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【2019 J1 第6節】浦和レッズvs横浜F・マリノス マッチレビュー

1.はじめに

0-3で快勝をおさめたアウェイ浦和レッズ戦。
前節の課題の解決方法をピッチ内で表現してくれた選手たちを、本当に頼もしく思います。
ビルドアップのバリエーションも増えたこの試合、今後も継続していい成績をおさめられるようになるといいですね。

2.スタメン

■浦和レッズ

・前節と同様の4-4-2の形
・宇賀神ではなく、山中を起用

■横浜F・マリノス

・前節と同様の先発メンバー
・大津怪我に伴い、侑士が今シーズン初のベンチ入り

3.マリノスビルドアップについて

①喜田が下りて3バック化して数的優位を作る
喜田が前方へ上がり、入れ替わるようにして天野が下りてくる
③上がってきた喜田への対応のため青木が上がってくる
④青木が上がってできたスペースにマルコスが下りてくる
⑤マルコスがいた場所へ広瀬が上がる
⑥長澤は広瀬も見なければいけないので、空いた脇に喜田が入る

こちらは前半3分ごろのシーンになります。

相手の2トップに対し、喜田が下りることによって、後方に数的優位を作っていました。
その後、天野が喜田の位置まで下り、喜田が天野のいた位置あたりまで入れ替わるように動きました。

いるべき場所にこちらのアンカーがいないため、相手2トップはどこを基準にコースを切りながらCBに寄せればいいかがわからなくなり、なんとなくCBに寄せるようにしていました。
その結果、入れ替わった天野に対してのプレッシャーが薄く、2人のCBと天野の3人で容易にボールをまわすことができました。

また、4-4-2攻略の基本である、相手の間に位置すること。これをマリノスは選手をローテーションすることにより、立つ人をズラしながら相手のマークのズレを誘いました。
マルコスが下り、広瀬が上がる。左サイドの低い位置が空くので、先ほど天野と入れ替わった喜田がその位置に侵入。

レッズからしてみたら、基準のポジションに相手がいないことになることと、選手と選手の間に入られるため、誰がマークにつくべきか迷う状況、またはどちらにでも対応できるような中間ポジションを取らざるをえない状況が生まれることになります。

切る方向の基準点を失った2トップのプレスはほぼ機能せず、また、流動的な選手の動きにも誰がつくかが明確になっていなかったため、後方では比較的優位にボールを左右にまわし、相手のマークが大きくズレることを狙えていました。

天野が左サイドの大外に下りる
②マルコスが下りて相手の間に入る
③広瀬が上がってマルコスが釣り出したCBの裏へダッシュ

こちらは前半16分ごろのシーンになります。

先ほどもそうですが、この試合、天野はよく後ろに下りてビルドアップに参加していました
この場合、左サイドの大外に下りて幅を確保していました。それにより、興梠の位置を外側にすることができ、エヴェルトンとの間が空きます。
結果的にその間を畠中が通して、下りてきたエジガルにボールを当てることができました。

また、試合を通して左サイドの循環はスムーズでした。

①天野が低い位置に下りる
②空いた中盤にマルコスが下りる
③マルコスがいた高い位置に広瀬が上がる

この一連の動きにより、このときはマウリシオを引っ張ってくることができました。そのまま空いた裏目掛けて広瀬はランニング。落としをもらったマルコスから縦パスが出てチャンスとなりました。

前節は喜田が下りること、または松原が下りることによって後方に数的優位を作っていましたが、この試合では天野が下りてくることも行っていました。後方での数的優位の作り方にバリエーションが増えたため、相手が狙いを絞って対応することを更に困難なものにさせることが今後できるのではないかと思います。

■喜田が下りてくる場合

喜田が下りてきて後方に3バックを形成する場合です。

この場合、アンカーへのコースを背中で切りながらCBに寄せる、ということをするための基準となるアンカーが不在になるため、相手FWのコース限定の仕方が明確にならないことがあるかと思います。
その場合、「FW - 中盤」の間のどこかしらが空くことになるため、そこにボールを出すことによって前進できるようになるはずです。

■松原が下りてくる場合

松原が下りてきて後方に3バックを形成する場合です。

WGが下りることと、IHが上がることによる循環に加え、フリーマン的になっているアンカーも交えて3名で相手選手の間に立つことを狙いとします。
間に立つことによって、各所で相手に二択などを迫りつつ、それによってマークがズレた場合はそこへパスをつけることによって前進を図ります。

■天野が下りてくる場合

天野が下りて後方に3バックを形成する場合です。

IHが下がる。WGがIHがいた位置に下がる。SBがWGがいた位置に上がる。
この循環を左サイドで行い、相手選手の間に立つことを狙います。
先ほどのようにアンカーがそちらのサイドに絡んでもいいですが、逆サイドに離れ、相手FWを誘導することも面白いと思います。
FWのラインの人数を薄くすることによって、ボールを前進しやすい状況作りを狙います。

以上の3つが、鳥栖戦と浦和戦にて実践してた選手が下りることより、自分がこうしたらいいんじゃないかな?というビルドアップパターンの提案になります。
今後4-4-2を攻略する際はこのように多様なパターンを用いて、相手の間に入って空間を広げるようなアプローチができると、苦手意識が薄くなるのかなと思います。

4.ゴールキックについて

こちらは前半22分のシーンになります。

この試合、浦和はこちらのゴールキックの際に繋げさせないようにするため、前方からかなりな人数を割いてマンツーマンでマークをしてきていました。最大の特徴はCBであるマウリシオを削ってまでマークにつくことになります。

後方には数的優位を作り、安全な守備を行うことが一般的な守り方です。
しかし、前から繋げさせないために人を割いているため、マリノスのFWとレッズのディフェンダーが同数という状況が出来上がっていました。

カウンターでも何でもないのに同数です。攻める側にとってみれば競り勝てた場合、一気に大きなチャンスとなります。
後方から繋ぐことが困難だったことと、このチャンスを見逃さなかったパギはゴールキックをCF目掛けて蹴るようにしていました。
意固地になって繋ごうとせずに、前方へ蹴るといった判断は素晴らしいと思います。

さすがにこの形がマズいと思ったのが、後半になるとマウリシオは迎撃に出ず、後方で待ち構えて数的優位を作るようにしていました。
それに合わせ、後半しばらくしたらパギも蹴ることをやめ、また後方から繋ぐように対応を戻しました。
この柔軟な対応も個人的には好印象でした。

5.CFとしてのマルコス

前半途中で怪我により交代したエジガル。彼に代わって、マルコスがこの試合のCFを務めていました。
エジガルや李とはまた異なった特徴を持つため、少し取り上げたいと思います。

こちらは前半42分ごろのシーンになります。

①マルコスが下りてくる
②相手CBが釣られてついてくる
③中央に空いたスペースに天野が飛び出す

こちらは後半79分ごろのシーンになります。

①仲川が中に入り、CB裏へデコイラン
②マルコスが外に流れる
③松原がオーバーラップする
④中に入った仲川はそのまま中央でクロス待機

マルコスは自分が下りたり、横に流れたりなど、機動力が高く、中央にいるだけではなく流動的に動くことをしていたことが特徴だと思いました。

自分が動くことによって相手を引っ張り出す。引っ張り出した箇所に別の選手が走り込む。この動きが連動して行えると相手を崩すことがよりやりやすくなります。
しかし、マルコスが中央から離れるが、誰もそこに入らず、中央での人手が足りなくなるシーンもありました。

3点目なんかはマルコスがサイドによることによってオーバーロードを引き起こし、空いた中央へ渓太がデコイラン。大外を空けることによって、広瀬がアイソレーション状態となり、フリーでボールがおさまっている。

SBまで上がればこのようなことも狙えますが、仮に渓太が中に入らなかった場合、クロス待ちできる選手が渓太のみとなってしまうため、得点チャンスが減少してしまうことになります。

エジガルに大事がないことを強く祈りますが、仮に、今後の試合でもマルコスを起用する場合は、彼が空けたスペースを活用することに意識を置く必要があるかと思います。

6.スタッツ

■走行距離

走行距離のデータになります。

後半になり、相手の中盤の足が止まっていましたが、走行距離を見てもかなり走らせていたことがわかります。
相手中盤の4人に関しては、前半だけで6km超えの距離を動かしていたため、こちらの流動的な動きが相手の体力を奪っていたこともわかります。

こちらの選手も相当走っています。走り負けていなかったことも数値からわかるかと思います。パギの走行距離も6km越えなのに驚きです(笑)

■チームスタッツ

(左:レッズ 右:マリノス)

シュート数14本中枠内が10本。ペナルティエリア内からのシュートも9本と前節に比べて相手ペナルティエリア内に侵入できていたことを裏付ける数値になっていました。

また、セーブ数は7本と西川にかなりな本数止められていたこともわかります。なんだか開幕のガンバ戦みたいな感じですね…

■個人スタッツ

マルコスのスタッツになります。
枠内シュート3本中決めたのが2本、またキーパスは5本でした。この試合獅子奮迅の働きをしていましたが、そのすごさが数値にも表れているかと思います。

こちらはチアゴのスタッツになります。

クリア本数、シュートブロック、インターセプト、タックル勝率、デュエル勝率、どの数値も高い値を出していました。特にデュエルはほとんど負けていないことから、相手攻撃をシャットアウトしていたのはチアゴの守備が大きく影響していたことがわかります。

7.おわりに

図がごちゃごちゃして見づらいものになり申し訳ありません…
この試合のマリノスはそれだけ複雑な動きをしており、その影響だとご容赦していただけると…

快勝をおさめた試合。しかし、これを継続し、安定して勝ちを積み重ねられるかが、強いチームなのだと思います。

・前方に明らかな数的優位がない場合は、ゆっくりとした攻撃に切り替え、バックパスも多様して無理をしないようにする
・広瀬のオーバーラップの頻度が極端に減った
・相手が食いついてくるまで、鳥かごのようなボール回しをして時間を使う
・最後のほうのセットプレーではCBは上がらない

このようなことが後半見受けられ、(アントラーズのように)したたかに試合を進めることもできていたように思います。

リスク管理を行う判断力と、リードしていることを逆手に取れるような精神的余裕を持つことができるようになっている気がします。

リーグ戦では強者との連戦が待っています。GW終了時、笑顔でいられるかどうか、このチームの資質が問われる期間になるかと思います。

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