【2019 J1 第15節】清水エスパルスvs横浜F・マリノス マッチレビュー

1.はじめに

 前節3連勝を掴んだマリノス。負傷離脱で扇原を欠くアクシデントがあったものの、4連勝を!と意気高々に向かった日本平。相手の清水も順位を考えると是が非でも勝ちが欲しい試合。互いの勝利の意欲はどちらが強いのでしょうか?あいにくの天候の中の試合でしたがどうなったのでしょう。振り返っていきます。

 プレビューはこちらになります。

2.スタメン

■清水エスパルス

・フォーメーションは前節同様の4-2-3-1(4-4-2)
・怪我から復帰したヘナトが先発。六平はベンチスタート
・立田がコパ・アメリカ日本代表選出のため不在

■横浜F・マリノス

・フォーメーションは引き続きマルコスシステムの4-2-1-3
・負傷離脱の扇原のポジションに天野が入る
・三好がコパ・アメリカ日本代表選出のため不在

3.優位に進められた前半

■清水の守備

・守備時の陣形は4-4-2
・ドウグラスはCBをマークする
・北川はボランチの片方をカバーシャドーしながらCBに寄せる
・FWのプレスではめ込めそうなら中盤の選手は全体的に前進し、1つ前の選手にマークすることによって包囲網を狭める
・中盤が前進して空けたバイタルエリアはディフェンスラインが前進して埋めることはあまりしない

 前半の清水の守り方は今までの試合と同じでした。基本的には4-4-2の陣形を組み、前線から激しいプレッシャーをかけてきます。ドウグラスはCBにマーク。この際、パスコースを明確に切ることはせず、プレス強度も北川に比べると弱めです。相方の北川はボランチの片方をカバーシャドーで消しながらボールを保持しているCBに迫ってきます。これを無効化されないように、反対側のボランチに対してはヘナトか竹内が前に出てマーク。残った片方がマルコスを見るという形だったように思います。この形でボールを奪うチャンスがあれば、両サイドのSHもCBにまで前進し、ボールを中心とした包囲網を狭めるイメージでマリノスの選手たちを囲い込みます。中盤より前は人につく意識が非常に高いため、ディフェンスラインの前はポッカリとスペースが空きますが、ディフェンスはラインをきっちり守る傾向があり、このスペースを埋める動きはあまりありませんでした。

■マリノスのビルドアップ

 この守り方に対してマリノスは、相手が人についてくることの利用。4-4-2の泣き所である中間ポジションを取ることによってマーク対象をハッキリとさせないこと。北川の逆方向からスタートすること。主にプレビューで取り上げたこれらのシーンに始まる、様々な方法で相手の守備をかいくぐってボールを前進させていました。

 こちらは前半16分ごろのシーンになります。

 パギは右に出すそぶりを見せつつ、北川と逆方向からスタートするために畠中へパス。ここへパスがくることを予測していた金子はマーク対象であるティーラトンを捨て、畠中へ寄せてきます。そのため、ティーラトンはフリーになりました。先述しました通り、ドウグラスのプレスは北川に比べシビアではありません。喜田が受けるには十分な余裕があると判断し、畠中は喜田にパス。ドウグラスが寄せてくることがわかっていた喜田はすぐにフリーなティーラトンへパス。ヘナトは下がった天野にマークについているため、大外からマルコスへのパスコースがティーラトンには見えていました。すかさずマルコスへパス。限定がうまい北川を回避したことと、相手が前から食いついてくることをうまく利用したボールの進め方だったと思います。

 こちらは前半21分ごろのシーンになります。

 ドウグラスは反対側にいるチアゴを警戒。北川は内側に絞ってきた和田へのパスコースを消しながら畠中へ寄せてきました。その時、マルコスは右側から斜め左下に下りることにより、右側に位置していたボランチの竹内を引っ張り出します。これによって喜田へのパスコースができたため、畠中は喜田へ縦パスをつけました。相手が人に強くついてくることを利用し、トップ下のマルコスとボランチの喜田が入れ替わるような形を取って、相手のマークを外した場面でした。

他にも、以下のようなボールの進め方が見られました。

・北川と逆方向からスタートし、外に開いた和田に当てて中村を引っ張る。中央は天野とマルコスの2人が竹内の中間ポジションを取り、互いのワンツーで突破(前半8分ごろ)
・北川がサイドに移動したら和田と喜田で中間ポジションを取り、カバーシャドーの対象を明確にさせない。右サイドに相手を集め、天野と畠中を経由して逆サイドにいるティーラトンへ(前半23分ごろ)
・天野、マルコス、ティーラトンで竹内と金子の中間ポジションを取り、広がった竹内と金子の間に位置した天野に畠中が縦パス(前半35分ごろ)

■先制点について

①下りてきたエジガルへ天野がパス
②エジガルは喜田へ落とし、その後相手ボランチを追い越して中央へ
③ボールを受けた喜田は前にドリブルし、中村を引っ張る
④喜田は仲川へ出すフリをし、二見と松原の間に入った和田へパス
⑤二見を切り返しでかわし、こぼれをエジガルが押し込む

 こちらは先制点を挙げた前半31分ごろのシーンになります。

 このとき、マルコスとエジガルは前線にいました。マルコスが残ることによってファンソッコをピン留め。後方へ少しのスペースができるので、エジガルが下りることによって瞬間的にフリーに。天野はそのエジガルにパスをし、エジガルは喜田にボールを落とします。相手の中盤が撤退しており、前方へスペースがあるため、喜田は中村のいる方向へドリブル。これをおさえるため、和田のマーク担当だった中村は喜田へ出てきます。これによって自由になった和田。大外にいる仲川を気にして動けない松原と、二見の間にスルスルっと入り込みます。外にいる仲川にパスを出すように右に体を開いた喜田。しかしボールの軌道は和田でした。相手を欺いた見事なパスが和田に通ることによって、二見はこのフォローのため和田に出ていく。この間にエジガルは中央へ移動していましたが、ファンソッコはマルコスのマーク。二見は和田への対応のため、中央というクリティカルなエリアにも関わらずフリーな状態でした。和田が切り返して体勢が崩れましたが、フリーで余裕のあるエジガルがフォローに入り、そのままシュート。相手を動かさないための工夫、相手を動かすための工夫が混ざり、相手のブロックをこじ開けた素晴らしい先制点だったと思います。

■前半のスタッツ

(左:清水エスパルス 右:横浜F・マリノス)

 こちらは前半のスタッツになります。ボール保持率、シュート数でも相手を上回っています。ボックス内シュート数も5本と大きく上回っているため、攻める機会はこちらの方が多かったことがわかります。ただ、ビッグチャンスは相手に1回あったことと、枠内シュート数も少ないことから、優位にビルドアップしていた割には五分の内容だったということになります。決定率を上げてもっと前半に点を取りたかったです。

4.激動により劣勢となった後半

■清水の守備

陣形を4-1-4-1に変更
アンカーも前に出し、相手のボランチより後ろを同数にしてマークをハッキリりとさせる
・トップ下のマルコスが空くので、ここは片方のCBが前に出て対応
・後方が相手3トップ+マルコスと同数になるリスクを許容する
・ボールが取れそうならマークを1つ前にずらして前進するのは前半と同じ

 後半になり、清水はフォーメーションを変更。4-1-4-1にすることによって、マリノスの4-2-1-3と噛み合わせがバッチリになるようにしてきました。その上で、IHの片方を前に出してCBにつかせる。アンカーをこちらのボランチにつかせることによって、マリノスのボランチより後ろに対して同数となるように積極的なマークをしてきました。これによってマークする相手がハッキリし、より人への意識を強めた形となります。しかしそこまで人数を割くとトップ下であるマルコスが空きます。ここのフォローは後方に控えているCBがボールが入りそうなときに前進して対応していました。後方はマリノスの3トップ+マルコスの4人に対し、清水の4バックで同数。このリスクを冒した上で、同点、または勝ち越すために積極的な守備策を取ってきました。

 こちらは後半48分ごろのシーンになります。

 相手の激しいプレスはGKであるパギまできました。包囲網も狭まり、近場でボールをつけられる選手はいませんでした。しかし、中盤を越えた先は同数。渓太は後ろに下がることにより、瞬間的にフリーな状態に。そこへパギがロングボールをつけます。頭上を越えたボールを慌てて追いかけて戻る北川。これを渓太はティーラトンへ落とすことによってかわす。北川が外にいる渓太に寄ってきたため、中央へいたエジガルへのパスコースが空きました。そこへパスをして前方は同数。大きなチャンスに繋がりそうな場面でした。このようにパギから一気に前方へボールを前進させて相手の激しい前からのプレスをかわすことは、湘南戦でも見られましたね。

 こちらは後半63分ごろのシーンになります。

 先ほどと同様に前から激しいプレスにくる清水。パギに竹内が寄せますが、和田にパスをすることで何とか回避。しかし和田にはドウグラスが寄せていたため、動きなおしたパギへ和田はダイレクトで落とします。金子や西澤も寄ってきて包囲網が大分狭まっているため、パスコースがない状態に。仕方なく前に大きく蹴りますが、これは清水にとっては蹴らせた状態。準備万端だった松原は仲川の前に出てインターセプト。清水の包囲網にかかってしまった場面でした。

 このように、うまくかわせた場面もあれば、相手にはめられてうまく前進できないこともありました。押し込まれるようになり、コーナーキックを取られることも増え、そこから失点して同点に追いつかれてしまいました。この試合、清水のセットプレーは常にマリノスのゾーンの間にボールを入れることを徹底していたように思います。恐らくマリノスの弱点として準備していたのでしょう。

 それでも勝ち越し点を決めた後半80分頃の場面になります。

 相手中盤の前にポッカリと空いたスペース。そこに入り込んだマルコスがボールを受けてフリーな状態になりました。このときエジガルは左にボディフェイクを入れ、右方向に下りて二見を中央から釣り出す。仲川は裏に抜けるフリをし、これに釣られた松原はオフサイドを取ろうと前進。仲川も一緒に戻り、オフサイドラインを越えていないことを確認したら松原と前後を入れ替えるようにエジガルが空けたスペースへ前進。ここにピッタリのパスを送ったマルコス。そのまま仲川がゴールに流し込みました。マルコスの芸術的なパスの裏に隠れた、2人のFWの動き出しによる相手DFとの駆け引きが素晴らしかった得点だったと思います。

 しかしその後10人に減ったマリノス。耐え切れずに試合終盤に失点を重ねてしまい、逆転を許してしまいました。

■2失点目

 相手ゴールキックからのスタート。それを奪おうと李がプレス開始のスイッチを押します。西部からヘナトへのパスが緩く、奪えると思った渓太はヘナトへ前進。これに合わせて囲い込まないとこのプレスの意味がなくなるので、天野とティーラトンも連動して前進する。しかし、この中途半端なボールの競り合いに渓太が負けてしまいました。ティーラトンが連動して前に動いていることにより、後方のスペースがポッカリ空いている状態。そこへ北川が走り込み、ヘナトはその裏へパスを送りました。ティーラトンが前進したことにより、マリノスの最後方は3対4で数的不利な状態。裏抜けした北川に対応しなければいけないため畠中がずれ、和田が滝とドウグラスを見なければいけないことに。滝が潰れることにより、ドウグラスにフリーでシュートを決められてしまいました。

■3失点目

 ティーラトンから天野へのパスがカットされたことから始まったカウンター。このとき、広瀬はいつも通り中盤の位置まで上がっていました。後半広瀬がこのポジションを取ることが多いため、喜田か和田がスライドして右サイドを埋めていました。それに加え、天野もティーラトンからのパスを受けようと前傾姿勢。この合わせ技により中央のスペースがポッカリと空いていました。ボールをカットしたエウシーニョは中央へドリブル。既に数的不利の状態なのに、持ち上がりによってマリノスの選手に選択を迫る厳しい状況に。結果として、大外を上がってフリーな西澤へパスを通され、シュートを決められてしまいました。

 2失点目は前からボールを奪おうと連動した結果、競り負けて後方のスペースを使われた。3失点目は攻撃時のポジションバランスを整えようとした結果、中央が手薄となり、数的不利な箇所を突かれた。数的不利からの裏抜けという点では同じですが、その状況が出来上がったきっかけが異なっていたように思います。

■後半のスタッツ

(左:清水エスパルス 右:横浜F・マリノス)

 こちらが後半のスタッツになります。ボールは保持していますが、シュートに始まる全てのチャンス数が相手より少ない数値となっています。パギの4セーブもむなしく、相手のやり方を変えたことが功を奏したことがわかります。

5.魔の残り10分、あなたならどうしますか?

 何度見ても悔いの残る勝ち越してからの10分間。ちょっと状況を整理してみましょう。

■後半の状況

・2-1でリードしている状態
・マルコスが退場し、10人に。中盤が1人減った状態(相手の中盤は5人)
・マルコス退場で恐らくピッチ内は混乱状態だった
・10人になった瞬間は互いに話す時間はあまりなかった
・広瀬は高い位置にいくことが多いため、喜田や和田がスペースを埋めるために右サイドへ移動
・そのため空く中央のスペースは相手IHが高頻度で使っていた(やたら竹内が前に顔を出していた印象です)
・広瀬の裏は西澤がずっと狙っていた
・負傷交代で急遽CBを担当した和田とドウグラスは高さと強さでミスマッチ
・清水の1つ前にずらすマークも、人数が多いため特にリスクにならない
・前半から、清水オフェンスのポジトラがマリノスディフェンスのネガトラより早かった
・使える交代枠は残り2人

■ベンチメンバー

・侑士
・李
・大津
・康太
・風希
・杉本

 どうしても様々なたらればを考えてしまうこの場面。皆さんならどのような交代策、試合の運び方などを選択して勝ちへの道を描きますでしょうか?

 個人的な考えとしては、以下が大雑把な方針として思い浮かびます。

・交代によって、選手に方針を伝達させる役割を持たせられるのと、選手間で話す時間を作れるので、なるべく早い時間帯で交代をする
・中盤の数的不利は問題なので、前線を削ってでも選手を入れる
・チアゴ交代により後方は高さが足りないため、完全に守勢にまわるのは厳しい
・そのため、なるべく前でボールを保持して時間を使う方針が望ましい

6.スタッツ

■トラッキングデータ

 走行距離、スプリント回数共に相手の方が高い数値でした。この数値を単品で見て全てがわかるわけではありませんが、走り負けていたことは数値からもわかります。各選手に疲労がたまっているのかもしれないですね。

■チームスタッツ

■個人スタッツ

 扇原に代わって先発した天野のスタッツになります。78本の成功パス数より、組み立てに大きく貢献したことがわかります。また、キーパス2本、ビッグチャンス創出回数が1回と、攻撃面でも持ち味を発揮したと思います。後半53分と61分に相手ペナルティエリア脇のハーフスペースからローポスト侵入でクロスというお得意の形。後半74分に相手の間に入りこんで逆サイドへ長いパス。攻守に渡りポジショニングをほぼミスなくこなした天野のこの試合の活躍が抜群だったことはこの試合の明るい要素の1つだったと思います。

7.おわりに

 試合終盤にリードしたが、終了間際に連続して失点して負けたことにより、この試合全部悪かったような印象を受けますが、実は相手の戦術に対してうまく立ち回ることもできていた試合でした。ほぼ完封された大分、札幌、セレッソと違い、前を向くことができる敗戦だったと個人的には感じています。それと同時にチアゴの不在を痛感もしました。誰が出ても同じサッカーができるようにという方針ですが、意外と属人的なマリノス。次の試合ではマルコスが出場停止のため、システムごとどうするのか。色々妄想も捗りますが、何よりも連敗をしたくない気持ちが強いです。敗戦にしょげずに、サポーターも前を向いてまた応援できたらいいなと思います。次の試合も頑張りましょう!!

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ヒロ

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