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【2019 J1 第7節】横浜F・マリノスvs名古屋グランパス マッチレビュー

1.はじめに

攻守が目まぐるしく変わり、両者ともにチャンスを量産する。その中で互いに何点決めるのか。スリリングな試合でしたね。

この試合、小難しいことを考えず、「うおおおおお」と叫びながら頭空っぽで見るのが最も楽しい観戦方法なのではないでしょうか?(笑)

エンターテイメント性の高かった試合、振り返ってみましょう。

2.スタメン

■横浜F・マリノス

・エジガルの代わりはマルコス起用
・マルコスが中央に移ったことにより、渓太が左WGで先発

■名古屋グランパス

・前節と同じスタメン

3.互いの守備について

横浜F・マリノス

・前の3トップ+2IHは高い位置までプレスをかける
・アンカーの喜田も前に出て積極的にプレスをかける意識が高い
・後ろの4バックは前にあまり出ず、待ち構える

こちらは前半24分ごろのシーンになります。

マリノスの守備は、今までもそうでしたが、GKまで追いかけて積極的にプレスをかけにいく形です。ボールを中心に、WGやIHが包囲網を狭め、高い位置でボールを奪おうとします。

この方法、悪く言うと、無策にただボールを追っているだけとも言えます。

1.ボールが出る
2.そこへ出ていく
3.自分がいたところが空く
4.空いているところを使われる

この繰り返しで相手にスルスルとかわされ、あっという間に前線までボールを運ばれたのがこの場面になります。

中盤も前からいくなら後ろも連動して前に出ないとディフェンスラインの前(バイタルエリア)にぽっかりとスペースが空きます。
この前後分断されたような状態により、前からのプレスをかわせたら一気に最終ラインまでボールが運べることとなり、すぐに大きなチャンスになっていました。

ただ、気を利かせて広瀬やチアゴがボールが前にある場合出ていっていた場面もあったため、全部が全部上記のような無謀な守備になっている訳ではありませんでした。

■名古屋グランパス

・長谷川は喜田にマンツーマンで対応
・シャビエルはカバーシャドーにより背後のコースを消す
・米本は前にきた人にかなりな距離ついていき、人につく意識が高
・シミッチはゾーンディフェンスでゾーン内に入った人を見る

試合開始当初の名古屋の守備、自分としては上記のように見えました。
しかし、時間が経過すると共に各個人が守り方を変えていき、前半30分頃には完全に4-4-2のブロックを作り、ゾーンで守る方式に全体が切り替わっていました。

ミドルサードまで持ち上がりを許可し、そこにきたらプレスのスイッチが押される。FWから相手CBにプレスにいき、中盤4人を含めた選手は前から激しく奪いにいく
しかし、後方の4人が前まで連動して出ていくことは多くはなかったです。そのため、名古屋もある程度前後分断されており、こちらも前からのプレスを突破できれば大きなチャンスになっていました。

こちらは同点に追いついた前半19分ごろのシーンになります。

前から積極的にプレスをかける名古屋。しかし、ボールホルダーである畠中へ寄せる選手が近くにいませんでした
さすが畠中。フリーだと狭い隙間でも前へパスを出すことができます。
唯一のコースである三好へパスを出した時点で、前線で3対3の同数
裏に抜ける仲川へパスを送って一気にビッグチャンスとなりました。

名古屋も必ずしもこのように抜けられたわけでなく、うまく前からハメられた時が何回かありましたし、後ろも吉田が気を利かせて連動して前に出てくることもありました。

互いにこのような形で前後分断してしまい、前をかわされると大チャンスとなるような守備方法だったため、多くのチャンスが互いにあるスリリングな試合になったのだと思います。

前が出ていくときの守備に後ろも連動して、縦にコンパクトな陣形を作ることは、互いの守備時の課題と言えるでしょう。

4.ピックアップシーン

守備面で互いが課題を抱える中での試合だったため、大味な試合になったというのが個人的な印象です。
そのため、ここからは自分が気になったシーンをただただピックアップしていこうかと思います。

■喜田のポジション取り

①ボールを受けられないので、喜田が相手選手の間に移動
②ボールを受け、ターンしてドリブル
③右サイドにいる仲川へパス

こちらは前半46分ごろのシーンになります。

長谷川とジョーに自身へのパスコースを消されたことに気付いた喜田。よりスペースのある右方向へ。より広い相手の間に移動しました。
和泉は松原と喜田の両方を見なければいけなくなるため、この2名の中間ポジションを取らざるをえない状態に。

畠中は一旦チアゴに戻す。ボールを受けたチアゴは移動した喜田へのパスコースができたので、そこへパス。

喜田はボールを流しながら反転してボールを受ける。この際に寄せてくる米本に対して、ボールと相手の間に体を入れてスクリーンすることで反転をより安全に、スムーズにしていました。

反転により一気に相手中盤まで突破した喜田。そのまま裏に走る仲川へパスを送り、チャンスを作っていました。

■三好のターンと持ち上がり

①喜田はチアゴに落とし、自身は前に上がって米本を釣る
②チアゴに長谷川が寄るが、畠中へパス
③喜田がいなくなった中央へ三好が下りる
④ジョーが畠中に寄るが、三好へパス
⑤三好はターンし、そのままドリブルで持ち上がる

こちらは後半47分ごろのシーンになります。

ボールを受けた喜田はチアゴに落とし、自身は中央から外れた位置に移動することにより、2トップのコース消し基準をなくすことと、相手ボランチを釣ります。

チアゴへボールが入ったので長谷川は寄せてきます。そこでチアゴは畠中へパス。ジョーも畠中へ寄せてくるため、2トップが観音開きとなり、中央にスペースができます。

ここに下りてきたのが三好。これもまた新しい中盤落としによる3バック化のパターンですね。下りてきた三好はフリーなのでそのままターン。前方に相手がいないこともあり、ドリブルで持ち上がります。

この持ち上がりにより、前からきている相手SHも突破できるため、相手の中盤のラインを下げさせることができます。中盤のラインが下がるので、万が一こちらがボールを失っても相手の中盤はゴールから遠く、攻撃と共に、より安全な形に相手を変形させることができました。攻撃は最大の防御といったことを体現している場面でした。

■喜田の神フリック

こちらは後半59分ごろのシーンになります。

パギからボールを受けた喜田。相手選手たちは前から奪う意識が強いため、それぞれの選手が囲い込みにきます。これに臆さずにダイレクトで前方の三好へフリック。前掛かりになった相手を一気に剥がし、前方で数的優位、または同数の状況を1タッチによって作りました

事前に周りの状況を把握するための首振りと認識の早さ。後方からのボールを反転しつつダイレクトで前方へ流す技術。
今のマリノスの中盤に求められるスキル全てを高い次元で活用し、最大限のリターンを得られるプレーだったと思います。

■相馬のドリブル突破

①相馬がドリブルにより松原を突破
②抜かれた松原のフォローにチアゴが前に出る
③チアゴがいなくなって空いた長谷川へパス
④長谷川への対応のために畠中が出ていく
⑤中央が空くので、畠中の裏へパスし、ジョーが決定機

こちらは後半83分ごろのシーンになります。

相馬が持ち前のスピードと技術で松原をドリブルでかわす。抜け出した相馬の対応のために、中央寄りのチアゴが外に引っ張り出される。チアゴが空けた中央にいた長谷川がフリーになるので、相馬はそこへパスを出す。パスを受けた長谷川がフリーなので、その対応のために畠中が中央から離れて出ていく。これにより、中央が空いたため、その裏めがけてパスし、これが通ったジョーがGKと1対1の決定機を迎えました。

ドリブル突破によって一人をかわされ、こちらのディフェンダーが芋づる式に引っ張り出されました。スピードとドリブル技術のある選手を交代で起用した狙いと旨味が存分に出た場面だと思います。

5.スタッツ

■走行距離

■チームスタッツ

(左:マリノス 右:グランパス)

シュート数では相手のほうが多かったです。また、決定機の数も相手が6に対してこちらが1と、名古屋のほうがより多くのチャンスを創出していたことがわかります。
エリア内のシュート数も多いため、より勝利に近かったのは名古屋だったのかと思います。

また、クロスの数と成功率も相手のほうが高かったです。こちらはもう少しサイドからの攻撃を行うことと、クロスの精度が上がるとよくなるのかもしれません。

■個人スタッツ

神プレーを連発した喜田のスタッツになります。
成功パス本数が62本で95%の成功率。前からのプレスが激しかった中、アンカーの選手がこれだけのパス数を高い成功率で出してくれることは、大きくチームを助けてくれた証だと思います。

また、デュエルも13回中9回勝利、勝率は約70%と高い数値でした。中盤での攻守に渡る競り合いも多く勝っているため、中盤での攻防の安定感がグッと上がったのかと思います。

この試合を救ったパギのスタッツになります。
セーブ数は5本、しかもそのうちエリア内のものが3本になります。少なく見ても3点分は彼に救われたと思います。

また、ロングボールは13本中4本のみ成功と、低めの数値になっています。相手が前からくることにより、CBなどからバックパスを受けることが多く、そこに相手が寄せてきたため、蹴らされた回数が多かったです。
苦しい状況でもここの精度が上がると、よりチームを助けることができるかと思います。

6.おわりに

互いに攻撃的なサッカーを志向しているチーム同士、チャンスがたくさんあり、白熱した、興奮した、ドキドキした試合になりました。
見ている側はかなり体力と精神力を使い疲れますが、とても楽しかったです(笑)チャンスの多さにワクワクしながら盛り上がって見る試合。これもまたサッカーの大きな魅力の1つでもあると強く再認識しました。

次節も攻撃的なチームである北海道コンサドーレ札幌戦です。こちらもまた見ごたえのある試合になることを期待しています。

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