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P19_届けるまでが映画です 丨 『東京彗星』オンラインパンフレット_映画制作とは⑧試写会・映画祭

僕の監督映画『東京彗星』を例に、映画制作がどうやって進むのかを書くシリーズです。

企画・脚本・絵コンテ・ロケハン・オーディション・撮影・仮編集・仕上げを終えて、ついに映画が完成しました。しかし、映画は完成がゴールではありません。遠足の例えを出すまでもなく、お客さんに届くまでが、映画制作です。

作品が完成したあと、お客さんに届けるまでには本作では3つのステップがありました。

・試写会
・映画祭への応募・参加
・公開

本当はここに「宣伝」が入りますが、今回は自主映画の自主興行なので、宣伝は "公開"のなかに含みます。

通常の商業映画では、制作費と同じかそれ以上のお金を宣伝広告費をかけます。制作費が1億円だったら宣伝費も1億円、チケット代の半分は劇場の取り分なので、制作費15億!と言っている映画の興行収入が20億円だったとして、「おお黒字か」と一瞬思いますが、これだと大赤字です。(聞いた話や読んだ話なので、実感や実体験ではないですが)

今日は、試写会と、映画祭への応募・参加について書いていきます。

試写会

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完成から1ヶ月後の2017年7月21日(金)の夜、IMAGICA五反田の試写室(由緒正しき伝統の試写室!)にて2回に分けておこないました。この試写会は、本作の制作をさせてくれたMOON CINEMA PROJECTクラウドファンディング投票において「試写会ご招待」のリターンを選択してくれた方のための試写会、というのがメインの目的でした。自主映画の試写会がIMAGICA五反田ってのはほんとに贅沢です。ありがとうございます。

その他にももちろんキャスト・スタッフ・協力してくれた人・いままでお世話になった人などをご招待して、2回とも満員で上映することができました。スクリーンで自分の映画を上映するのは、高校3年のときのインディーズ・ムービー・フェスティバル以来。やっぱりたまらんもんでした。

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スクリーンで映画を観るという行為は、ディスプレイで観るのとは全く違う体験です。もちろん、雑音の多い明るい部屋で小さいディスプレイで観るのと、真っ暗な空間でスマホをオフにして大画面で観る、という体験ベースでも全然違うのですが、科学的にも透過光のディスプレイで観るのと、反射光のスクリーンで観るのとでは、脳の反応する分野に差があるそうで。ディスプレイでは気づかなかった誤字も、出力して見直すと気づく、みたいなことです。僕らはふだん反射光でものごとを現実として知覚しているので、スクリーンの反射光で観る方が分析思考や論理的なところが反応するし、作中の出来事を現実だと信じて没入することも、ディスプレイよりスクリーンの方がしやすいです。透過光で観ると花火とかイルミネーションみたいな感情的な反応が主に来てしまうのではないか。これもどっかで読んだ話ですが。

映画が映画として本当に存在するのはやはり、スクリーンに投射され、そしてお客さんが席で観てくれている刹那的な時間のみなのです。


映画祭への参加・応募

完成・試写会後に国内外のたくさんの映画祭に応募してもらいました。商業映画ではない作品は、映画祭での選出・上映が作品を広めるカギになります。商業性を全体で担保している映画祭では、興行での集客力は期待できないような作品も、作家性や芸術性を評価して招待してくれるからです。

商業映画でも、映画祭は大事です。カンヌでパルムドールをとらなかったら、『万引き家族』を観に行ってなかった人はたくさんいると思います。
映画祭というのは全体でひとつの作品というか、イベント、興行です。ゆえに、単に優劣というよりは、選出作品の傾向があります。あっちではかすりもしなかったけどこっちではグランプリ、逆にあっちでは賞とったけどこっちは落ちた、なんてことがザラです。そういう中では、国内でゆうばり・ショートショート・SKIPシティにそれぞれ選出していただいたことは、とても光栄です。それぞれ趣向が違う映画祭だからです。ありがとうございます。
数十の映画祭に応募して、現時点で選出いただいた映画祭は、7つ。

・ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018(日本)
・ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2018(日本)
・SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018 (日本)
・札幌国際短編映画祭2018 (日本)
・ハリウッド・ドリームズ国際映画祭2018(アメリカ)
・アクション・オン・フィルム映画祭2018 (アメリカ)
・キノフェスト国際映画祭2018(ルーマニア)

それぞれ参加したものを紹介します。
いずれ参加する機会がある方の参考になればと思います。


ゆうばりファンタ

ゆうばりファンタスティック映画祭2018
時期:3月
場所:北海道夕張市
種別:長編・短編

最初に選出してくれたのは、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭(ゆうばりファンタ)でした。ファンタスティック映画とは、

存在しそうもない人物や世界,起こりそうもない出来事を描く,言い換えれば,本来子供が抱くような想像や願望を満たす空想的・幻想的な映画。編集や特殊効果が重要な役割を担う。(出典はこちら)

SFとかファンタジーとかホラーとかスプラッタとかですね。ゆうばりは知る人ぞ知る、世界的にも有名な大映画祭です。若き日のタランティーノが訪れてめっちゃ気に入り、『KILL BILL』の登場人物GOGO夕張の名前のネタになっていることでも知られています。記念すべき第1回(1990年)のクロージング作品は、ジェームズ・キャメロンの『アビス』…1994年のオープニング作品は『デモリションマン』。運命を感じます。

血がぶしゃー!とか、ハジけた映画を上映するイメージだったので、けっこうお真面目につくった『東京彗星』を呼んでくれたのは、意外でした。しかし行ってみれば、もちろん血がぶしゃー!みたいな映画もありましたが、ありとあらゆるジャンルの個性的な作品がてんこ盛り。シネコンでメジャー映画ばっかり観ていた僕にはほんとに衝撃でした。

そしてなんといってもゆうばりの魅力は、交流です。行く前に、行ったことのある人にいろいろ「ゆうばりは最高だぜ」と聞いていましたが、宿を合宿所の相部屋にしていて、しかもひとりで行ったのでめちゃくちゃ不安で。しかし終わってみれば…僕も初めて行く人にこう言うと思います。「ゆうばりは最高だぜ」

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一日中映画を観て、自分の映画を上映して、夜はみんなで飲む。なんせみんな超がつくほどの映画好きですから、話が終わりません。喫煙所や飲み屋で、すぐ打ち解けられます。初参加のぼっちにもみんな話しかけてくれました。審査員を含め参加者の多くが北海道以外から宿泊で来ているおかげで、いま観た映画の監督だけでなく、入江監督とか、瀬々監督とかがふつうにそのへん歩いてるんです。すごい。ゆうばりで出会った映画人たちとは、今でも交流が続いています。

ゆうばりでは「ゆうばりチョイス部門」という、賞とは関係ない部門での上映だったので、唯一狙える"観客賞"を狙ってたのですが、見事『カメラを止めるな!』にもってかれました。悔しい。というわけで受賞はなにもありませんでしたが、得たものはたくさんあります。素敵な映画祭でした。ありがとうございました。

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↑本作はゆうばりにて、ワールド・プレミア(世界初上映)となりました。

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↑帰りのバスの窓からは、黄色いハンカチで見送ってくれる幸せな光景が。泣けます。


ショートショート

ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2018
期間:6月
場所:東京
種別:短編のみ

俳優の別所哲也さん率いる、超有名な短編専門映画祭です。25分以内の様々な短編映画が、世界中から集まります。『東京彗星』はそのなかでも東京の魅力発信に特化した「Cinematic Tokyo」という部門で選出いただきました。「東京にいつか災害が来るから気をつけよう」という映画なので、まさかこの部門とは思わず(応募しといてあれですが)、驚きました。

ジャンル的には、すべて。しかし血がぶしゃー!とかはなかったように思います。ゆうばりでは仕事を休んでがっつり向こうに行き他の作品も観まくりましたが、ショートショートは都内なので逆に平日は仕事で、他の作品をあんまし観られなかったのが悔やまれます。

ヒカリエでおこなわれたド派手なオープニングセレモニー、上映も原宿のラフォーレミュージアムと二子玉ライズ、アワードセレモニーは明治神宮会館と、ゴージャスな映画祭でした。メジャー好きにはたまらんです。

都内での一般初公開だったので友人や学生時代の先輩などたくさんの知人が来場してくれました。

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そして、『東京彗星』はCinematic Tokyo部門のグランプリをいただきました。壇上に呼ばれ、小池百合子都知事からトロフィーと賞状をいただいたのはけっこう一生の思い出です。

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しかし、監督はトロフィーをずっと愛でててはいけません。しっかり感謝したら、次のステップへ行くべきです。というわけで、トロフィーは本作に出演してくれた榎本 "CHAMP"光永さんのバー、銀座HOLD ON(中央区銀座5-5-11)におかせてもらっています。なので結局、店に行ったらトロフィーを眺めてますが。あれ?

授賞式では別所哲也さんとLiLiCoさんにインタビューしていただき、GQのYouTubeチャンネルで中継されました。LiLiCoさん、号泣したわー!って言ってくれました。ありがとうございます!

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ショートショートもまた、本当に素敵な映画祭でした。ありがとうございました。


SKIPシティ

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018
時期:7月
場所:埼玉・西川口
種別:長編・短編

埼玉県川口市にある、 "映像制作を目的とした施設"SKIPシティで毎年おこなわれている、デジタル制作された作品に限った映画祭です。こちらも良質な邦画監督を輩出しているイメージだったので、邦画に背を向けてハリウッド意識でつくった『東京彗星』を呼んでもらえるとは思っておらず(じゃあなんで応募したんだ)、意外かつ大変光栄でした。

短編部門で選出されたのは、9本。なかなか狭き門です。このなかから優秀作品賞、審査員特別賞、観客賞が選ばれますが、残念ながら無冠でした。しかしさすがは映像制作を目的とした施設SKIPシティ。上映会場の設備は抜群でした。きちんとしたシアターで、いい音響でバッチリ上映してもらいました。舞台挨拶やその後のフォトセッションなども丁寧で、すっごい大切に扱われてる感が高く、気持ちよかったです。

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7月の川口は溶鉱炉並に暑かったですが、良き思い出です。
素敵な映画祭でした。ありがとうございました。


ベガス

Hollywood Dreamz International Film Festival
Action On Film Festival
時期:8月
場所:アメリカ・ラスベガス

"ハリウッド・ドリームズ"なんてこれはオレのために出来た映画祭だろ!と思って応募してもらいました。サンダンスやカンヌは落とされましたが、ハリウッド・ドリームはやはり僕を見捨てなかった。初の海外上映がラスベガスなんて最高!ベガスのハリウッド・ドリームズなんてなんかB’zっぽい響きがあるし、自分にとってはハマりがよい。ありがたく、ベガスに行ってきました。

14年続くAction On Film映画祭(アクション映画ではなく、映画をつくるという行動(アクション)を称える的な意味だそうです)の姉妹映画祭として昨年生まれたのがHollywood Dreamz国際映画祭です。

『東京彗星』はHollywood Dreamzの方でアートディレクション賞 / 編集賞 / 音楽賞 / ヤング男優賞(大西利空さん)に、Action On Filmの方ではヤング男優賞(大西利空さん)と、助演男優賞(榎本"CHAMP"光永さん)にノミネートされました。「銀座のバーのマスターが、初演技でラスベガスの映画祭で助演男優賞にノミネート」この言葉にはパンチがあります。

上映はラスベガスのパームスホテル内にあるシネコンのスクリーンにて。初のシネコン上映がラスベガス…たまらん。お客さんはさすがに満員とはいきませんでしたが、観終わって「よかったよ!トルネードのことを思った」なんて話しかけてきてくれる人もいました。英語でのインタビュー撮影はタジタジでしたが、サポートにかけつけてくれたチェリン・グラック監督(『サイドウェイズ』『杉原千畝』など)のおかげでなんとか乗り切れました。

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派手なパーティでの授賞式、『東京彗星』はアートディレクション賞を受賞しました。

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こだわってつくってもらったロゴやオープニングなどのアートディレクションが海外で評価されたのは非常にありがたいです。

映画祭期間を通じて、ロサンゼルスで活動されている映画人の方々と知り合えたことも、大きな財産となりました。


そして、10月には札幌国際短編映画祭に参加してきます。

地震で大変かと思いますが、いつ来るかわかならない災害に備えよう、という意味を真摯にこめた映画です。札幌で上映する意味はあると思います。

北海道のみなさん、よろしくお願いいたします。

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短編映画『東京彗星』はVimeoとU-NEXTにて全編配信中です。




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また映画つくりたいですなぁ。夢の途中です。