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【2019 J1 第15節】清水エスパルスvs横浜F・マリノス きまぐれマッチプレビュー

1.はじめに

 長らくやっていなかったプレビュー。A代表による中断期間を利用して、時間が取れたのでそれとなくまとめてみました。とはいえ、確認したのは監督が代わってからの直近2試合のみ。昨年は苦しい中、勝利をもぎ取れた日本平。今年はどうなるでしょうか。相手の特徴やこちらの狙いたい箇所などを見ていきましょう。細かいものを読むのが面倒な場合は最後にポイントを箇条書きしてますので、そちらだけをお読みください。(そこを先に見てから見たい箇所だけ戻るのもいいかもしれません。)

2.予想スタメン

■清水エスパルス

・ベースシステムは4-5-1(4-4-2)
・守備時は北川を前に上げて4-4-2になる
・オプションとして4-1-4-1も使用することもある
・立田がコパ・アメリカ日本代表選出のため不在。代わりに二見が起用される見込み
・直近の試合ではGKは西部が先発で起用されている

■横浜F・マリノス

・扇原負傷離脱の代役は恐らく天野。しかし、ボランチかIHかどちらの起用か読めない
・日本代表でも2試合連続で先発した畠中の連勤による疲労具合やいかに
・三好がコパ・アメリカ日本代表選出のため不在
・U20W杯帰りの康太はコンディションの関係から恐らく先発はなく、ベンチと予想

3.スタッツによる比較

・得点数
・失点数
・ボール保持率
・シュート数
・パス数
・ロングボール数
・クロス数
・空中デュエル勝利数
・走行距離
・スプリント回数

 上記の数値をsofascoreより、J1リーグ第1~14節までのデータを2チームで比較したものが上図になります。

 まず、得点数と失点数ですが、こちらは順位差がそのまま表れていると思います。得点数はマリノスが上回り、失点数も少ないです。シュートの数も上回っているので、清水より多くチャンスを作れていることが伺えます。次にボール保持率を見てみると、マリノスの方が圧倒的に高いです。パス数も多いため、マリノスは保持型(ポゼッション志向)、清水は非保持型(カウンター志向)のチームだということがわかります。しかし、互いのロングボール数とクロス数は似たような数値になりました。パス数が清水の方が少ないので、ロングボール頻度とクロス頻度が高いことが推察できます。主な攻め方はロングボールを送り裏を取るか、サイドからのクロスなのでしょう。それを裏付けるように、空中デュエル勝利数がマリノスに比較して圧倒的に高いです。相手のロングボールからの競り合いには手を焼くかもしれません。走行距離やスプリント回数では上回っているため、気候次第ですが、相手より走り勝つこともできるかと思います。

4.互いの噛み合わせ

 次に互いのフォーメーションの噛み合わせを見てみましょう。

■マリノスが4-1-2-3の場合

 後方は2CB+アンカーで数的優位。その反面、中盤は2IH+2SBで相手中盤4人なので同数となります。この場合、中盤の同数をどうやって突破し、前線にいる3トップまでボールを届けるかを工夫する必要がマリノスには出てきます。清水にとっては噛み合わせがいいため、そのまま4-4-2で守ることができるかと思います。

■マリノスが4-2-1-3の場合(マルコスシステム)

 先ほどと変わり、後方が同数に、中盤が数的優位になります。後方はパギを交えて3人とし、何とかボールを中盤まで届けることができれば、数的優位を活かして前線までボールを届けることは比較的しやすいと思います。反対に清水にとっては中盤が数的不利でマリノスの選手の誰かが空くので、2トップのどちらかが下がるなどの工夫をして、陣形を考えながら守る必要が出てくるでしょう。

5.清水エスパルスの守備とマリノスのビルドアップ提案

■清水エスパルスの守備

・ドウグラスは片方のCBにつく
・北川はアンカーやボランチにつく
・中盤は前傾守備が強め、かつ人につく傾向が強い(マンツーマン傾向)
・中盤が前進して空いたディフェンスラインの前のスペースを誰が埋めるかはあまり明確になっていない印象

 前述しました通り、清水は守備時4-4-2の形になります。2トップは役割が明確になっており、ドウグラスがボールを持っていないCBにマークにつき、北川がアンカーやボランチにつきます。ドウグラスはそのままマークについたCBを背中で消しながらボールを保持しているCBに寄せることもありますが、比較的CBにはボールを持たせてもらえる場面が多い印象です。ただ、畠中とチアゴは自由にすると怖い存在であるため、これを嫌って2トップ双方がCBに対して強く寄せてくる可能性も考えられます。

 次に中盤です。中盤の選手は人についていく傾向が非常に強く、マンツーマン気味での対応が主になります。そして自分の前にいる人に出ていく前傾守備の意識も強いです。しかし、前に出たためにできるディフェンスラインの前のスペースを埋める明確なルールが定まっていないように見えます。ディフェンスラインを高く上げるときもあれば、CBが局所的に前に出て対応することもあります。このバイタルエリアにできるスペースは、マリノスの狙い所の1つになると思います。

■マリノスのビルドアップ提案

 相手の中盤の選手はマンツーマン気味ということを利用し、SBは大外に開いて低い位置に移動します。こうすることによって、大外で待っているWGへのパスコースが生まれるため、瞬間的に後方に下り、CBからボールを受けることができるようになると思います。

 中盤については、北川がアンカーにつくことと、相手ボランチがこちらのIHにつくことを利用します。アンカーが前方に移動して北川を引っ張る。それと交差するようにIHが下りてボランチを引っ張る。入れ替わったとき、「カウンターの起点となる北川はどこまで下がるのか?」ということと、「中央を守るボランチはどこまで上がるのか?」ということから、そのままマークについていくか、それぞれ受け渡して自分の位置を守るかの二択を迫ることができます。中盤の3選手が前後左右に移動し、相手の中央3人に迷いを与えることがマークを外すポイントになりそうです。

 また、相手がCBへの自由を奪うため、ボール方向に前から囲い込んでくることも考えられます。この場合は、相手を自陣に引き付けるようにボールを回し、十分に引き付けたら後方にいるパギにパスを送ります。相手選手たちを十分に引き付けたため、中盤より前とディフェンスラインが前後分断されたような状態になります。相手がピッタリ前からくると中盤の選手が1枚浮くため、その選手が相手ディフェンスラインの前に移動。パギから長いボールをつけて、一気に局面を前に進めます。この疑似カウンターの形は湘南戦のときも何度か見られましたね。

 余談として、従来のマルコスシステムを採用した場合について少し記載します。相手中盤の3人に対して、「北川はどちらのボランチにつけばいいのか?」、「どちらのボランチが空いた相手ボランチにつけばいいのか?」、「マルコスはボランチのどちらが見るのか?」といった迷いが生むことができるかと思います。清水側としてはこのマークの役割をハッキリさせる必要が生まれるため、マリノスにとってはこのシステムのほうがやりやすいかもしれません。

6.清水エスパルスの攻撃とマリノスの守備提案

 基本的にはマリノスのボール保持、清水のカウンターという構図で試合が進むものと予想されます。カウンター時、清水は前線にドウグラスと北川が残っています。マリノスは両SBが高い位置に上がるため、いつも通りSB裏が狙い目です。ドウグラスは中心にどっしり構え、北川が広範囲を移動する役割のため、SB裏に走るのは北川が多くなると思います。そこへロングボールをつけた際、2人いるCBの片方はサイドに引っ張られてしまいます。さらに、アンカーはクロス対策で中央を埋めるため、ディフェンスラインに吸収されてバイタルエリアにスペースが空きます。六平はIHのようにハーフスペースまで駆け上がってくるプレーを得意とし、その頻度も高いです。中央を上がった六平を誰が見るか、これが1つのポイントになるかと思います。(マルコスシステムの場合は片方のボランチで埋めることができるかと思います。)この2トップの片方が流れて相手CBを引っ張り出し、アンカーをディフェンスラインに吸収させてバイタルを空けることは、2トップを相手にする場合マリノスにどうしてもできてしまう弱点です。ロングボールの競り合いに負けないことと、裏抜けした相手に1対1で突破されないことが重要になりそうです。

 もう1つのポイントはサイドの攻防です。相手のSB(特にエウシーニョ)は高い位置を取る傾向があります。エウシーニョは最初からサイドの高い位置に進出してSHを中央に絞らせる。松原后はスタート位置はエウシーニョより低いものの、SHが内側に入って大外にスペースができた際に全力で前に飛び出していきます。内側に入った相手SHをSBが見る場合、大外にいるエウシーニョや松原后が空くため、ここまで渓太や仲川が守備をするかどうかを明確にすることが大事になると思います。

7.マリノスの狙い目

 北川が主にアンカーの守備を担当していることを利用することも他の狙い所としてあるかと思います。その守備への移動距離を長くするため、ボールを相手から奪った場合(特にGKがボールを取った場合)は北川がいる方向と逆からスタートするとこちらのアンカーがフリーになる時間が長くなります。この状況を許容できない場合、相手の中盤の選手1人を引っ張ることができるため、一時的に中盤でフリーな選手を作ることができるので、そこからボールを前進しやすくなるでしょう。

 また、エウシーニョは比較的高い位置に上がりがちです。ここを誰が埋めるかもあまり明確になっている印象を受けなかったため、左WGに配置された渓太がこのスペースを有効活用することも狙い所になるでしょう。

8.おわりに

 色々書いてきましたが、試合のポイントはざっくり以下になるかと思います。

・ビルドアップ時に相手中盤が人につくことを利用してスペースを作ることができるか
・疑似カウンター状態を作り、ロングボールから一気に局面を打開できるか
・カウンター時にドウグラスにハイボールを競り負けないか、裏に抜けた北川に1対1で負けないか
・上がってくるSBと六平は誰が見るのか
・攻撃開始時に北川と逆方向から攻められると有効
・エウシーニョの裏のスペースを渓太が有効活用できるかどうか

 天野の起用法がどうなるか次第でしょうが、マルコスシステムだとマリノスが優位な噛み合わせ、従来の4-1-2-3だと清水が優位な噛み合わせという印象です。これに応じて、互いが人の配置を細かく切り替える応酬がもしかしたら発生するかもしれないです。互いの変化とそれに対する対応力もこの試合の見どころの1つだと思います。また、選手の質を見ても、ドウグラスと北川の2トップはリーグ屈指となっており、相手のカウンターには非常に手を焼きそうです。順位差、日本平でのいい思い出の数々にあぐらをかくと痛い目を見そうですが、これを乗り越えてなんとか4連勝を掴みたいですね!!

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