abemaTVの将棋企画は藤井七冠の本音が聞ける貴重な場かも

9月16日の土曜日のAbemaTV 将棋トーナメントを見た。

チーム藤井 対 チーム稲葉の戦い。
チーム藤井は、藤井総太七冠と順位戦B級1組で竜王戦2組の澤田七段、それと新四段になったばかりで藤井七冠と同門の兄弟子の斎藤四段の3人のチーム構成。

勝負は、チーム藤井が4連勝した後、チーム稲葉が5連勝。
トータルで5勝4敗と、稲葉チームが勝利した。

チーム藤井は4連勝した後、斉藤四段を5戦目に出場させた。ここまで斎藤四段は先手番で出場していた。
5戦目で斎藤四段が敗戦した後、6戦目に澤田七段が出場して敗戦、7戦目に勝負を決める藤井七冠が出場し先手番で出場。この一戦で決着を目指していたと思われるが、藤井七冠は出口六段に負け、8戦目に突入した。

8戦目に澤田七段が敗戦し、9戦目に後手番で斎藤四段が出場して敗戦。
チーム藤井の敗退が決定した。

AbemaTV 将棋トーナメントでは、翌週に対局中の他のチームメイトが控え室での様子を見ることができる。
9戦目のチーム藤井の控室の映像を見た。普段は対局後のインタビューでも言葉数が少ない藤井だが、この時は饒舌に話していた。

その話によると、藤井七冠は第7戦での自身の負けを後悔しており(準決勝まで藤井七冠は全勝)、先手番での負け、そして斎藤四段を第7戦に出さなかったことを後悔していた。

もし第7戦で斎藤四段が出場していたら、斎藤四段は先手番で指すことができ、自分が負けても後の戦いでチームメートが挽回してくれるというプレッシャーが少ない状況で指すことができたはずだ。


藤井七冠の発言を聞くと、おそらく藤井七冠は第7戦で決着をつけるつもりで自分が出場することを決めたのだろう。そして、藤井七冠が控え室で言っていたことは、斉藤四段を信頼して第7戦で出場させていればよかったという話だった(出場しないという本人の意志を尊重していた)。

私が思うに、藤井七冠は20歳という若さでありながら、年上の兄弟子のことを深く考慮していた。どういう風に斎藤四段を起用すれば、彼が成長すると同時にチームが勝利できるかを深く考えていたということだ。

あと、4連勝のあとの5連敗は、この企画で初で、記録を作ってしまった。と意外にも記録を気にしていた。
普段のインタビューでは、あまり記録は意識していないという発言が多いので。

あと、斎藤四段のために決勝まで行けば賞金が出たこと、意外と優勝にこだわっていたこと、斎藤四段が最終局でありえない手を指したときに、その場面では自動的に手が動くまで棋譜並べをするべきと指摘していたこと、この辺りの七冠を達成する考え方の凄みを感じた。
さすが軍曹と言われる永瀬王座が一方的に多大な敬意を示しているだけのことはある。

蛇足だが。
控室でのその他の発言では。
「(対局のある場面での駒の)位置関係が良くないと教わったんだけどな、師匠に教わってないのかな?」
と皮肉っぽい発言や
(敗勢だけど粘っている兄弟子に対して)「見てないけど、まだ続いてる。終わってるはずの所から長い。もう20手前に終わっている」
など、あけすけなヤンチャ発言がかなり見られた。

藤井七冠の本音が聞けるのは、年に1回のこの企画だけなのかもしれない。


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