見出し画像

空っぽの心とグラス

男というのは、本能的に子孫繁栄を考えるから性欲が強い。という事を聞いたことがある。
成人をしてからというもの、お酒の席ではどんな女を抱いたか、どんな女の子と連絡を取っているか、みたいな話で盛り上がるのが定番になった。

先日、先輩2人と男3人で呑み会をした。
男だけの呑み会というのは、酔いが回ってきた頃にそれぞれの経験人数や体験を話し出す。それも経験が多ければ多いほど良い。と言わんばかりに自信満々に。

冷静に考えると、いや冷静に考えずとも。
多くの女を抱いた人よりも遥かに1人の女をずっと愛している人の方がカッコいいのに、つくづくバカである。こんな話で盛り上がる先輩達も、そして僕も。

「この間の子がさ〜すげぇエロくて。」
「うっわ、マジで!!いいなぁ」
そんな先輩達の話を聞きながら、空っぽになったグラスをぼーっと見つめている。適当に相槌を打ちながらほんの少しでもいいな、思ってしまう節がある自分にも呆れてくる。

僕自身セックスは嫌いなわけでも好きなわけでもない。行為自体に気持ちよさを感じたことがあまりなくて、それよりもくっついて寝れることがあったかくて好きだ。

普段から八方美人で誰にも嫌われる事ないように生きてる僕は、その仮面を取ってでも抱きしめられて必要とされる時間が嬉しいのかもしれない。

my hair is badの「真赤」という歌詞の始まり

ブラジャーのホックを外すときだけ
心の中まで分かった気がした

学生時代はなんだこの歌は!と思ってたこの歌詞の意味がなんとなくわかるようになった。
セックスをすることは愛情表現の最終形態だと思っていたけれど、心の中までわかるわけではないんだ。むしろ心なんて何一つわからないときだってあるんだ。と。
肌と肌が触れていたとて、心が触れるわけではない事を知った。

僕らは目の前のグラスみたいに、空っぽになると求め合う。ただそれがセックスで満たされることなんてあまりない。
ワンナイトは薄いレモン酎ハイみたい。

一時的に満たされた虚しさのグラスは度数が低いからすぐに空になる。
このグラスに度数の高い愛が注がれたら、すぐに減ることもないだろう。

目の前にある空っぽのグラスを見つめる。
「なんか飲む?」
「あ、ハイボールお願いします」

呑み会の帰り道。自分の情けなさと虚しさと、いろんな感情が混ざって少し泣いた。
心のグラスも、注文して注いでもらえたらいいのに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?