密の「2人」の話ではなく、良時と密と十和子の「3人」の話なんですよね。それが「ふったらどしゃぶり」以上にBLとして特異であるものの、そうしたなかでBLを透徹しているのがすごく好き。とか何とか言わずとも密というキャラクターの魅力がとてつもなく、だがしかしそんな密が好きになってしまう良時という男の「ふつう」さ、「健全」さというのも、いいんですよね。一穂さんは「ふつうで安全」「世間にとけこんでいる」ものと、「はずれていて不穏」「世間離れしている」ものとが出会って化学反応を起こすのを描くのがお好きなのだなと思います(そして私もとても好きだ)。
あとタイトルがめっちゃいいですよね。「行っちまえ」って。


ステノグラフィカ(2012年、青石ももこ、幻冬舎ルチル文庫)

明光新聞社シリーズだとこれもすごく好きです。
政治部記者・西口×衆議院速記官・碧。一穂さんのBLの好きなところのひとつは、登場人物たちがきちんと仕事をしている描写があり、その人物の性格や言葉のはしばしがきちんとその「仕事のひと」だなあと感じられること、そして物語としてのオチにもきちんとその仕事が絡んでくることなのですが、とくに「ステのグラフィカ」はすばらしいなあと思います。「速記官」って、でももう募集停止してる仕事なんだよなーと思いながら読んでたらきちんとその話とか受けの葛藤も入ってたし。
あと速記官だからこそ、「攻めの声のよさ」にひかれて、そこを入り口に好きになっていくところもいいんですよね。でも、その攻めも大人の男なので、そして何より新聞記者という業の深い仕事なので、女性部下の好意を見て見ぬふりをしておちょくったり、自分より仕事のできた元女房へのルサンチマンを抱いていたりして、その矮小さもひっくるめて受けが攻めを好きになっていくのが本当にいいです。ちなみに「off you go」の二人は西口の同期です。

明光新聞社シリーズはあと2冊もおもしろいので、ぜひぜひ。

is in you(2011年、青石ももこ、幻冬舎ルチル文庫)

「ワンダーリング」でも思ったけど一穂さんは香港とかに住んでいた経歴がおありなのかな? 中国語がいいスパイスになってます。

アンフォーゲタブル(2014年、青石ももこ、幻冬舎ルチル文庫)

新聞社シリーズはどれも結構長い時のスパンを描いているんだけど、これも相当長い。十何年ぶりとかに再会する。いちばん「マスコミ」的な事件が起きる話です。


以下ふたつは単体でのおすすめ。

アイズオンリー(2013年、小椋ムク、大洋図書SHY NOVELS)

編集者×CGオペレーター。CGオペレーターというのはアレです。グラビアとかのレタッチとかやる人です。実は受けには「相貌失認」という脳障害があり、人の顔を区別・認識できないのですが、それが仕事を選んだ理由や、攻めとの恋愛の障害になったりしていて、最終的にもそれがうまく絡んだ終わり方になっていて、とにかく好き。
そういえば一穂さんの作品にはかなり「再会」ものが多い気がするんですが、あまり鼻につかないのは、「再会」がきちんとしたドラマのもとに起きているからなのかもしれない。

ぼくのスター(2013年、コウキ。、幻冬舎ルチル文庫)

この本の話題を他の人からとんと聞いたことがないのだけどめちゃくちゃ好きだ、なぜならアイドルものだから!って感じですね。俳優駆け出し×在宅アイドルオタ(二人は同級生)と書くと、なんかこじんまりとしたBLに思えるかもしれないが、「遠いみんなのアイドルが好きなドルオタが、身近な自分だけのアイドルに恋に落ちる瞬間」を、遠いみんなのアイドルが好きなドルオタの気持ちというのを少しも貶すことなく実現していてすばらしいなと思うのでした。別腹だよね! それにしてもトップアイドル「ほたるん」の姿勢が私にとってめちゃくちゃ理想のアイドル像だ……。


★めちゃすき(3冊)

キャラ造形やイラスト、設定など、なにかしらが私の好みド直球ではないために「めちゃめちゃ好き」まではいっていないものの、非常におすすめであることには変わりない作品ラインです。

さみしさのレシピ(2010年、北上れん、新書館ディアプラス文庫)

これはねーーーなんかタイトルがわりとありがちに感じたのもあり敬遠していたのですが、かなりミステリ要素にあふれていてとてもよかったです。まさかあの人が最後にキーになってくるとは……みたいな。けっこう「ふったらどしゃぶり」に近いものがある気がします。受けと攻めがパリ旅行しているのでパリに行きたくなった……。そして作中に「ピンチョンの新作買ったなら貸してくれ」という台詞があって驚いた……。

アロー(2011年、金ひかる、幻冬舎ルチル文庫)

これもタイトルと表紙、あらすじ読んでも何なのかよくわからなかったのだよな……。読み始めても結構途中まで何だかよくわからないのだが、根なし草×根なし草というのがなかなか新鮮なパターンで、そして攻めのほうが根なし草かと思っていたら実は受けのほうが根なし草でとあるトラウマをかかえていて、というのが判明して、そこからの話の転がり方がとても鮮やかで好きです。一穂さんは「ひょんなことから居候」な話を結構よく書かれる気がする。「家」のイメージがあります。

おとぎ話のゆくえ(2010年、竹美家らら、幻冬舎ルチル文庫)

あまり少年っぽい受けが好きじゃない(本当のショタではなくて見た目が可憐系な受け)ので、ちょいと敬遠していたのですが……なにこれめっちゃよかったよ!?!?!? ケータイすらあっさり捨ててしまうほど人とのつながりや物や人生への執着心のない家ナシ職ナシ血縁ナシの攻めが、地方都市の大名の血筋の跡取りで「若様」と呼ばれて家にも職にも血にもガッチガチに固められて、でもまっすぐに生きている受けとひかれあう話。これもタイトルだけだとハートフルロマンスストーリーなのかと思っておりそれも敬遠の理由だったんですが、めっちゃよかったです……。攻めは最終的に日本酒の蔵元に就職する。

★すき(6冊)

以下も好きですが、ちょっと前に読んだのもあって印象が薄れているのかも。時間あったら書きます!

雪よ林檎の香のごとく(2008年、竹美家らら、新書館ディアプラス文庫)

窓の灯とおく(2011年、穂波ゆきね、幻冬舎ルチル文庫)
meet,again.(2012年、竹美家らら、新書館ディアプラス文庫)
ハートの問題(2011年、三池ろむこ、新書館ディアプラス文庫)

★まだ読んでない(8冊)

早く読もう自分!

はな咲く家路(2009年、松本ミーコハウス、新書館ディアプラス文庫)
街の灯ひとつ(2010年、穂波ゆきね、幻冬舎ルチル文庫)
シュガーギルド(2011年、小椋ムク、新書館ディアプラス文庫)
バイバイ、ハックルベリー(2013年、金ひかる、新書館ディアプラス文庫)



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