見出し画像

男性スタイリストから見た#KuToo問題

ここ最近、再び#KuToo問題に注目が集まっていますね。

内容についてはご存知だと思いますが、女性にだけ職場でヒールやパンプスが強制されているのは男女差別に当たる、として強制の撤廃を訴えている運動ということになるでしょうか。先日は署名が厚労省に届けられたことにより、衆院委員会でも取り上げられました。

これって、女性だけの問題ではない部分もあると思っていて。

実は僕もハイヒールが履きた…じゃなかった。
長年革靴を履いているせいか、左足が軽度の巻き爪なのです。

爪を切ったりすることで緩和できるレベルなのですが、やはり終日先の鋭角な革靴を履いていたりすると夜痛みます。なのでオケージョンによってレザーのスリッポンを履いたり足を休ませる工夫をしながら付き合っている。

僕は服装に関しては自由なのでそういったケアが出来ますが、もし勤め人で就業規則があったなら我慢しながらビジネスシューズを履かないといけなかったかも知れない。そう考えると確かに強制されているのは問題があるようにも思えます。だから一石を投じる意見として提起されたことには意味があるでしょう。

ただ、これは差別だとか企業、国が悪いという発想とは切り離して考える必要があるのではないかと。

なぜなら、先に述べたように男性のビジネスウェアについても有形無形の規定があるからです。

男性だって本音では毎日ネクタイを締めたくないしスーツを着たくないし、硬い革靴を履きたくない日だってあるのです。必要以上に汗をかいて汗くさくなったり肩もこれば足も痛くなる。時には楽なスタイルで仕事がしたいと本当は思っています。でもだからと言ってこれも差別だ!撤廃しろ!と押し通していったら、企業集団としての体をなさなくなってしまうでしょう。

私立を中心に独自の校則があるのは、その学校の教育理念とパブリックイメージを守るためです。制服含め、やはりあの学校の生徒は違うと憧れられることで価値が出るし、生徒もその学校に通っている誇りを感じられる。それを貶めるような行為には罰則があるのは仕方ないことでしょう。でなければその学校の理念や価値がどんどん崩れていってしまいます。

これを企業に置き換えると、やはり社員は社是とパブリックイメージを守ることが前提になるでしょう。まずその辺りをしっかり整理しないと「単なる個人の文句」になってしまう。

ファッション的な側面から言うと、きっちりしたビジネススタイルに身を包んでいるからこそ成立している企業やブランドというのは確実に存在しています。企業理念だったりお客様を迎えるにあたっての「おもてなし」を服装でも表現する。そこにこの金額でも仕方ないと思わせるだけのものがあるから、顧客は納得してお金を払っているのです。

例えば高級宝飾店のスタッフが”手袋の強制はおかしい”と素手でベタベタ触ったり高級注文住宅の営業スタッフが汚れた現場の作業着でどやどやと上がってきたら、以前と同じ価値を感じられるでしょうか?

つまり、働く側の都合で何かを変えるなら、同時に顧客側の前提も変えていかなければ不都合が生まれるということ。これは”ニコイチ”です。

もちろんプライベートに於いてはどんな服装だろうと自由です。でもビジネスではきっちりした服装であるほど顧客に敬意を表している、気を使っていると捉えるのが一般的。それが現在地点であることは動かしようのない事実です。そして、働く側もきっちりした格好をすることで気合いが入ったり自信が持てたりすることもまた事実でしょう。

男女問わずお勤めの方から、スーツやジャケパンスタイルにスニーカーを合わせたい!という要望は僕もよく伺います。そんな時は「休日のイベントやカジュアルなイベントの時から始めて反応を見ましょう」とアドバイスするのですが、それは顧客側からの目線も考えての上です。その反応を見ながら次の段階に入ればいい。

僕のように巻き爪だったり身体的な理由があれば考慮してくれる会社が多いでしょう。それをきっかけに社内で議論になり、ルールが変わっていくならそれも良し。差別だ人権だという言葉を旗頭にすればインパクトはありますが、本質は「働きやすい社会であってほしい」ということでしょう?その線ならば改善の余地は十分にあるはずなので、僕も時代に則したビジネススタイルを提案することで助力できたらと考えています。

ただ、個人的には先述した【ビジネスではきっちりした服装であるほど顧客に敬意を表している、気を使っていると捉えるのが一般的】という社会の前提が大きく変わらない限り、結局はヒールを履き、ネクタイを締めてスーツを着たビジネスパーソンが結果を出していくことになるんじゃないかなと。

だって、やっぱりハイブランドの人が趣味全開のアロハ着てたり高額な保険の外交員さんが履き潰したスニーカーだったらイヤだもん。スタイリストが醤油しみの残ったグレーのスウェットに雪駄とかで現れたらイヤでしょう?

服装は相手と仕事に対する気持ちの表れでもあるということも、また改めて考えてほしいと思うのでした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お仕事依頼はこちらからお気軽にどうぞ。

−ここだけの話が聞ける、ファッションとブランディングのお役立ちメルマガ配信中です−

「スタイリスト神崎の一日一装」
https://www.reservestock.jp/subscribe/82327

−個人向けのご提供中のサービス一覧はこちらから−
https://ameblo.jp/zozotokyo/entry-12347221817.html

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

サポート頂いた資金は、脳に栄養を与え、より良い内容をお届けするためのスイーツ代に充てさせて頂きます。