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大分+長崎+佐賀  蔵元アーカイブズ 2002〜05(9) 佐賀・天吹酒造

2003.11.22 by 猛牛

■『天吹』・・・新装なった試飲場やギャラリーを覗く。

吉野ヶ里を後にした、わてと家人。もうこうなったら、ひたすら奉る他ないと「粕取探訪祈願」平身低頭の一席。その甲斐あってか、有り難くも勿体なくも、家人は吉野ヶ里から東に車を走らせてくれた。しばらく、北茂安町にある『天吹』さんの蔵が見えてきた。

『天吹』さんが今年の初頭に、センスのいい試飲場やギャラリーを設けた新造蔵をオープンしたことは知っていた。実は9月のはじめ、家人とともに一度訪れたことがあるからだ。

あの時は、長年酷使した左足首になぜか突然激痛が走り、満足に歩くことができなかった。しかし、わてはそれをものともせず見学させてもらったのである。ん~ん、二○三高地。

というわけで、2ヶ月後の再訪問なのだが。またまたお邪魔した理由は、まず試飲場でもう一回飲みたかったこと。『天吹』さんは無料でも試飲させてくれるのだが、さらに300円出せば3銘柄をたっぷりと試飲できるんである。

前回、初めてお邪魔した時に、この試飲はうれしかった。

「天吹」の文字が浮かび上がったステンドグラスの扉を開けると、落ち着いたムードの試飲場が広がる。横には座敷もあり、なかなか良か風情。奧には冷蔵ケースが設置されていて、ひんやりと美味い酒が就寝中、ぬぅあんである・・・

ちゅーシチュエーションでの試飲三昧。この試飲場は什器備品に至るまでよく出来たものだ。

この赤ワイン用グラスの中で揺れる酒の量の多さをご覧いただきたい。実際はまだまだ注いでいただけるのだが、ここで酔っぱらって寝入るわけには参らぬ。そこで量を少なくしてもらった。それでも、すぐには飲みきれないくらいある。

銘柄は左から、『天吹・本醸造』『天吹・純米吟醸おりがらみ』『天吹・吟醸粕取25度』の3本。結局、家人が香りがいいと気に入った純米吟醸を購入した。

さて、再訪したもう一つの理由・・・。

■蔵二階に眠る、正調粕取の痕跡・・・木製蒸籠と兜釜。

試飲させていただいた女将さんと思しき方に、お願いしてみた。

猛牛「あのぉ・・・奧の蔵の二階に、粕取のための木で出来た蒸籠と、兜釜があるでしょ?よかったら、見せて貰えませんか?」

前回の訪問時、同社常務である木下壮太郎氏に蔵をご案内いただいたが、その際、蒸籠と兜釜が鎮座していたのを発見してウハウハとなった。しかし当日はデジカメを持っていなかったため、痛恨! 撮影が叶わなんだのである。

見学のご快諾をいただき、試飲場からさらに奧にある蔵二階へと向かう。

風神の鏝絵が印象的な蔵の屋根が、青空に映える。その名も「風神蔵」。柱や梁などの構造は、江戸時代以来の歴史を誇るという。内部に入ると、とても高い建物であることが解る。下から見上げると、ぬぅあんとも天井が遠いのだっ。

階段を上って二階へと上がる際、正面に「松尾様」の神棚が祀られていた。仕込みの時には、毎朝ここで蔵人さんたちが柏手を打つという。

二階は大きな仕込み用の桶が置かれるため、広くデカイ。しかもきれいだ。なんどか蔵見学を一緒に回った家人も、前回お初の時、「いいわねぇ」と感心していた。

さて。左画像ではフレームから切れている二階左奧に、わてが目指す聖遺物はあるのだ!

いまは使われることが無くなった、正調粕取焼酎製造の歴史を伝える“酒界遺産”である。

■天吹酒造所蔵「正調粕取焼酎蒸留用・蒸籠+兜釜」写真集

木枠および竹のタガで締めれた、蒸籠の全景。古式床しい蒸留器のお姿

もう一組積み上げてあった蒸篭。これは予備用か?

上部が若干虫食いにあっているのか? しかし保存状態は全般的良いように思えるが。

籾殻を混ぜた清酒粕を敷き込む蒸篭の内部。木製の内部は初めて見た。

上画像、左が金属製の兜釜、右が蒸篭である。

冷却水を入れる兜釜の上部。3本ある支柱の一本が折れているようだ。

撮影を終え、ん~~~~ん、満足じゃ!と喜びに打ち震えて車に戻ると、家人曰く、

家人「女将さんがさっき二階で、あんたが一生懸命撮影してる時に言ってたわよ。『ほんとにお好きなんですねぇ(@_@;)』って」
猛牛「だって、好きなんだもぉ~~んσ(*^^*)」

『天吹』さんでは、もうすでに正調粕取を造られてはいない。現在の主力は、花酵母を使った吟醸粕もろみ取りである。しかし、往時の記憶を伝える兜釜と蒸篭は、いまも蔵に遺っていた。逢えただけでも、撮影できただけでも、わてはうれしかったんである。

では、次はどこに参りましょうか? 車は、鏝絵の風神を後にして、東に進路を取った。

(了)


■2022年追記:木製の蒸籠による正調粕取焼酎蒸留器の細部まで撮影できて良かったと思っている。それ以前にお邪魔した杜の蔵さんでも接写できなかったので大きな収穫だった。


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