マッチレポート

【2019 J1 第31節】横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 マッチレポート

1.はじめに

 どうも、ヒロ(@hiro121720_yfm)です。

 いつもは1試合について、通常レビューとゆるれびゅ~の2つを書いていますが、今回は追加でもう1つ書いてみようかと思います。それがこちらのマッチレポート。今までレビューに盛り込んでいたデータ部分を別に分けた形となります。

①データ集計によりレビュー投稿が遅めになっている
②ゆるれびゅ~にデータは不要だと感じるので、切り離しができてよい
③データについても語るので、レビューの文字数がかさむ

 分けた理由としては上記になります。こちらはレビューの内容を深掘りしたり、裏付けするための補助として、ご興味のある方にお読みいただけたらと思います。

 今後どうなるかはわかりませんが、とりあえず実験です。どんな内容があるかは目次を参照してみてください。では、いってみましょう。

 通常レビューは以下になります。

 ゆるれびゅ~は以下になります。

2.前半のマリノスパスマップ比較

 前半で守り方が変わった札幌。それによってマリノスのビルドアップにどのような影響を与えたのか。前半0~20分25~45分までの成功パスについて、パスマップを作成し、比較してみました。

 パス数データについては、左がパスの出し手、上がパスの受け手になります。例えば、パギから畠中へ出したパス数は1となります。なので、一番右の数値はパスを出した合計。一番下の数値はパスを受けた合計の数を表しています。

 また、パスマップはパス数に応じて選手を表す四角形の大きさを決めています。パス方向を示す矢印は、パス数が多いほど濃く、大きくなっています。例えば最初のものだと、チアゴからパギへのパス数が5本なので、他に比べて濃く、大きな矢印が描かれています。

 パスマップの詳細や、作り方については下記をご参考ください。

■パス数データ

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■パスマップ

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 まず注目するのはそれぞれでのパス数差でしょう。最初は総パス数52本に対し、守り方を変えてからは131本と約2.5倍も増えていました。荒野を上げ、チャナティップを内側に配置し、マリノスの中盤をしっかり捕まえたことによる効果は出ていたと言えるでしょう。

 効果が出ていたのはパスマップにも表れており、マリノスお得意の左サイドのビルドアップもかろうじて畠中から扇原へのパスが多めなくらい。チアゴからパギへのパスが多いことが、相手のプレッシャーの強さと、パスコースの封鎖具合を物語っています。

 それでも光明が見えているのが右サイド。松原から仲川への矢印が存在感を放ちます。チャナティップを内側に配置して松原を放置したことにより、彼は比較的楽に前を向いてパスをすることができたことが伺えます。

 翻って、相手が守り方を中盤が横並びになるような形に変えたあとは息を吹き返します。左サイドの選手を中心にパス数が激増。パスマップを見ても矢印がそこへ集中していることを表しているでしょう。

 また、マルコスのパス数が多いことから、中盤をフラットにした影響で彼を捕まえきれなかったこともわかります。マリノスの司令塔として多くの選手にパスを送っていました。

3.マリノスのPPDA測定

 次に、この試合はマリノスのハイプレスが猛威を奮っていたように感じられたため、それを表す指標の1つであるPPDAを測定してみました。

 PPDAとは、Passed allowed Per Defensive Actionの略称です。言葉の通り、こちらの数値は『自陣で許した相手のパス数』を『味方の守備アクション回数』で割ったものになります。守備アクションを行ったが、自陣で許したパス本数は少なかった。ということは、相手陣内でボールを奪い取ることに成功したと言えるでしょう。つまり、この数値が低いほど敵陣でボールを奪う回数が多いということになります。反対に、この数値が低いほど自陣へ相手を引き込んでいることになります。

 詳しくはお市さんのレビューをご覧いただくと理解が進むと思いますのでぜひお読みください。

・デュエル
・タックル(成功失敗問わず)
・ファール

 今回守備アクションとしては上記を集計しました。オフサイドを取ったときは含めていません。また、セットプレーでのブロックやセーブも含めておりません。

 以降に示す図は、青色のバーが『自陣で許した相手のパス数』、赤色のバーが『味方の守備アクション回数』、オレンジの折れ線が『PPDA』となります。

 色々書いてきましたが、要は「オレンジの数値が低いとハイプレスがハマってる」とご認識いただければと思います。もちろん、マリノス的には数値が低い方が嬉しいですよね。では、見ていきましょう。

■前半のPPDA遷移(5分区切り)

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 開始4分で2点を取ったことが象徴している通り、最初の5分は非常に低いPPDAを記録していました。しかし前半25~40分までは数値が増加。札幌ディフェンスラインがこちらのハイププレスに慣れ、かわせるようになったからかもしれません。

 基本的には相手のパス数よりも多くの守備アクション数を記録していたため、前半は激しいプレスを回数多く行っていたことがわかります。攻撃もそうですが、守備に関しても前半からフルスロットルなマリノスということを表しているでしょう。

■後半のPPDA遷移(5分区切り)

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 後半になると相手パス数が上回ることもありましたが、概ね70分ごろまでは低めのPPDAを記録していました。しかしその後数値は上昇。マリノスのハイプレスはもって70分までということがわかります。

 また、60分ごろから宮澤が投入された影響も無視できません。70分以降相手のパス数が増加しているのは、彼が交代で入り、後方でハイプレスをかわしてビルドアップすることができたからでしょう。マリノスが失点したのもその時間あたりなので、前線の選手がスタミナ切れした時間に投入された宮澤の辛さが伺えます。

■1試合分のPPDA遷移(15分区切り)

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 前後半で細かく見ていきましたが、試合全体を15分区切りで集計してみました。こうすると後半60分ごろからグッと数値が上昇します。マリノス前線の疲れと、宮澤投入がここの時間と重なります。試合全体を大雑把に見ても、60分ごろまで機能したマリノスのハイプレス。交代投入された宮澤が札幌ビルドアップを安定させた。この2つを裏付ける結果になったことがわかりました。

4.宮澤投入前後での札幌パスマップ比較

 今度は札幌のビルドアップを見ていきましょう。こちらは宮澤の投入によって大きな変化が生まれたと思います。そのため、前半25~45分と後半70~90分の成功パスに関してパスマップを作成し、比較してみました。

■パス数データ

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■パスマップ

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 前半は深井がハブ役となり、札幌の選手たちに配球していたことがわかります。また、福森も多くのパスを出していました。パスマップを見ると、福森、深井、荒野の3人でパス交換していたことが多かったようです。キム・ミンテはそこまで多くビルドアップに関わっていなかったようです。

 宮澤投入後は後方でのパス数が増加。特に宮澤、福森、深井、荒野の4人でのパス交換が多く、矢印が大きく濃いものが多く見受けられます。中央でうまくローテーションし、マリノスのハイプレスを掻い潜った結果、このような図になったのでしょう。宮澤投入による後方ビルドアップの安定化は成功したことを表していると思います。

5.札幌のロングボール分析

 最後に、札幌が出したロングボールについて分析してみようと思います。今回はロングボールの出し手と受けてに分けて集計しました。

 出し手に関しては、『ロングボール総数』、『ロングボール成功数』、『ロングボールを蹴ったときにプレッシャーがあった回数』(被プレッシャー数)を集計。

 受け手に関しては、『ロングボールを受けた総数』、『ロングボール成功数』を集計。

 それぞれ前後半に分けて集計し、比較してみましょう。

■ロングボールの出し手

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 前半はク・ソンユンと菅のロングボール数が多かったようです。この両名はプレッシャーがある中でも高い成功率を記録していました。相手に寄せられても動じないパススキルがあるようです。

 反対に福森はプレッシャーの影響を受けていると言っていいかと思います。ロングボールを送るときかなりの頻度でプレッシャーを受け、その結果成功したのは1本だけでした。また、キム・ミンテも激しいプレッシャーを受けていたようです。成功数が0本を記録していました。

 しかし、後半になるとク・ソンユンの成功数は0本に。後半はマリノスのプレッシャーに屈したようです。また、福森の成功数も大きく伸びず。この日は試合を通じて彼のロングボールを抑えることができていたと言えるのではないでしょうか。

 菅は相変わらず高い成功率を記録。深井と共に、彼らのキックはこの試合で冴え渡っていたようです。

■ロングボールの受け手

画像9

 次に受けてを見てみましょう。前半は2トップに加え、両翼であるルーカスと菅へ多くのロングボールが送られていました。2トップが受けた成功数は高く、こちらが思っていた以上に蹴らせたボールでもおさめていたようです。

 しかし、両翼への成功数はそこまで高くなかったようです。チャナティップも含め、2トップ以外へのロングボールはある程度マリノスが回収できていたようです。たしかに前半はサイドからピンチになった頻度は低かったように思います。

 後半になると状況は一変。今度は2トップへの成功数が低くなり、両翼への値が高くなっています。2トップへの直接的な放り込みは対処できるようになりましたが、前線の選手の疲れからか、サイドへのボールは渡りやすくなっていたのかもしれません。後方でのビルドアップが安定したこともあり、本来狙いたかったサイド攻略をできるようになったと言い換えることもできるでしょう。

6.おわりに

 さて、今回はやりたかったことが盛りだくさんだったこともあり、おまけのつもりがこのボリュームとなってしまいました。しかし斜め読みしてもそれとなくわかるのが、数値を可視化する旨味だと思っています。

 レビューで感じていた相手の可変によってボールの動き方が変わったことだったり、この試合えげつなかったマリノスハイプレス。後半失速することも含め、印象がそのままデータに表れたという印象でした。

 では次回、松本戦でお会いいたしましょう。膨大な量をお読みいただきましてありがとうございました。

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