【ガチンコ経営分析①】マクドナルドVSモスバーガー

皆さん、こんばんは。
5日ぶりの更新です。続けてアウトプットするのは難しいものです。。

今回はタイトルのとおり、マクドナルドとモスバーガーについて、ガチンコで経営分析してみました!
業界の知見は一切ないので、両社の公式HPと有価証券報告書のみを用い、その情報から分かる範囲での分析とします。

分析してみて、「え、そうなの?」と初めて分かる気づきも多かったので、マクドナルド派のあなたも、モスバーガー派のあなたも是非ご覧ください!
(この分析に思ったよりも時間がかかり、更新できませんでした。。。)

そして、自分で手を動かすことの大切さを改めて感じました。
『分かる』と『できる』も違うけど、『分かったつもり』で終わっていることも多いなと。

前置きはこのくらいにして、さっそく入っていきたいと思います。

マクドナルドとモスバーガーのポジショニング

ファストフードといえば、吉野家のキャッチコピーに象徴されるように、「うまい、やすい、はやい」です。
ワンコインで一食が済ませられる国民の味方ですね!

ファストフードのバリュー
 うまい、やすい、はやい

そんなファストフード業界ですが、「うまい」「やすい」「はやい」のどこに重きを置くかは、お店によって特色が出ます。

今回はファストフードの代表格であるハンバーガー業界を取り上げて、どんな特色があるか確認していきます。
出場選手は言わずもがな業界トップである「マクドナルド」と、それを追従する万年2位「モスバーガー」です。

マクドナルドとモスバーガーを比較すると、こんなイメージではないでしょうか。もちろん、人によってはモスよりもマックの方が好きという方もいると思いますが、いったん仮置きです。

ところで、売上=単価×客数で表現できますよね。
もし、上記のイメージが正しいとすると、マクドナルドは客数を、モスバーガーは単価を重視しているといえそうです。

今回の分析は、「ここらへんのイメージって本当なの?」を検証することにあります。本当にマクドナルドは客数重視、モスバーガーは客単価重視なのでしょうか。

本格的な分析に入る前に、もう少しイメージを揃えておきたいと思います。
マクドナルドが「やすさ、はやさ」を重視、モスバーガーが「うまさ」を重視しているとするなら、こんなふうに整理することもできるかと思います。

ポーター先生の基本戦略ですね。
一般に、飲食業界は「分散型(競合上の競争要因(戦略変数)が多く、優位性を構築する可能性が小さいパターン)」と言われます。
簡単に言うと、「規模化」してもオイシクナイ!ということです。

モスバーガーが「うまい」を重視した差別化戦略は分かりやすいですが、マクドナルドは本当にコストリーダーシップ戦略といえるのでしょうか。

ここらへんも深掘っていきたいと思います。

V字回復したマクドナルド、苦戦するモスバーガー

まずは両社の業績を見ていきます。

マクドナルドは平成27年度を境に見事なV字回復を果たしています。
むしろ平成27年度に何が起こったのか、ですよね(笑)

この時期のマクドナルドはまさに暗黒期でした。
平成26~27年度にかけて「マックフライポテトに人間の歯」「パンケーキに金属片」など、次々と異物混入の報告が相次ぎました。何よりも決定打となったのが『中国メーカー製の期限切れチキンナゲット』問題です。
今回の分析の目的から外れるので詳しくは触れませんが、ご興味がある方はネットに色々と記事があるのでご覧ください。

一方のモスバーガーは、ここ10年堅調に業績を伸ばしていました。が、昨年8月に大問題が起こりました。長野県で発生した食中毒事件です。
これが痛手となって、平成30年度の業績は大きく悪化し、11年ぶりの赤字に転落です。

両社の業績(平成29年度)をもう少し詳しく見ていきましょう。
なお、対象年度ですが、平成30年度はモスバーガーが①業績不振で比較に適さないこと、②3月決算のため現時点では詳細な数字が分からないことから、平成29年度とさせていただきます。

両社を比較すると、マクドナルドの圧勝です。「こんなに差があったの?」というくらいの差です。マクドナルド恐るべし。

実はフランチャイズ率の高いモスバーガー

なんでこんなに差があるのか、両社の違いを詳しくみていきます。
まずは売上高の内訳を比べてみましょう。

意外や意外、モスバーガーの方がマクドナルドよりもフランチャイズ収入が多いんですよね。
なんとなく、マクドナルドの方がフランチャイズ(以下、「FC」という)が多いイメージありませんか。僕はそうでした。

ということで、本当にFC比率が高いのか、または、ロイヤリティ率が高いのか確認しました。

両社の総店舗数(直営店+FC店)を比べると、マクドナルドがモスバーガーの2倍以上の店舗を持っていることが分かりました。
(しかもマクドナルドはここ9年間で800店以上を減らしています。)

肝心のFC比率はモスバーガーの方が約10%ほど高いです。
平成21年度時点でのマクドナルドのFC比率は54%と、ほぼ2つに1つが直営店だったようです。その後の4年間で一気にFC比率を68%前後まで上げ、今もその比率を保っています。
モスバーガーは緩やかにFC率を下げつつ、近年は78%前後を維持しています。

今回の意外な発見の1つが、この「マクドナルドのFC比率は想像よりも高くない」です。

総店舗数とFC比率(平成29年度)
 ・マクドナルド 店舗数 2,900店、FC率 68%
 ・モスバーガー 店舗数 1,400店、FC率 78%

マクドナルドだけもう少し深掘りします。
「総店舗数を減らして、FC比率を引き上げる」ということは、直営の不採算店舗を積極的に閉鎖していったとも読み替えることができます。

意図としては次のようなところでしょうか。
(すみません、しっかり深掘りできていません)
 ・売上よりも収益性を優先させる
 ・資産効率を上げる
 ・変動費化して不況に強くする

完全な妄想ですが、少子高齢化による市場のシュリンクを見越した打ち手なのかもしれません。いずれにしても、この戦略が功を奏し、現在の高収益に繋がっているのかなと感じました。
(下記のとおり売上高は下がりましたが、利益率はあがっています)

マクドナルドの売上高と営業利益率
 ・平成21年度 売上高 3,613億円、営業利益率 6.7%
 ・平成30年度 売上高 2,723億円、営業利益率 9.2%

圧倒的に高いマクドナルドの稼ぐ力

ここからは店舗の売上高(会社ではなく、店舗がどのくらい売上をあげているのか)について分析していきます。

なんとマクドナルドの総店舗売上高は5,000億円と、モスバーガーの約5倍もあります!このデータからもマクドナルドがV字回復していることが分かりますね。
モスバーガーは概ね横ばいで推移していますが、平成27年度以降、若干売上を伸ばしています。これはマクドナルドからのお客さんが流れたのかもしれません。

注目していただきたいのが店舗当たりの売上高です!
直営店、FC店ともにマクドナルドはモスバーガーの2倍強の売上を稼ぎだしています。店舗数も、各店舗の売上もモスバーガーの2倍以上あるから、両社の差がここまで大きいんですね。

なお、両社とも直営店の方がFC店よりも稼いでいるのですが、マクドナルドはその差が20%近くあります。これをどう解釈すべきかは分かりませんでした。
マクドナルドの直営店がすごいから差がついているのか、または、モスバーガーのFC店が頑張っているから差がないのか。。。

単価も客数も引き上げたマクドナルドのすごさ

さて、ここからが本題です。この差はどこから来るのでしょうか。
売上=単価×客数としたときに、本当にマクドナルドは客数、モスバーガーは単価を重視しているのでしょうか。

これを確認するために、両社の既存店の客数と客単価の推移(平成21年度対比)を見てみます。

マクドナルドは前述の『食の安全性』問題を契機に、客数重視から客単価重視(正確には客単価も重視)に戦略を見直しているように思えます。客単価が先行して100(平成21年度水準)を超えました。

他方で、モスバーガーは一時的に客単価や客数を増やせても長続きしていません。また平成30年度が落ち込んでいるのは食中毒事件の影響ですね。

以上のことから、マクドナルドは単価も客数も重視ということになるのですが、どうしてそれができたのでしょうか。
モスバーガーの情報があまり集められなかったので、ここから先しばらくマクドナルド中心の分析になります。

ざっくりと両社の4P戦略をみましょう。
このなかで、今回はPrice(価格)とPlace(チャネル)にターゲットを絞ります。

まずはPrice(価格)です。
客単価が上がってとはいえ、やはりマクドナルドの方が安いのでしょうか。

今月時点でのメニューの価格をご覧ください。
(※マクドナルドは4月に一部商品の価格(値上げ)を改定しています)

マクドナルドは低(100円)~高価格(400円超)まで価格帯が広いのに対し、モスバーガーは中価格帯(300円)以上が中心ですが、主力商品で比べると商品単価には大きな差がありません。

しかしながら、セット価格では100円以上差があります。
値上げにより単品価格を上げながらも、幅広い価格帯とお得感のあるセット価格によって(競合であるモスバーガーと比べて)割安感を演出しています。

次にPlace(チャネル)です。
以前のマクドナルドは古臭いイメージがありましたが、モダンな雰囲気のお店が増えましたね。平成30年度までに既存店の90%以上をリモデル(店舗改装)したそうです。

直近4年間は毎年400~500店舗(全店舗の15%に相当)を改装していたようです。
そしてこの間、ほとんど新規出店を行っていません。採算性の低い店舗は閉店しつつ、既存店の活性化を図ることに注力しています。
このデータからも新規出店による売上拡大路線からの脱却が見てとれます。

マクドナルドの成功要因(なぜV字回復したのか)をまとめると次のようになります。

マクドナルドは「コストリーダーシップ戦略なのか」問題

最後は両社の基本戦略の違いについてです。
(これについてもモスバーガーの情報があまり集められなかったので、再びマクドナルド中心の分析になります。すみません。。。)

両社がどんな戦い方をしているか知るために、コスト構造の違いを見ていきます。

再掲になりますが、今回は売上原価と販管費に注目してください。
両社のコスト構造を図示してみます。

マクドナルドの原価率が80%を超えています!!
なんとなくマクドナルドの原価って安そうな気がしていました(笑)
(マクドナルドさん、ごめんなさい。。)

他方でモスバーガーは原価率よりも販管費率が高いですね。

何故、この差が出るのかは分かりませんでした!すみません!
もしかしたら両社の売上原価や販管費に計上する項目が異なるのかもしれませんが、有価証券報告書からでは伺い知れませんでした。。

一つ言えることはマクドナルドの販管費が少ないということです。
率ベースでもそうですが、実が金額ベースでもモスバーガーを下回っています。これはリーダーであるマクドナルドは高い広告宣伝費をかけなくても、リポートを見込めるということなのかもしれません。

マクドナルドとモスバーガーの販管費の比較
 ・マクドナルド 266億円(10.5%)
 ・モスバーガー 319億円(44.6%)

有価証券報告書にデータが記載されていたマクドナルドについて、もう少し詳しく見ていきましょう。果たして、マクドナルドは規模化よるコストリーダーシップ戦略をとっているのでしょうか。

<注意>
上記項目での分類に際して、ここかなという類推が入っていますので、実際と異なる可能性があります(むしろ、その可能性が高いので注意)。
例えば、FC原価は人件費に、その他原価は賃料・光熱費等と仮定して分類しています。

規模が効きそうな「広告宣伝費」や「販売促進費」、「研究開発費」などは圧倒的に割合が小さいですね。

上記の分類がある程度正しいと仮定すると、、
コスト構造から考えると規模の経済はあまり効かないように思われます。

競合(モスバーガー)よりも低コストであることは間違いないですが、単純なコストリーダーシップ戦略とは言えなさそうです。

では、どのような戦略なのでしょうか。
もう一度、売上=単価×客数の原点に返りたいと思います。

下の図は時間あたりの店舗売上高と客数を比較したものです。
店舗売上高は前述のとおり2倍強ありますが、客数はそれ以上に差があります。

※客数の算出
 メニュー価格を参考に客単価を仮置きして保守めに算出
 マクドナルド:650円、モスバーガー:750円

ここから推察するに、マクドナルドは客回転率を高めることで売上を上げていそうです。

・・・確かに思い当たる節があります!

マクドナルドは「60秒サービス(60秒以内に商品が提供できないとハンバーガー無料券がもらえるキャンペーン)」というものをやっていました。

とにかく提供スピードが速いですね。しかも、作り置きではなく、です。
このオペレーションの効率性の高さにマクドナルドの強みが隠れていそうです。

別の観点からも、マクドナルドのオペレーション(以下、「OP」という)の強さが見えてきます。

次の2つの図をご覧ください。

マクドナルドの方が従業員が多くアルバイト比率も高いですが、一人の従業員が稼ぐ金額も大きいですね。
これは2つのことを示唆しています。

 ・アルバイトでも対応可能なオペレーションを構築している
 ・上記OPによって一人当たりの生産性(時間あたりの接客人数)が高い

コストに占める人件費の割合が大きいことは既に指摘のとおりです。
「OPの効率性の高さ」=「従業員の生産性の高さ」=「従業員の稼働率の高さ」が、低コストを実現するカギとなっているのです。

これまでの内容からマクドナルドの戦略をまとめると、次のとおりです。

ながーく、ながーくなりましたが、いかがだったでしょうか。
納得感はありましたでしょうか。
これが絶対とか、これが正しいとは全く思っていませんが、一つの考察としては多少価値がある気はします(笑)

最後にオマケです。

【オマケ】飲食業界にとっては「食の安全性」は絶対条件

事件が事件だったからかもしれませんが、マクドナルドは「食の安全性」問題から回復するのに18か月要しました。
飲食業界にとって「食の安全性」がいかに重要かを物語っていると思います。

果たしてモスバーガーが完全復活するのにどのくらいの時間が必要となるのでしょうか。。。

※回復までに要した期間
 既存店の売上高が最も下がった平成27年3月期から期間です。

以上、おわり

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