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さよならゴントラン・シェリエ

事件が起きた。

私が毎朝立ち寄っているJR新宿駅南口サザンテラスのパン屋「ゴントラン・シェリエ」が閉店するという知らせが舞い込んだのだ。というか日本撤退するらしい。マジで……。

同じくゴントラン・シェリエ好きの友人(というかさえこさん)からの連絡が届いたのは昨日朝のこと。いつものようにゴントラン・シェリエに立ち寄り、いつものようにアイスロイヤルミルクティーLサイズ(むちゃくちゃ美味しいがとくにゴントラン・シェリエの看板商品というわけでもない。正直朝からバターの重たいパンを食べる気にならない日もあるので、5日中4日くらいはアイルロイヤルミルクティーLサイズだけを頼んでいるのだ。510円)を頼んで、会社に出勤したばかりのタイミングだ。きびきびと働くスタッフたちの人数にとくに変わりはなかったし、立ち寄る観光客の多彩さにも変わりはなかった。「今日で最後です」なんてこともどこにも書いてなかったぞ……。しかし最後だと知っていたなら、アイスロイヤルミルクティーだけではなく、クロワッサン(むちゃくちゃ美味しいゴントラン・シェリエの看板商品。毎日でも食べられるのだが毎日食べるとデブになるので週に1回で我慢している。190円)も買うべきだった……。

ゴントラン・シェリエと私の出会いは、私がこの新宿南口サザンテラスにあるIT系企業に勤務するようになった2016年1月のこと……ではない。もっともっと前、ゴントラン・シェリエが日本上陸した2012年8月にさかのぼる。当時の私は新卒で、渋谷にある某ベンチャーwebメディア企業に勤務していたのですが、そこにさっそうと現れたのが、ゴントラン・シェリエの日本1号店である渋谷店だったのだ。

新宿店と今の会社に比べると、当時は店とオフィスの距離が離れていたので&給料が今よりも安かったので、さすがに朝食にはしていなかったのだが、ちょっと仕事がたてこんだ昼休みなどは、息抜きに道玄坂を駆け下りて、片道15分をかけて、宮益坂下のゴントラン・シェリエに向かったものだ。あの頃は、クロワッサン・オ・ジャンボン(いわゆるクロックムッシュを、ゴントラン・シェリエの看板商品であるクロワッサンを土台につくったもの。あたためてもらうと脂がでとでとになり、罪深いカロリーの味わいがする。340円)ばかり食べていた。

渋谷店は盛況で、次第にフロアを増やし、販売フロアのほかに、店内でだけ食べられるレストランフロアと、販売フロアで買った商品を食べられるカフェテリアのフロアがもうけられた。つねに人が多いために落ち着いて食べられる喫茶店やカフェなどが思いのほか少ない渋谷エリアにおいて、ゴントラン・シェリアのカフェテリアフロアの存在は結構便利で、当時関西に住んでいたさえこさんともゴントラン・シェリエで待ち合わせておしゃべりした思い出がある。

そんなゴントラン・シェリエが、日本からなくなってしまうだなんて、昨日まで全く思っていなかった。この7月に私は新宿の会社からふたたび渋谷近辺の会社へと転職するのだが、そのときも「通勤のときにゴントラン・シェリエ寄れるかな……」となんとなく思っていたのだ。今後もゴントラン・シェリエをこよなく愛し、アイスロイヤルミルクティーとクロワッサンを堪能しつづけることを当然のように頭に置いていたのである。なんてことだ……。

いちおう、ゴントラン・シェリエはあとかたもなくなくなるわけではない。日本での運営会社ベイクルーズの方針変更で、同社のオリジナルブーランジェリーブランド「ブール・アンジュ」としてリニューアルオープンしていくらしい。ゴントラン・シェリエの日本撤退は昨日知った私だったが、実はブール・アンジュのことはすでに確認済だ。この間、転職先に立ち寄った帰りにゴントラン・シェリエ渋谷店の前を通りがかったら、もともと黄色いトーンの外装だった店舗が緑色に変わっていて「あれ?」と思うという出来事があったのだ。そのときに、たしかに「おかしいな」とは感じたのだが、中をのぞきみたらなじみのゴントラン・シェリエのクロワッサンなどによく似たパンたちが並んでいたので、「なんかイメチェンしたのかな」とだけ思ったのだった。実際ゴントラン・シェリエの業績がすげーー悪くて……ということはないと思うので、ブール・アンジュも、全然違う雰囲気のお店にはならないと信じたい……まあ見た目は似てるけどパンの味は全然違うということはありえますね。

こんなにも毎日通っていたお店(別に常連認定はされていたことがないが)がなくなってしまうというのが初めての経験で、そのことだけでも胸にぽっかりと穴があいたような気持ちで、せめて自分なりの最後の挨拶だけでもしたかったのに、今朝JR新宿南口サザンテラスのゴントラン・シェリエにいつものように向かったら、そこはすでにさびしげな表情でシャッターを半分おろしている状態だった。

しかたなく、写真を撮って、スターバックスでクラシックティー・フラペチーノを買った。そう、私にはまだスターバックスがあるのだ。

シャッターを半分しめたゴントラン・シェリエはおそらくこれからブール・アンジュに生まれ変わるのだろう。新宿南口サザンテラスのお店が新装開店するころには、私はもう渋谷に勤務している。果たしてブール・アンジュに足を踏み入れる日が来るのかは、まだわからない。いっそのこと一生足を向けないというのも、それはそれでゴントラン・シェリエへの手向けになるのだろうか?(まあ日本撤退したとはいえまだブランドは存在してるし、ゴントラン・シェリエ氏本人はご存命なのだが……)

さよならゴントラン・シェリエ。


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