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J2観戦の薦め!プレーオフ復活、J2オリジナル10、J2得点王の変化

「J2を楽しもう!」

明治安田生命J1リーグは日本代表戦のため、5月29日の第16節終了後に3週間の小休止。シーズン中には何度か代表戦ウィークがあり、その度にJ1が休みになるが、J2やJ3は休みなく開催される。今回は2週続けてJ1が休みとなるだけに、J2やJ3を大いに楽しむべきだろう。

3年ぶりの復活!J2の魅力を大幅に拡大したプレーオフ

特に今季のJ2は新型コロナウイルス感染症の影響のために中止されていた「J1参入プレーオフ」が3年ぶりに復活。昨年はジュビロ磐田と京都サンガが早々と“2強”体制を築いていたが、プレーオフ復活の影響か?今年は中盤戦に入っても例年以上に多くのチームが1試合ごとに順位表の上から下までを行ったり来たりする大混戦が続く。

1993年に開幕したJリーグにあって、J2が創設されたのは1999年。Jリーグ誕生から7年目のシーズンだった。以降、10チームでスタートしたJ2は降格制度なしに毎年参入クラブを増やし、2012年に現行の22クラブ制となった。

そして、その2012年からプレーオフ制度が設けられた。J2の年間順位1位と2位がJ1へ自動昇格するレギュレーションに変化はなかったが、同3位から6位がプレーオフ準決勝・決勝を戦い、その勝者がJ1へ昇格できる『J1昇格プレーオフ』として導入された。

ただ、その昇格プレーオフ勝者としてJ1へ昇格したチームの成績が全く振るわなかったこともあり、2018年以降はプレーオフ勝者とJ1年間16位チームによる入替戦を組み込んだ『J1参入プレーオフ』へと改められた。

一方、2012年以降は降格制度も誕生。2012年と2013年は1クラブ、新たにJ3が創設された2014年以降の3年間は1クラブ+入替戦の1.5枠が設けられ、2017年以降は現行の2クラブの降格が通例となっている。
(※新型コロナウイルス感染症による影響で2020年は昇格プレーオフが中止、降格はなし。2021年もプレーオフは中止の一方、4クラブがJ3降格)

休みなく続く全42節の長丁場であるJ2は、プレーオフや降格制度の導入によって毎年のように最終節まで自動昇格・プレーオフ・降格のいずれかに関わる可能性のある対戦カードが目白押しとなった。

ちなみにJ1昇格へ繋がるプレーオフの勝者は年間順位最上位となる3位チームが制したケースは過去の全8大会中、僅か2度のみ。この辺りも混戦が名物のJ2らしいデータだ。

2019年には最終節11試合の模様を芥川賞作家・津村記久子氏がパロディ化した新聞短編コラム著書『ディス・イズ・ザ・デイ』(朝日新聞出版、表紙は当稿のトップ画像)がサッカー本大賞を受賞するなど、J2はエンタメ性も含めた多くの見所を持つリーグとなっている。

川崎や鳥栖ら優秀な「J2オリジナル10」


1993年に開幕したJリーグ。創設当時の10チームは「オリジナル10」として認知されている。それは比較的若く、ファン歴の浅いサッカーファンの間でも浸透しているだろう。

しかし、1999年に創設されたJ2における「オリジナル10」は御存知だろうか?言える人はかなりのマニアだろう。

「J2オリジナル10」 を日本列島の北側から列記していく。(読者の皆さん、問題だと思って一呼吸置いて少しずつスクロールして読み進めてください)

・(現・北海道)コンサドーレ札幌
・ベガルタ仙台
・モンテディオ山形
・アルビレックス新潟
・大宮アルディージャ
・FC東京
・川崎フロンターレ
・ヴァンフォーレ甲府
・サガン鳥栖
・大分トリニータ

皆さんは全10チームを言い当てられましたか?

改めて見直すと、(山梨県)ヴァンフォーレ甲府の次に西側となるクラブが(九州の佐賀県)サガン鳥栖まで飛んでいるのは驚きだろう。現在は22チームによるホーム&アウェイ戦を1度ずつ戦うJ2だが、創設元年はホーム&アウェイを2回ずつ戦っていた。九州2クラブの遠征費は大迫勇也より半端なかっただろう。

そして、このJ2オリジナル10は全クラブがJ1昇格を経験している。逆に多くのクラブがJ2降格も喫している中、10クラブ中最後となる2012年からのJ1昇格を決めた鳥栖だけが1度もJ2降格を経験していない。ちなみにJ2降格の経験がないクラブはJリーグ「オリジナル10」の鹿島アントラーズと横浜(F)マリノス、そして、鳥栖の3クラブだけだ。

今季J1で11年目を戦う鳥栖は近年、下部組織もU15、U18が共にタイトルを獲得するなど、黄金期を迎えている。直近5年で4度のJ1制覇を成し遂げている川崎フロンターレ、Jリーグチェアマンを輩出した北海道コンサドーレ札幌と共に、Jリーグの理念となる地方創生と地域密着の面でも模範となるべきクラブだ。

コロナ禍以前の営業収入で比較するとJ1が平均40億円代後半であるのに対して、J2は15億円程度。J1の3分の1の規模とはいえ、創意工夫で特徴が見えるクラブが多い。

サッカー流行語大賞「個人昇格」


そして、J2と言えばチームが昇格を勝ち取れずとも優秀な若手が台頭し、その選手個人をJ1クラブ勢が引き抜く「個人昇格」が年を追うごとに多くなっている。

背景にはJ1クラブから優秀な選手が海外移籍する流れがある。海外移籍はシーズン制のこともあって夏に起きることが多いため、シーズン中に新外国籍選手を他国から獲得するのは時間やコスト、成功の度合いでリスクが大きいため、国内の市場に目を向けるのは賢明な流れだ。

加えて、J1に加入したJ2選手が即戦力として活躍するケースがどんどん増えていることも個人昇格が増える傾向を後押ししている。また、新卒選手がJ1クラブからのオファーを断り、個人昇格を前提にJ2クラブに加入する新たな流れも生まれている。引き抜かれる側のJ2クラブもJ3から穴埋め補強を行うこともあり、J2と個人昇格は切っても切れない関係にある。

サッカー流行語大賞のような「個人昇格」という言葉は、今やほとんどのサッカーファンが以前からあったように当たり前に使用されている。

そして、東京ヴェルディからMF藤本寛也(ジル・ヴィセンテ/ポルトガル)、磐田からDF伊藤洋輝(シュトゥットガルト)らが引き抜かれたように、J2での活躍のみでも直接海外クラブへ移籍するケースも増えて来た。今やイングランドの強豪アーセナルで堂々とプレーする日本代表DF冨安健洋もJ1の出場歴は10試合のみだ。

J1経験が乏しく、ほぼJ2での活躍のみで海外移籍を勝ち取った選手には、元日本代表MF香川真司(シント・トロイデン/ベルギー)、元ブラジル代表FWフッキ(アトレチコ・ミネイロ/ブラジル)の2人も挙げられる。

彼等のJ1出場記録は香川が11試合7ゴール、フッキも22試合8ゴールのみであるのに対して、J2では香川が114試合48ゴール、フッキが80試合62ゴールを記録。彼等は「J2が育てたワールドクラス」だ。そして、「J2得点王」である共通項を持つ。

歴代J2得点王

香川やフッキも獲得したJ2得点王が高齢化!

J2得点王がその後にJ1でも得点王を獲得したケースは、エメルソン、ジュニーニョ、佐藤寿人と3度ある。基本的に若手の台頭と個人昇格がセットのリーグであるだけに“出世”コースである証明でもある。

しかし、2020年にJ2得点王に輝いたピーター・ウタカ(京都サンガ)は、過去(2016年)にJ1得点王を獲得している初のケースとなった。しかも当時36歳でJ1・J2・J3通じてJリーグ最年長得点王となる記録だった。

実はJ2得点王には大きな変化が生じている。今季で24年目を迎えているJ2だが、15年目となる2013年に当時ジェフユナイテッド千葉のブラジル人FWケンペス(2016年にシャコペエンセの飛行機墜落事故で他界)が初めて30歳代でJ2得点王に輝いて以来、5年連続で30代の得点王が誕生している。それまでの14年間で1度もなかったことが5年連続で起きるのは偶然ではない。

実際、J1得点王の平均年齢がどの年度で区切っても29歳前後であるのに対して、J2得点王は2012年までの平均25.36歳から2013年以降には31.0歳と一気に6歳も上がっている。

2012年から昇格プレーオフと降格制度ができたことにより、さらなる「結果」重視の傾向が代表経験など実績あるストライカーの獲得に繋がっているのだろうが、選手側にとってもJ2には新たなメリットや魅力が生まれたこともあるだろう。地域密着の成果として観客動員やスポンサー収入が増えたクラブも多い。

【公開予定記事】

『DAZN』中継リポーター加戸英佳さんインタビュー


今季毎試合激戦必至のJ2にあって、個人昇格に翻弄されながらも、「別れあれば、新たな出会いもある」J2らしさ満載のクラブがリーグ全体を掻きまわしている。新監督を迎え、実績十分な新戦力を揃えてクラブ史上初のJ1昇格を目指す、ファジアーノ岡山だ。
 
そんなチームを誰よりも近くから見ている『DAZN』Jリーグ中継ピッチサイドリポーターの加戸英佳さんに数々のエピソードを伺い、"ファジ”とJ2観戦の楽しみを伺ったインタビューをフットボールWEBマガジン『Qoly』さんにて公開いただきます。

お楽しみに!


加戸英佳さんご本人Instagramより


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