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【2019 J1 第18節】横浜F・マリノスvs大分トリニータ ゆるれびゅ~

1.はじめに

 リーグ戦も折り返し、後半初戦の相手はアウェイで痛い目を見た大分です。前節FC東京との天王山に敗北したマリノス。今季まだ連敗していないだけに、これを継続したいところです、また、この試合でマリノスを去ることになるイッペイと天純を勝利で快く送り出したい!様々な理由から勝利が絶対的に欲しいマリノス。チーム、サポーター共に「勝ちたい!!」という気持ちが試合前からビシビシと伝わるニッパツ三ッ沢スタジアム。日産に比べてピッチが近いこともあり、雰囲気は最高の中迎えたリベンジマッチ。簡単に振り返ってみましょう。

 通常レビューは以下になります。

2.スタメン

■横浜F・マリノス

・和田に代わり広瀬が先発
ロケレンへ移籍する天野が今シーズン最後の試合に臨む
・渓太、畠中、広瀬は水曜日の天皇杯フル出場。連勤お疲れ様です<(_ _)>

■大分トリニータ

・4節のときと同じ布陣
・岩田が怪我で不在

3.SASUKE-TRINITA-と挑戦者-トリコロールの戦士-

・第1エリア:襲い掛かる2トップ(狙いはセンターバック)
・第2エリア:反り立つ3人の壁(仲良く手を繋いで)
・後ろの5人はトリコロールSP3人に通行止めされていて前に出れない

 今回マリノスの前に立ちはだかったSASUKE-TRINITA-は、前回対戦時とほとんど同じアトラクション構成でした。第1エリアは「襲い掛かる2トップ」です。大分の2トップはそれぞれ畠中とチアゴを追いかけまわしていました。しかし、主な範囲はセンターバックの2人のみ。キーパーのパギまで追いかけてくることはあまりありませんでした。この関門を突破した先に待っている第2エリアは「反り立つ3人の壁」です。この3人は大の仲良し。みんなで手を繋ぎながら、ボールがある方向へ移動し、マリノスのボール運びを阻害してきます。(詳しくは前回対戦時のゆるれびゅ~をご覧ください。)

 SASUKE-TRINITA-のセカンドステージは以上の構成になります。「え?いくら何でも短すぎやしませんか」だって?それにいはちょっとした理由がありました。トリコロールの誇るSPであるエジガル、仲川、渓太の3人がスーツにグラサンでビシっときめて警備をしてたからです。(もちろんスーツはGlobal Style)「はい!君たちが来れるのはここまで!ここから先は立ち入り禁止だからね!」5人を相手に立ち止まらせるような位置を取っていた3人。この絶妙な警戒位置により、大分の他の選手は前に出て味方を助けることができませんでした。また、マルコスは主に島川とデートしていました。デート中のマルコスは積極的でよく高い位置を取っていました。これに付き合っている島川も前に出ることができなくなっていました。

 挑戦者であるトリコロールの戦士たちは、あの手この手でSASUKE-TRINITA-を攻略していきました。その手法をいくつかご紹介します。

■壁があるなら、ないところから進めばいいじゃない

 こちらは試合開始早々のシーンになります。

 藤本はこのときパギまでボールを奪いにきていました。しかし落ち着いていたパギは広瀬を発見。反り立つ3人の壁の前にいる彼にパスを付けました。この時点で目の前にある壁は天野まで続いている状態。しかし、マリノスはその壁の脇に畠中、さらに外側にティーラトンがいました。「え?横空いてるじゃん。ならこの壁頑張って登らなくても、横からスッと抜けちゃえばよくない?」賢い広瀬は喜田へパスをしました。この狙いを察した喜田と天野は畠中までボールをスムーズに流しました。さらに畠中は外へ位置するティーラトンへパス。「おおおっと!!タイの守護神ティティパンがぁ!ロードローラーの如く相手選手にどんどん寄せていくぅ!!」(CV:古舘伊知郎)壁を形成していたティティパンは離脱し、畠中、ティーラトンと順に長い距離を全力疾走。相手選手に長い距離を走らせ、スタミナを削ることができました。

■壁あらば、外に避けよう、ホトトギス

 こちらは前半8分ごろのシーンになります。

 「相手2トップは危険だ。自分が下がって的を増やしたらどうなるかな?」と考えた喜田は後ろに下がって畠中とチアゴを助けにきました。この喜田にボールが入ったとき、迫ってきたのは藤本でもオナイウでもなく、反り立つ壁を作っていたティティパンでした。喜田に迫ることにより、ティーラトンへの壁を更に反り立たせてもうほとんど90°なんじゃ…というくらい厳しくするティティパン。しかし横が空いていたため、ティーラトンは外側へ移動。「おっ、壁の脇からブンちゃん出てきた。これなら普通にパス通せるじゃん。」喜田はティーラトンへパスを繋ぎ、ボールを前に進めることができました。これぞマリノスの進化した偽サイドバック!と思える素晴らしいプレーでした。

■松本戦の崩し再来

 こちらは前半28分ごろのシーンになります。

 下がってきたマルコスに畠中がパス。マルコスは渓太へパスを出して松本を外側から引っ張り、折り返しをもらって少し前進。「これ以上前に進まれたらやばい!」前田が中央から対応に向かいます。このとき、下がったマルコスと入れ替わっていたティーラトンは、松本がいなくなった外側へダッシュ。島川がこれについていきましたが、前田も持ち場を離れていたため、中央にポッカリと空間が空きます。「おっ、中央から誰もいなくなった、そこ使えるじゃん。マルコス後ろにいるし、入っちゃえ!」そこに入り込んだ天純。「中央の方がやばいって!?天野のとこに俺は行く!」外にいるティーラトンについていった島川は急転換。しかし対応が遅れ、天野にボールが渡り、前を向かれてしまいました。そのままフリーになっているティーラトンへパス。相手を順番に引っ張ったこのボール前進は、松本戦の得点時に大津が抜け出したときとかなり似た形でした。また同じことができたのは、チームとして身についている証ですね。

4.前からのプレスは計画的に~アンジェの罠~

・渓太や仲川はまっすぐ迫り、わざと外側のパスコースを空ける
・わざと空けた外へのパスはティーラトンや広瀬が狙って奪う

 この試合、「何かマリノスめっちゃ前からボール奪えてない?それか奪えなくても蹴らせて取ることが多くない?」と思うことが多かったです。それもそのはず、マークする相手がそれぞれ明確でした。相手3バックに対してはマリノスの3トップ、ウイングバックに対してはサイドバックがつくことにより、外側のマークがハッキリします。内側はマルコスと天野が見ることにより、ボールがあるサイドは囲い込むことができます。これだけマークがハッキリしていると、相手キーパーにまで寄せたときも縦にズレるだけで事足ります。エジガルが高木に、マルコスが鈴木、天野が前田、喜田がティティパンといった具合にマークにつきます。これだけ前から奪う姿勢があれば後ろも準備万端。相手が苦し紛れで前に蹴ってきたボールはマリノスが先に取ることができていました。

 また、渓太や仲川が島川や三竿に寄せるとき、アンジェが仕込んだ罠がありました。それは外側へのパスコースを消しながら寄せるのではなく、まっすぐ寄せることによってわざと空けることです。他はピッタリとマークにつかれている状態。消去法でパスを出すのは外側になります。「今です!!」外へのパスを合図に、後方で準備していたティーラトンや広瀬が全速力で奪いに出ます。「げぇっ!?ティーラトン!?」突然寄せられた松本はうろたえ、ボールをティーラトンに奪われました。しかしこの奇策、それぞれの選手のタイミングが合ってないと、突破される安全なコースを作ってるだけになってしまいます

 後手になって突破されたのが前半37分ごろのシーンになります。

 鈴木からのパスを受けた松本へ、ティーラトンが遅れ気味に寄せました。松本は、後方にいる島川へバックパスをして一時退避。このバックパスに反応したのが渓太です。渓太に寄せられた島川はすぐに松本にパスを返しました。リターンをもらった松本はティティパンとワンツーで内側へ抜け出します。ティティパンへは天野が対応にいきましたが、これも後手だったために満足にプレッシャーをかけることができませんでした。この一連のプレスは、相手がパスを出したあとに向かうという後手の対応でした。この隙を見逃さなかったダイレクトパスの応酬。大分の技術力の高さを見せつけられ、こちらのハイプレスをうまくかいくぐられた場面でした。

5.大分の多彩なシステム変更

 この試合、三好を交代した後から大分は布陣を5-3-2から変更してきました。また、こちらが先制した後も布陣を変えてきました。それぞれどのような感じだったかを簡単に見ていきます。

■3-4-2-1の布陣~オナイウの片思い~

・外側のマークは変わらず、3トップと両サイドバックで対応
・中盤が三好1人に対して、相手はダブルボランチの2人
・下がったオナイウと上がった小塚を天野と喜田で見る
天野とオナイウは体格差とスピード差でミスマッチ

 三好を入れてマリノスの中盤がより明確に4人となったことへの対策として、大分は守備時に5-4-1となるように布陣を変更。中盤が4対4になるようにしてきました。この布陣は攻撃時にオナイウと小塚が内側に入るため、この2人を見るのはマリノスのダブルボランチである天野と喜田。喜田と小塚はまだいいですが、オナイウの天純に対する片思い(体格差とスピード差)は非常に重かった見たいです。この思い(体格)の差がミスマッチを生んでいました。

 そのミスマッチをうまく利用してボールを前進できたのが、後半71分ごろのこちらのシーンになります。

 外側にボールが入った星がバックパスしたのは鈴木。星についていたティーラトンは鈴木を追いかけます。「よし、こっちにきたな。十分引き付けた。島川!パス出すからすぐに星につけろ!」星へのマークが外れたことがわかった鈴木は下がってきた島川へパス。島川はフリーな星へ落とし、それと同時に前へ走り出します。このタイミングで外に下りてきたオナイウ。星はオナイウへパスをあてます。背負っている相手は天野。「俺の方がでかくて強い!こんなボール、落とすの余裕だぜ!」フィジカル勝負では分があるため、余裕を持って島川へ落とせました。島川はドリブルし、外でフリーになった星へパス。天野とオナイウのミスマッチをうまく利用した攻撃だったと思います。

■3-4-3の布陣~え?外側どうするの?~

 小手川を投入した後半80分ごろから、大分はオナイウと小手川を外側へ出し、3-4-3のような攻撃的な布陣を取ってきました。外側に移動した相手選手につくのは両サイドバック。これによって、先ほどまでついていたウイングバックである高山と星へのマークがいなくなるため、ここに誰がつくべきか不明確になります。しかし、前半から相手を走らせていたこともあり、相手の中盤とウイングバック(特に小塚と高山)の走力が低下していました。そのため、仲川や渓太、喜田、天野の頑張りで何とか対応できましたが、札幌のように幅を目一杯使うこの布陣をもっと元気なときにやられていたら辛かったと思います。足にきていたこの時間帯に何とか耐えきれたことは選手の自信にもなるでしょう。

6.スタッツ

■トラッキングデータ

■チームスタッツ

■個人スタッツ

 こちらはパギのスタッツになります。この日、飛び出しによるクリアが目立ったパギ。sofascoreの記録だと5回という数値でしたが、試合を見た限りでは、7回の飛び出しがありました。黒パギマジ半端ないって!!これだけ前に出て相手のロングボールに対応できると、ディフェンスラインは体力的に非常に楽になります。今後も放り込んでくるチームに対して、彼の飛び出しは大きな武器になるでしょう。また、成功パス数が40本と、この日もビルドアップに積極的に参加したことがわかります。4節のときに比べ、積極的なビルドアップ参加は後方を安定させました。1試合ごとに前の試合の反省点を活かし、自分の強みに変えるパギは非常に頼もしいです。(29でも選手は変われるんだぜ!という姿に心打たれます!)

7.おわりに

 この試合は選手たちの気持ちが全面に出た試合だと思います。特に得点シーンはそれが凝縮されたもののように感じました。最初のティーラトンとオナイウの競り合いで、ティーラトンが倒れながらも足で掻き出して三好へ繋いだこと。交代で入った三好から仲川へ送ったクロス。この日久しぶりの先発だった広瀬の駆け上がり。最初のシュートは弾かれたものの、こぼれだまを押し込んで泥臭くゴールを奪ったエジガル。やはりサッカーで一番大事なのは気持ちなんだということを改めて思い出させてくれた。そんな試合だったと思います。

 上との差はまだまだ開いたまま。未消化試合があるチームを考えても、今後の試合も落とせない状況は続きます。我らはまだ何も成しえていない挑戦者です。次の試合も熱い応援を送り、サポーター共々勝利を目指していきましょう!チームを去ったイッペイや天純の分も!!

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