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己の求めた砂漠

高校の同窓会へ行った
この前に行ったのは、多分、10年以上前だ
地元に残った連中の中には頻繁に連絡を取り合い、年に一度は飲んでいる奴らもいるらしいが、私は地元を離れたので、同窓会以外で高校の同級生と会うことはない
40人来たが、私が顔を見て名前がわかったのは6人だけ
あとの34人とは初対面のようのな緊張感を持って接した

行ってわかったのは、私が名前がわからなかった34人のうち、私のことをしっている人は結構多かった、ということだ
さらに、私は高校時代のことをほとんど忘れていることに気づいた
3年生の時のクラスメイトの顔は覚えていたが、それが何組なのか忘れていた
そんなわけなので、私のスタンスは、終始ニコニコしながら相手の話を聞く、というものに落ち着いた

私はあまり自分の話はしなかったが、それでも卒業後、私の辿った道のりは同級生にとっては珍しいものだったらしく、私は温かく迎え入れられた
56歳で結婚し、今日も子作りに励んでからここに来た、という挨拶がみんなの心を捉えたらしい
同学年の中で私が一番可愛いと思っていた子には孫が産まれていたので、確かに私のエピソードは驚愕に値するのだろう

同級生の話をニコニコしながら聞いていて感じたのは、みんな結構面白い、というということだった
前回の同窓会では、みんな何でこんなに飼い慣らされてしまったのか、と憤りを抱いた
だがそれから10年以上が経ち60歳という節目が見えてくると、そういうことさえも小さなことに思えてきて、何をしていようがみんな元気ならそれで構わない、とおおらかな気持ちになっていた
誰が何を喋っても、声が聞けるだけで幸せだった

年末だったので店を抑えるのは大変だったらしい
2次会の店までは抑えてくれていたが、3次会の店はない
2次会が終わり店の前で屯しているとき、私は別れの挨拶もせず、静かに集団からフェイドアウトした
みんなとは一緒にいたかったが、私にはやることがあった
己の求めた砂漠に戻らねばならない

私のやることとは、なるべく早く帰って寝ること
そうすることで、翌日をフルに使える
私は全ての一日を全力で生きようと決めていた
そうすることでしか、この先、自分の人生を切り拓けないことをわかっているからだ
同窓生には、次に同窓会があった時、もっとすごいエピソードを聞かせることで笑わせてあげればいい
私が同窓生に求められているのは、彼らが思いもよらないことを私がやることだ
そのためには、己の求めた砂漠に入っていくしかない

そうやって目覚めた翌日、何をやったかというと腕立て伏せ100回
週に2回はそうしようと決めている
己の求めた砂漠、といっても、実際にやるのはそんなことだ
だが、そんなことの積み重ねでしか自分の人生をコントロールすることはできない
わずかな時間であったが話を聞かせてもらった同窓生には、それぞれが自分の道を行くために何かしらの努力を続けていることを教えてもらった
そんな仲間から先にフェイドアウトして自分だけ己の求めた砂漠に帰っていったのは申し訳ないが、私は同窓生が孫の話をしている今、子作りをしているという時間がかかる人間なので、その点はご容赦願おう
そして次に会うときは、もっとすごい土産話を持っていこう
みんな幸せであってほしい
俺は幸せだ


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