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記事一覧
憑在論と幻想文学 アーサー・マッケン篇
まえがき何度も当note/当資料室内で述べてきたことだが、日本の憑在論と音楽の接続は、ほぼすべてマーク・フィッシャーと彼がウォーリック大学在籍時代に所属したサイバネティック文化研究ユニット経由の資本主義リアリズムが入り口になっている。それは(生活圏内に大学、クラブ、程度の差はあれど文化的な施設があるような)都市生活者のサイクルが孕む矛盾を呪い、反面その永劫的な再生産から抜け出せないという前提を受
エルフの子供たち~サイケデリックとJ.R.R.トールキン
『ユリイカ』2023年11月臨時増刊号「総特集=J.R.R.トールキン」購入に伴い、同誌1992年7月号のトールキン特集号を棚から引っ張り出して併読している。前者は今日ならではの視点(木澤佐登志『トールキンを読むシリコンバレー』、井辻朱美『ファンタジーの祖型はなぜトールキンなのか』など)もあるが、新しい視点が得られるというよりは、見え方が変わるといった方が正しいか。古典だけに時代が持つモラルの変化
もっとみる2023年4月更新報告
今月は駄目でしたね。幻想弾語(フォーク、フォークロック、フリーフォークetc)を追う記事が1本だけ。それと2017年のスティーヴン・ステイプルトンインタビューくらいでしょうか。
このマガジンとはあまり関係がありませんが、個人の活動歴をしたためた冊子を作ったので、そちらもご参照ください。
2023年3月更新報告
あまり発表できていない気がする。来月からはしばらくビデオゲームばっかり書くことになりそう。
J.R.R.トールキンの60年代再評価とサイケデリック・ロックの繋がり
ブリティッシュ・フォークからフリーフォークまで、各現象の音楽・文学的背景を調べる連続シリーズ。
過去記事はすべて上に移動済。
2023年2月更新報告
Death In Juneのニューアルバムが突如発表されたというので確認してみたら、なんと過去の曲をシンセウェイヴ化させたものだったので呆気にとられた…
WEBにもあるけど、NWW記事はnoteにもアップしているからそちらを。
ビデオゲームは遊ぶのにやっとで考えがなかなかまとまりません。
パストラル憑在論 Andrew ChalkとRobert Haighについて
『MUSIC + GHOST』で主に取り上げた英国のGhost Box Recordsは、本国の音楽ジャーナリズム内で憑在論(hauntology)の実例とみなされている。マーク・フィッシャーやサイモン・レイノルズが指摘した、失われた未来を幻視する方法論としてのサンプリング、過去を現在に召喚することへの執着という共通項で、Ghost BoxはBurialなどの作家と同じカテゴリに入れられていた。
もっとみるMusic Is Myth : The Incredible String BandとBoards Of Canada
来月発行予定の『MUSIC + GHOST』には、The Incredible String Bandによって分かれた二つの英国的ノスタルジアについて記述している。一つは将来のネオフォーク運動の呼び水となったCurrent 93のフォーク・ミュージック転向。もう一つがBoards of Canadaである。文章が長くなったせいで、当初の予定よりもチャプターを一つ増やすことにした。
今回は当該の文章
英米フリーフォークの幽霊的地図
サイモン・レイノルズ『Retromania』のあるチャプター「Spectral Americana」冒頭で、著者は「音楽における憑在論は、当事者たちが生まれ育った国や世代ごとの特色を持つのではないか」と推測している。英国のHauntologist(憑在論者)は幼い頃の文化的な記憶を現代に召喚しようと試みており、Ghost Boxのようなテレビとラジオに夢中のインドア派が、当時の公共放送や奇妙なS
もっとみるブリティッシュ・アヴァンギャルド・ミューザック③
記憶の中にある曖昧なイメージを、音とヴィジュアルにコピーするのではなく、置き換えることがGhost Boxの創造的ポリシーである。それは頭に描いた図と、実際におこしたそれが一致することを意味しない。自身の内面を延々とさまよい歩く過程の、ログのようなものかもしれない。こうした創造面は「自分たちのやっていることを完全に理解できる相手としかビジネスをしない」という理念の根拠となり、それは経営でも貫徹され
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