「やってみてわかったこと」を「まだやってない人に伝える」のは、大変である。

※長すぎたので投稿、公開後2記事に分けました(前編)※

転職した知人のとまどいを聞いてあらためて思ったこと。

その知人は前職である程度いろんなことが上手になって、新人教育を任されていた。
いろんな人に仕事を教える中で、相手が"何がわかってないか"を敏感に把握して、
その都度自分で振り返ってどう伝えれば伝わるかをアップデートしていた
そうだ。

そんな知人が最近転職して、いままでとは全く違う未経験の仕事をやることになった。
当然、その職場の先輩にいろいろ教えてもらうのだが、もう"自分だったらこう教えるのに"をベースにした
"こうやって教えてくれればもっと早く理解できたのに"ってのが浮かんで浮かんでしょうがないそうだ。

それを聞いて思ったのが、

その新しい仕事の能力は先輩の方が上なんだろうけど、

たぶん”わからない人に教える”能力は知人の方が上なのだ。

知人からすると当然先輩に「こうやって教えた方がいいですよ」とは口が裂けても言えない。
仕事の内容に関しては、どこがわかんないかわかんない状態なので、正しい問いもできない。

先輩からすると、自分の理解に基づいてちゃんと教えたはずなので、
相手がなんでわかんないのかがわからない

彼らの場合、上下関係とか無視して知人(教えられる側)が、先輩(教えてくれる人)に
"教え方のフィードバックする"ことが許されればいいのに、と思ったけれど、
それもそもそもその知人が"人に教えることに関して高度な能力を持っている"から可能性があるだけで、
人に教えることを訓練してこなかった場合はそんなフィードバックは不可能だ。

知人が先輩に”教え方”を教えたらどうなるのか見てみたいところだが、叶わないだろう。
フラクタルというか、堂々巡りというか。

"教え方"にまつわる話なのでこんがらがったが、
"教えられる側がなにをわかってないのかを教える側がわかってない"
もっというと、
"教えられる側がなにをわかってないのかを教える側がわかってないというこことを、教える側がわかってない"
ってことはよくある。

自分も社会人11年目なんで、当然後輩になんか教えなきゃ的なことも増えてくるし、
社歴が近い先輩や後輩がヤングに教えたりしてるのを見る視点も自分事に見えてきた。

自分がヤングに対して言ってることは、
常に「この年次だったときの自分が言われてもわかったかな」と思い返しながら言葉を選んでるんだけど、
そういうときに陥りがちな罠によくひっかかる。

「なんか概念的な”まとめたことば”を”コツ”として扱って、
自分の中にそ”のことばにまとめるに至るまでに考えたすっごい具体的ないろんな要素”をすっ飛ばしてる」

ことがあるのだ。

これは超危険である。

たとえば寿司職人が40年やって、
おいしい寿司をつくる極意が
「お客さんの「おいしい」のために握る」
という"ことば"にまとまったとしよう。

1年目の見習いの青年にその大将は言う。
おいしい寿司をつくるには
「お客さんの「おいしい」のために握るんだ」

1年目の見習い青年、ぽかーん。

で、40年後。
大将になった青年は悟る。
おいしい寿司をつくるには、「お客さんの「おいしい」のために握る」のだと。

遅っ!40年かかって見つけた答えが伝わるのに40年かかってる!

極端に言えばそういうことだ。
万が一これを読んだ寿司職人の方が不快に思ったらすんません。

実際自分がヤングの頃、この「ぽかーん」を相当味わってきた。

経験値が上の人に「こうすればいいんだよ」と言ってもらった概念的な"ことば"に、「なるほどー」と言っておきながらよくわかんないことが多かったし、自分なりに実践してみてもうまくやれたかどうかもわからないことばかりだった。
(まぁ単に自分がアホだったという可能性の方が高いが)

で、自分が教える側になって、似たようなことをヤングに言ってることにある日ふと気づいた。
これはあかん!絶対こいつピンと来てない!あたふたあたふた。

"教えられる側がなにをわかってないのかを教える側がわかってないことを、教える側がわかってない"ことに気づいたのだ。


あぶねー!というわけで、教わったりアドバイスをもらって自分がピンときて、次のアウトプットでレベルアップできたと感じられた事例
思い出してみた。それは自分の師匠の教え方なんだけれども。

ある映像の企画を出す。
「ここがダメ」「ここが出来てないからこれはダメ」「伝わってない」「ん?」とか散々言われたあとで、
こっちも「ん?」って思ったまま「なるほどー」って言ってから、師匠のとこに持っていく。

師匠は「この部分をこうしてだな…」と、目の前で赤ペン先生。
するとどうだろう、「うわーこれめっちゃ良い!」と思えるものになっている。

そこで解説が入る。

「お前がやりたかったのはこうだな」「はい」「それにはそもそもこれが達成されてなければならない」「はい」
「お前が出したのにはこれが足りない」「たしかに」「だからこれをこうした。するとどうだ」「達成された」
「つまりまとめると、こういうことだ」「なるほどー!」

的な。

「お客さんの「おいしい」のために握る」的なことを言うのは最後だ。

また寿司で言うと、
実行時のコツを、シャリの温度やら身の切り方やら握り方やら具体的に説明する
次にその適切な実行のために仕入れのときはどうするこうする、と準備の仕方を具体的に説明、
具体的なプロセスとその目的もしくは理由を相手が理解できたところで「要するに、お客さんの「おいしい」のために握るってことだ」とまとめる。

こうすると見習いの脳内では

お客さんの「おいしい」のために握る」っていうワードだけで、
シャリの温度、身の切り方、握り方、準備の基準もろもろの具体的なコツを呼び出すことができるようになる。

"ふりかえってまとめたことば"は、ふりかえったときに浮かぶ膨大な学習と情報の山のうえに成り立っているからだ。

その膨大な学習と情報の山をすっ飛ばして、"ふりかえってまとめたことば"だけぶん投げても意味ないのだ。
意味ないのだ、は言いすぎた。うまく伝わらないのだ。

知人と先輩の話で言うと起こっていることはたぶん、話を聞いてると、
先輩が経験の中で身につけた、いまではなんなく無意識で当然のようにやっていることをすっ飛ばしてるということだ。
膨大な学習と情報の山をすっ飛ばして、"ふりかえってまとめたことば"だけで伝えようとしている。

もらったzipファイルが開けない状態だ。
違うか。

「やけに軽いaiファイルもらったけど、配置したpsdが全部リンク切れててアートボードが白紙」に近い。

先輩のHDD(脳みそ)には丁寧につくったpsdファイル(具体的な知識、経験と実感)がたくさんあって、
それを配置してちゃんとリンクしてたaiファイル(ふりかえってまとめたことば)だから、
先輩のHDD(脳みそ)のなかでは開ける。

知人のHDD(脳みそ)にそのaiファイル(ふりかえってまとめたことば)だけ送っても、psd(具体的な知識、経験と実感)がないから開けない。

こういうことだ。

この図でいうと自分がその"ふりかえってまとめたことば"に至るまでのプロセスである具体的な知識、経験、実感を伝えたうえで、
それを配置してまとめた概念として、“ふりかえってまとめたことば”を伝えないと、ぽかーんとされるだけ
なのだ。きっと。

具体的な知識、経験、実感を伝えるってのもまた難しいので、
具体的に追体験させるしかない。

とにかく"やらせる"ことだ。

自分がやってはじめてわかったことは、
他人だってやってはじめてわかるのだ。

"ふりかえってまとめたことば"に簡単に集約することはできない。

これを応用すると、成功者の成功ロードふりかえりインタビューや本を読んで、
"ふりかえってまとめたことば"だけ追ってても成功できない
というのも合点がいくし、
成功者のインタビューが"ふりかえってまとめたことば"ばっかりだったときに
なんかイラッと来る
のにも説明がつく。

人間の記憶システム上仕方ないことではある。
ざっくりまとめて記憶や理解するからだ。

そのときそのときに徹底的に考えて課題をクリアした経験、得た知識、実感の果てにたどりついた結果を、
「お客さんの「おいしい」のために握る、に尽きますね」的なことでまとめられても、ぽかーん、である。
(成功者やインタビュアーをディスってるわけではない。あくまで人間の理解システムの話ですよ)

「ボールが来たらバットをブンッて降ってバーンと当てるんですよ!」
と言われても打てるようにはならない
のである。


知人と先輩の話に戻すと、知人は"ふりかえってまとめたことば"しか先輩に伝えてもらえていない状態なのではないか。先輩は自分でひとつひとつ経験し学んだいろんなことをひっくるめて言語化したことばだから、それだけで中身の膨大な情報にリンクして瞬間で理解できるし、伝えたと思えてるかもしれないけど、知人は本の中身読んでないのに本のタイトルだけ聞かされて中身を理解しろと言われてるようなもんで。がんばれ知人。

僕がこの記事で結果トライしてたのは「「やってみてわかったこと」を「まだやってない人に伝える」のは、大変である。」という"ふりかえってまとめたことば"を最初に言いつつ、それに至る具体的なプロセスを具体的にあーだこーだ記し、そのうえでつまりですね、と、こうまとめることだ。


「やってみてわかったこと」を「まだやってない人に伝える」のは…

大変である。



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