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【2019 J1 第8節】北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス マッチレビュー

1.はじめに

早い時間帯に失点し、難しくなってしまった試合でした。
三好の偽9番としてのCF起用や、相手の攻撃に対して扇原を先発するなど、監督の作戦が先発メンバーから見て取れました。
プレビューとは大きく異なった試合、簡単にですが、振り返ってみましょう。

2.スタメン

■横浜F・マリノス

・三好のCF起用。偽9番としての役割やいかに
・扇原を投入し、後方でのビルドアップの安定感アップと守備力向上が狙いか?
・激化するSBのスタメン争い。この日は前節と同じ松原と広瀬に。ベンチに和田

■北海道コンサドーレ札幌

・対マリノス対策か?4-4-2の布陣(いつもは3-4-2-1)
・荒野の復帰は間に合わず、前節同様、宮澤を前に出す形に

3.札幌の守備について

■前半開始当初の守り方

・片方のCFは中を切りながらCBに寄せる
・もう片方のCFはアンカーにつく
・SHがSBに、ボランチがIHに、SBがWGにつく、1対1がベース
・前に出て包囲網を圧縮するなら後方から全て、前にズレてプレスに

開始直後の札幌の守備は上記のように高い位置から激しいプレスをかけ、ボールを奪うように設計されていました。

2トップが準備できていることが条件で、片方のCFがCBに寄せ、もう片方のCFがアンカーにつく形でプレスを開始していました。片方のCFが準備できない場合はプレスにいかず、双方とも準備ができるまで待っていました。
これは、アンカーを必ず1人見た上でもう片方がプレスにいくことを徹底することにより、中央からのルートを完全に消し、外回しにする狙いがあったからだと思います。万が一ハイプレスに失敗しても外回りなので、すぐに致命的な状況にならないため、リスク管理が上手いと感じました。

最初にセットした状態は、かみ合わせよく、各所が1対1になるようマークについていました。
ただ、前からボールを奪うと見るや、マークが縦方向にズレ、どんどん包囲網を縦横に圧縮してこちらの選手を囲い込みます。例えば上記の場合、チャナティップか深井がチアゴに寄せ、空いたマークに菅か福森が上がってつくことで前方向に人を埋めていました。

縦への圧縮時にマークのズラしがスムーズだったこと。プレスの開始タイミングもチームとして合っていたこと。誰であっても寄せに迷いがなかったこと。マリノス対策としてしっかり練習をしてきたことが伺えました。

■2点取った後の守り方

・CFの役割は変わらず
・全体として4-4-2のゾーンディフェンス
・ゾーンでの守備だが、マークの受け渡しが困難な場合はそのままついていく
・空いた箇所は別のフリーな選手が埋めることで4-4-2の陣形をキープ

前半10分までに2点を入れ、試合が優位な状態になった札幌。この後からすぐに前方からの激しいプレスをやめ、リスクをかけないゾーンディフェンスへ切り替えました。

開始当初のプレス開始位置と異なり、この場合はハーフェーライン付近までは特に何もせず、こちらの前進を許してくれました。そこから大きく動いたSB裏をカウンターの開始地点とすることが狙いだったのだと思います。2トップがプレスがきたのはハーフェーライン付近からでした。

基本的には4-4-2のゾーンディフェンスで、自分の範囲にきた敵に対してマークし、範囲外になったら味方に受け渡していました。受け渡し時に互いに選手を刺しながら対応していたので、これも練習したプラン通りのパターンなんだと感じました。(恐らくリードしたときや、逃げ切り時のプラン)

ゾーンでの守備なのですが、相手の素早い動き出しによって、すぐにマークを受け渡すことが困難な場合があります。その場合は元々見ていた選手が相手についていき、空いた箇所は別のフリーになっている味方選手がズレることによって埋めていました。これにより、4-4-2の陣形を大きく崩さずにキープすることができます。後方にコンパクトな陣形は打ち破るのに大変苦労します…

相手に間に入られたときの選択として、ルーカスは前にいる選手に、チャナティップは後方にいる選手に対応するように徹底されていたように見受けられました。スタミナ、トランジションの早さ、スピードの速さがあるチャナティップに深い箇所までの守備をしてもらい、ドリブル突破により個で打開できるルーカスをカウンター時に高い位置にすぐ押し出せるようにすることが狙いだったのではないかと思います。ルーカスに何度か突破されていたため、攻撃にスタミナを使ってもらうことは一定の成果を挙げられたように感じました。

この硬い4-4-2を前に、あまりサイドを有効活用することができなかったこともあり、中々チャンスを作れませんでした。後述する三好の偽9番起用と、先に2失点してしまった焦りもあったのかもしれません。相手を前後左右に揺さぶった攻撃が少ないように感じました。

4.偽9番三好と正9番大津

■偽9番三好

こちらは前半18分ごろのシーンになります。

この試合、最前線で起用された三好。CFのように最前線で相手と駆け引きする、というよりは、本来いるIHの位置まで下りてきて、そこから同じようにスペースに飛び出すような振る舞いをよくしていました。
ゾーンで守っている相手CBからすれば、危険な自分たちのゴールから遠ざかるのなら放置し、そのままボランチにマークを受け渡すことができます。そのため、自分たちはマークにつく相手がいなくなり、自由に味方のカバーにまわれます

上記は、一旦大外にいる仲川へパス。菅を外に引っ張り出し、福森との間を空けます。そこへ後方からランニングで入り込んだ喜田。しかし、福森に先に戻られ、クリアされてしまいました。
本来なら相手のCFが中央にいることが多いはずですが、このとき三好は後方に下がっていました。代わりに誰かが入ってくることもないため、中央から自分がいなくなっても危険は少ない状態です。福森は迷いなく喜田のカバーにいくことができました。
本来のCFがいる位置に三好がいたり、別の選手がその位置に移動していれば、もしかしたら福森は喜田の方向へ走ることを少しためらったかもしれません。

このように、空けた箇所に誰かが入らないと、ただ単に相手ゴールから遠い位置に人がいっぱいいる状態、裏を返すと相手ゴールに近い位置に人が薄いため、相手からすると脅威が少ない状態になってしまいます。
偽9番を行うのなら、空けた箇所を誰が埋めるか。埋めることによって空いた箇所を次は誰が埋めるのか。この空いたスペースのローテーションをある程度明確にし、シームレスにできることが理想だと思います。

こちらは前半27分ごろのシーンになります。

一旦後ろに引いた三好、そのあと外に動いたパターンです。
この時、入れ替わりのように喜田が中央へ移動することにより、CFの位置が埋まります。これにより、中央はほぼ同数の形に。
また、前述した通り、素早い動き出しに対しては、受け渡しをせずにその選手についていく傾向があります。そのため、このときは三好が福森を中央から引っ張り出すことができました。

ディフェンダーは「中央への対応のためフォローにいって中を捨てる」か、それとも「外は捨てて中につくか」の二択を迫られます。これを見逃さなかったのが天野。引っ張り出した福森と、固定された菅の間にあるハーフスペースにパス交換を交えランニングしてきます。
この後、天野へのパスが相手選手に当たり、三好の前にこぼれてシュートのチャンスにすることができました。

三好が本来の位置からいなくなることにより、相手を引っ張ってくることができ、かつ空いた箇所に別の人が入って相手を困らせることができました。本来ある偽9番の目的が完遂でき、旨味が存分に出たシーンだと思います。

■正9番大津

①大津が裏抜けをして相手CBを釣って深さを作る
②大津が作ったスペースに天野が入る
③チアゴは空いた天野にパスを入れる
④天野に対応するため、相手ボランチを引っ張れる
⑤後方にいる三好がフリーになるのでそこに落とす

こちらは後半58分ごろのシーンになります。

CFの位置に入った大津。彼は下がる頻度があまり高くなく、本来のCFのポジションにいることが多かったです。

このシーンでは、相手ディフェンスラインに対して、裏に抜け出すようにランニングを行いました。これにより、裏への警戒を相手がするため、相手ディフェンスラインを押し下げて深さを作ることができます

この前後のギャップにより、ディフェンスラインとボランチの間にポッカリとスペースが空きました。ここに天野が飛び込み、そこへチアゴがパスを正確につける。
天野がフリーになるため、相手ボランチがフォローにきますが、そうすると今度は三好がフリーになります。

そのまま攻めたパスとして、マルコスの方へ出し、シュートまではいけませんでしたが、チャンスになりかけた場面でした。
相手2CBに対して、こちらのCFが明確な脅威になったこと。これにより、相手4-4-2の間にスペースを作ったことが、効果的だったと思います。

5.スタッツ

■トラッキングデータ

いつもより走行距離とスプリント回数が少し少なかった点が気になります。
試合中にスペースへ選手が走ることや、連動したポジションのローテーションが少ない印象を受けましたが、それが数値からも伺えるかと思います。

■チームスタッツ

(左:コンサドーレ 右:マリノス)

チームのスタッツを確認すると、ポゼッションでは圧倒的に上回っていましたが、シュート数で負けています。しかも枠内シュート数が2本。さらに、ボックス内シュートも5本と、あまりチャンスがないなと思った試合でしたが、それが数字にも表れています。

また、相手のロングボール60本は、総パス数296本の約1/5に相当します。
サイドチェンジのボールだったり、カウンター時にこちらの選手が戻り切れていないうちに攻めようとする姿勢が数値からも伺えました。

■個人スタッツ

チアゴのスタッツになります。
この試合最多のパス数を記録、成功率も95%と非常に高いものでした。
ドリブルでの持ち上がりから縦パスをつけるシーンが何回か見れたのが印象的でしたね。畠中の影に隠れがちですが、チアゴも縦パスをバシバシ出せるだけの足元を持った選手なんです。
また、インターセプト数が3、デュエルも10回中6回勝利と、守備での貢献の高さも数値から伺えます。

交代で入った大津のスタッツになります。
短い時間ですが、キーパス1本とクロス2本中2本成功と、チャンスを作れていたようです。
また、デュエルも4回中4回と全てに勝利していました。もしかすると、大津がCFで起用されるのもいいのかもしれませんね。続くルヴァンでも出るようなら爆発を期待したいところです。

6.おわりに

開始早々の2失点だったため、この試合のみでは三好偽9番起用の是非を計ることがあまりできないと個人的には思っていますが、攻撃時の幅のなさは試合を通して思ったことでした。ここは改善点だと思います。

また、相手が本来得意としている3-4-2-1の対策として扇原を起用しました。
これまで相手に合わせて先発メンバーを変えることはなかっただけに、少なくない驚きを自分は受けました。
結果として全て裏目に出てしまいましたが、今後も相手の対策だったり、チームとして新しい戦術の発掘を行うこともあるかもしれません。

個人的には、練習の段階できちんと仕込めており、ある程度オートマティズムが確立されているのなら、試合で試すことはありだと思います。反対に、準備が満足にできず、ぶっつけ本番のような形になるのなら控えた方がいいのでは、という考えです。

長いリーグ戦、試合ごとにまだ浮き沈みがあるので、若いチームなんだなということを痛感します。それでも次に向けて進んでいかなければならないのがクラブに関わる全員に言えることかと思います。何が悪かったのか、何がよかったのか、反省し、次の鹿島戦、ぜひ勝利を掴みたいですね!

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