【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第二章「槻の木の下で」 後編 10
年を越すということで、斑鳩寺では、僧侶・沙彌・家人・奴婢たち総出で一年の埃を払い落とすこととなった。
弟成も、黒万呂とともに寺の大掃除に駆り出された。
とは言っても、弟成たち奴婢が、寺の中に入ることはできない。
彼らの仕事は、寺を取り囲む築地の埃を落とすことである。
特に、年長で、体重の軽い弟成や黒万呂たちの仕事は、築地の瓦の上に登らされて、埃を払い落とすことであった。
弟成は、黒万呂とともに築地の上に登って埃を落とした。
しかし、黒万呂はどうも心こ