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女性が実際のポジションを誤解されたら?ジェンダーバイアスの一種「役職不信」とは

4月から開始した実在した日本で初めての女性弁護士のストーリを基にした朝ドラ「虎の翼」。テンポの良い脚本で話題になっている。先日こんな場面があった。

舞台は昭和の初め。大学の文化祭の準備で主人公寅子宅を同級生達が訪ねた時のこと。
部屋にお茶を運んできた人をみて同級生の一人が寅子に「お宅には女中さんがいらっしゃるの?」と言った。そのなにげない言葉にお茶を運んできた人が大きく動揺する。その動揺ぶりをみてすかさず寅子が「こちらは同居している兄の妻で私の友人でもある」と紹介する。

令和の現在でも似たような事が起きる。
例えば、女性が会議室にお茶を運んできて、一瞬秘書の方かと思ったら名刺交換を始め、打ち合わせのリード役をした。

実は女性はリーダーシップ、つまり一般に男性が務めると考えられているCEO、教授、弁護士、医師、エンジニアといったポジションではなく、秘書やアシスタント、看護師、妻のように、一般に女性が務めると考えられているサポート役だと誤解される現象を指す。
ジェンダーバイアスの一種である「役職不信 Role Incredulity」である。

ジェンダーバイアス研究者のDiehland氏とDzubinski氏がインタビューや自由回答形式質問法による調査、ソーシャルメディアの投稿、メディアに掲載された記事から収集したデータセットについて検証を行ったところ、役職不信はありがちな問題であるという事実が浮かび上がってきた①。

実際SNSでRole Incredulityと英語でキーワード検索すると医者であるにも係わらず何度も看護師と言われる等々多くの役割不信を経験をした方のフラストレーションや投稿を垣間見ることができる。

私自身も以前コンサルタントとして客先に出向いた際に1対1の面談のお約束でも「お一人ですか?」といわれたり、男性と打ち合わせに出向くと職責、立場の関係なく最初はあたかもそれが当たり前のように男性を奥の席に通したり、真っ先に男性に笑顔で名刺交換をされたりしたものである。女性リーダー関連のイベント実施時には役割不信に関する声がしばしば寄せられた。

役割不信の経験をした女性が居心地のよくない思いを飲み込んで笑顔で振る舞わなければいけないだけでなく、先述のHBRの記事では身の危険も起きたと記されている。言うことをかなかったせいで怪我をした例もあったという。アメリカでは40歳以下や若く見られがちなアジア系の人に役割不信がみられる傾向がある②。

先述のHBRの記事では、役職にある女性は
・役割を明確に且つユーモアを含め自己紹介をする
・同席している他者が女性の役職者の役割を含め紹介をする
・メールの署名にはタイトルを必ず入れる
・誤って認識してしまった側は素直に謝る等アドバイスが載せられている。

男性がジェンダーバイアスに気づき、インクルーシブな環境を作る為の10のアドバイス記事も掲載されている③。

残念ながら、ジェンダーバイアスや役割不信に関する研究は今後もすぐに無くなる訳ではないだろう。組織と個人は取引先との関係を含めジェンダーバイアスには、ユーモアを交えてフィードバックできるような心理的安全性を醸成する努力が大切だ。

引用文献
①女性であることを理由にポジションを誤解されたら、どう対処すべきか, エイミー・ディール、リアン M. ヅビンスキー、HBR
②How to Establish Credibility in a Self-Introduction、Forbes
③Ten Ways to Become Male Ally at Work, Crowell School of Business








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