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対談Q水野良樹×川崎鷹也 第2回:プロの歌声は「うまい」じゃなくて「すごい」になる。


あの場をライブハウスだと思った。


水野:YouTubeで優里さんとやられているカラオケ対決あるじゃないですか。観ているファンの方たくさんいらっしゃると思うんですけど。やっぱり技術の面に目がいくと思うんですよ。ビブラートどれだけ足せるかとか、技術ゲームのおもしろさでできているから。でも、実はそれをどう感情に繋げるかみたいなことを、ご自身の作品ではやっていて。技術と感情の接点をうまく作るのが、どうしても難しいと思うんですけど。

川崎:難しいですね。僕は18歳からステージに立ち続けているんですけど、アコギ1本のライブって飽きるんですよ。

水野:なるほど。武器ほとんどない状態で。

川崎:だから、30分間どうやって飽きさせないステージにするかってことだけを考えていて。技術だけじゃダメだって序盤で気づいたんです。そして、テクニックとか技術じゃなくて、「なんかこのひとの歌、グッとくるんだよな、ゾクゾクするんだよな、なんでだろう」って考えたときに、月並みですけど、「すっごい心を込めてるな」ってどこかで気づいて。

水野:「心を込める」って、結果そこにたどり着くんだけど、何ですかね。

川崎:これ何だろう。音楽の授業で言われますもんね。「感情を込めて」「山動かして」って。

水野:男性シンガーソングライターで弾き語りがすごくうまくできるひと、多分5万人ぐらい全国各地にいると思うんですよね。だけどそのなかでポコンって抜け出てくるひとがいるじゃないですか。この差は何だろう。

川崎:運もあるとは思うんです。僕は、SNSでみなさんが曲を使ってくれて、僕の知らないところで曲がズトーン!って有名になってくれた。その背景は確実に運なんですよ。でもそこから、音楽番組や生放送に呼んでいただいたとき、何を見せられるかって大事なポイントで。家の六畳一間での歌い方、ライブハウスでの歌い方、レコーディングでの歌い方ってまったく違う。僕が六畳の自分の部屋でカメラ構えて動画を上げているだけだったとしたら、音楽番組に呼ばれたとき、きっと次に繋がってないなと思っていて。

水野:冷静ですねぇ。それは多分そうだと思う。

川崎:初の生放送のとき、僕は視聴者のみなさんに、「かますぞ!」「届けるぞ!」とか、1ミリも思ってなくて。テレビの向こう側なんて想像できてなかったんですよ。あのときいちばん考えていたのは、そこにいるスタッフとカメラマンさんに感動してもらいたいってことで。あの場をライブハウスだと思ったんです。

水野:はいはいはい。

川崎:裏話ですけど、初めての生放送で結構、「どれほどのもんなん?」って空気が出ていたんですよ。

水野:あるあるあるある。

川崎:しかも僕、アコギ1本だったんですよ。「音源ですか?」みたいなこと言われて、「いや、アコギ1本でいかせてください」って。

水野:生で?

川崎:はい。

水野:あらー! すごいことしたねぇ。

川崎:しかも前日、新しいギターに変えているんですよ。結構、激ヤバなことをしていて。スタッフのみなさんは、「お、なんかきたぞ」「曲なんとなく聴いたことあるぞ」「アコギ1本? ほうほうほう…」みたいな空気で。ここで何かを残さなきゃ俺は終わりだと思って歌ったんです。だから、感情とかいい声とはちょっと違うかもしれないですけど、上手に歌うことをやめたときに、ひとの心に届く歌を歌えるのかもしれないですね。

「うまいね」って言われるのがすごく嫌いだった。

水野:あー。「うまいね」って言われちゃう歌ありますもんね。

川崎:あります。

水野:歌そのものとか、そのひとの姿とか、その世界観とか、本当に感動しなきゃいけない核の部分じゃなくて、「うまいねー」って。こっち側がそれを超えないと、「うまいね」から脱皮できないんでしょうね。

川崎:まさにそのとおりで。僕、「うまいね」って言われるのがすごく嫌いだったんですよ。

水野:なるほど、なるほど。

川崎:だからライブで、「うまいね」って言われたときは、「あ、ダメだったんだ」って。それは多分、永遠のテーマです。音楽のプロとアマの違いとか、もう自称じゃないですか。僕も、「いつからプロって名乗ればいいんだ」みたいなところもありますし。でも、感動できる歌を歌う方はたくさんいらっしゃるんですけど、プロの声には圧倒されてしまうんですよ。

水野:ああ。

川崎:「うまい」じゃなくて、感想としては「すごい」になるんですよね。

水野:なるほどね。「うわぁー!」みたいな。

川崎:「あの30分、マジすごかったな」って思わせられるのがプロだと思っていて。もちろん玉置さんもそうですし、「うまい」とかの概念じゃないじゃないですか。だからそういう違いがあるんだろうなって。じゃあその「すごい」って何だろうってところを、どんどんまた紐解いていくと、動きなのか。表情なのか。目線なのか。いろいろあると思うんですけど。

水野:『関ジャム』をご覧になったみなさん、もしよかったら観てみてください。玉置さんが『JUNK LAND』ってアルバムを出したときのツアーのアンコールで。あれは「MR.LONELY」だったかな。

川崎:はい、「MR.LONELY」ですね。

水野:最後にアカペラで歌うんですけど。5000人の観客が本当に黙り込んじゃう。物音ひとつ立たせず。玉置さんの声だけに集中する。なんならその映像が流れた『関ジャム』の番組のスタジオも。

川崎:あれすごかった。

水野:空調の音が聞こえるぐらい、みんなシーンって画面を凝視して。そのステージ僕、生で観ているんですよ。あの場にいたんですよ。

川崎:僕1歳です。

水野:僕14歳か15歳。それが、プロのひとのライブを観た初めてだったんですよ。初のプロステージが玉置浩二さんのあのアカペラ。

川崎:えー!

水野:まだ14歳で、ギター片手にちょっと音楽に憧れがあったけど、技術的なことなんて全然わかってないですよ。で、観に行って、感動を表現できる言葉も持ってないけど、「うわぁ!」ってなった。忘れられないぐらい、「うわぁ!」って14歳の少年がなった。多分あそこにこの問いのヒントがあったと思うんですよね。

川崎:水野さんが思う「いい声」の概念は何なのか、ちょっと聞いてみたいです。どういうときに「いい声だな」っておっしゃるんですか?

水野:改めて聞かれると難しいですね。さっきの話と重なっちゃうんですけど、僕はわりと歌うほうではなくて、曲を作る人間だという自意識は強くて。やっぱり自分は、「その曲を届けたい」と思っているから、そこに集中できる声は「いい声」なんですよ。

川崎:あー!

水野:作品自体に感動してもらえるものが、「いい声」だと思っちゃう。立場的に。だから「うまい」とか技術の部分に目がいくのではなくて。僕は僕なりに、「お客さんに感動してほしい」「お客さんの心が動いてほしい」と思って曲を作っていて、一緒にたどり着きたいから、そこをよく考えますね。

川崎:これ難しいですね。なるほど。

水野:声に勝ちたいって思っちゃう瞬間もあるんですよ。

川崎:えー、おもしろい。

水野:いきものがかりで吉岡と一緒にやっていて。お互いあると思うんですけど、自分の歌声が褒められるのか、曲が褒められるのかで、ライバル意識みたいな。

川崎:なるほど! あー!

水野:それでいい意味、高め合って、「曲を聴いてくださる方が喜んでくれればいい」みたいなところでやっているから。でもやっぱり吉岡の歌に負ける瞬間もあるし、いろんな方に歌っていただいたときに、やっぱりマーチンさんの声ってすごいなぁとか。石川さゆりさんの声ってすごいなぁとか。いい意味で打ちのめされる瞬間がたくさんある。だから、答えはないかもしれないですね。

川崎:永遠のテーマですよね。「いい声」とは何ぞや。

お客さん全員の目を見たい。

水野:ちょっと脱線するかもしれないんですけど、デビューしたときひとつのヒントがあって。僕らは絢香さんと同期なんですよ。で、たまたまMステで一緒になる機会があって。そのとき僕、ファーストインパクトの絢香さんだったんだけど。楽屋でスタジオのリハーサルのモニター見られるじゃないですか。

川崎:はい。わかります。

水野:「今日は同期の絢香さんってひとが出るらしい」って、僕リハーサルをモニターで見ていたんです。あれって、スタジオの音は流れてないんですよね。映像だけ。でも、歌い姿を見ただけで、「負けた」って思ったんですよ。

川崎:え!

水野:曲が聴こえてくるかのような歌い姿だったんですよ。多分そのときは本番の衣装じゃないですよね。リハーサルなので。だけど、カメラ割りとかはやっていて、どのシーンも絵になっているんですよ。

川崎:へぇー!

水野:さすがに吉岡には言えなかったけど、「これは負けているわぁ」って。で、本番、あのイスに座って。

川崎:あ、出た!

水野:目の前で聴くわけですよ。「やべーなぁ」みたいな。だから、声だけでもないというか。

川崎:なるほどー。

水野:ステージ上でお客さんを前にして、いかに身体全体を通して、そのメッセージや歌をエンタメにしているかみたいなことも、実はすごく大事で。そこがさっきの玉置さんにも繋がるんだけど。

川崎:はい。

水野:やっぱり玉置さんの歌声の表情を見ていると、来るものがあるじゃないですか。

川崎:声だけじゃなく、表情、動き方、目線でプラス要素って絶対的にありますよね。音源だけじゃ伝わらない部分というか。

水野:そこらへん、ステージとかテレビの前に立たれていて考えることってあります?

川崎:実はあまり動きに関しては考えてなくて。ただ、お客さん全員の目を見たいとは思っているんです。

水野:ほうほうほう。

川崎:それこそこないだ、愛媛とか和歌山とか仙台とかでライブしたんですけど。1000人、2000人の全員の目を見たいと思いながらライブをしていて。その1~1時間半のなかで見れるかなぁって。

水野:視線を合わせたいのはなんでですか?

川崎:僕の楽曲に関しては、それこそ「魔法の絨毯」とか、奥さんに向けて書いた歌で。100%リアルで、誰かに向けて曲を書いていて。究極、「みなさんに楽曲をわかってもらいたい」って思ってなくて。「このひとに向けて書いているから、このひとがいいって言えば、いいや」って。

水野:うん、うん。

川崎:シンガーソングライターって、自分のエゴだし、曲は僕の日記だと思っているんですよ。だから今後、月日を重ねたらまた違う曲調になっていくかもしれないし、違う歌詞を書くかもしれないんですけど。そういう意味で、ライブに関しても、「全体のひとに歌っているよ」っていうより、「今この瞬間はあなたに」「この瞬間はあなたに」ってやるのが僕のスタイルとしては正解という感覚かもしれないですね。

次回の更新は9月7日に更新します


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