P04_画面内の方向性 │『東京彗星』オンラインパンフレット

よくアメリカ映画とかで

「で、どこまで行けばいいんだ」
「デンバーだ」
「カンザスまで来て、また西へ戻るのか?」
「なぁに、たった400マイルだ」

みたいな会話がありますけど、
アメリカの地理感がない人にはいまいちピンと来ませんよね。

それは日本を舞台にした映画を
海外の映画祭に出すときも、一緒だろうな
と思っていました。

でもそれは、
画面内の構図のつくりかたである程度事前に解決できる。
はず。

というわけで『東京彗星』オンラインパンフレット
4ページ目は前回の記事でもちょっとふれた、
"画面内の方向性について"です。

『東京彗星』で僕は
以下の2つの基準にもとづいて
画面内での方向性を決めました。

1.岩手と東京
2.カミテとシモテ

映像やってる人からしたら当たり前すぎることですが、
お付き合いくださいー。


1.岩手と東京

『東京彗星』はざっくり言うと、
「1年後、東京に彗星が落ちる」と発表され、
弟のショウ(10)は岩手へ学童疎開し、
兄のソラ(20)はひとり東京へ残り
衝突1週間前にショウが兄を助けに
岩手から東京へ行くというお話です。

距離感は説明すりゃいいとして、方向性的に
"東京から見て岩手は北東にある"というのは画面上でも守り、
無意識に感じてもらえるようにしようと思いました。

東京=兄=左
岩手=弟=右

というルールを決めました。

まず冒頭、オープニングタイトルで
日本のかたちと東京の位置を提示。

そのうえで、直後の疎開ニュースシーンでは
東京に対する岩手の位置も提示。

ちなみにこのニュース画面では、
セリフに英語字幕がのることがわかっていました。
画面内の情報まで日本語だと
海外の人には理解がおっつかないと考え、
日本のニュースですがマップの表記は英語にしています。
また、さりげなく岩手だけ大きく表示して、
なるべく目がいくようにしています。

ちなみにこの考え方は、その後のこのカット

でも使っています。
セリフに対する英語字幕がのる前提で考えると、
このヒッチハイク親子の段ボールの"岩手"は
アルファベットにしたほうが英語字幕と同時に読める
と考えました。
(この親子は母国語が日本語じゃないせいで、
行政の避難活動にうまく申し込むことができず、
対応漏れになった、という裏設定もあります)

方向性の話に戻ります。

序盤で日本のかたちと
東京、岩手の位置を無意識に理解してもらったうえで、

東京=兄=左
岩手=弟=右

というルールを各シーンに適用していきます。


弟がバスで東京から岩手へ疎開していくシーン

東京→岩手なので、右に向かっているショットです。


岩手へ向かう弟からのLINEを兄が東京で見るシーン

東京→岩手へ向かう弟から来たLINEなので、
顔を左(東京)側、
スマホを右(岩手)側、においています。


このへんではダメおしで移動のモンタージュに
英語の日本地図をいれて、
あらためて東京と岩手の位置関係を明示しています。


弟が、岩手から東京へ兄を助けに行くため、走るシーン

東京←岩手なので、左へ走っていきます


その前、兄を思う弟が津波防波堤で佇むシーン

東京←岩手という後の方向転換の前振りなので、
まだ東京→岩手の方向性で右向きとなっています。
直前、兄を思って迷っているシーンがこの向きだから、
直後の考えが決まり、東京へ向かうという方向転換が劇的に見える

という算段です。


東京へ行くためにヒッチハイクするシーン

東京←岩手へ向かう車をひろうため、車の向きは左です

また、のちのちこういう方向性になることがわかっていたので、
まだふたりとも東京にいる冒頭、電話しているふたりのシーン

その後家で兄と弟が話すシーンも、

兄=左、弟=右、というルールは適用してあります。

このように、認知上の方向性に画面内の方向性を合わせることで、、
観ている方も混乱せずに物語を楽しんでもらうようにつとめました。

また、こうやって本編をつくっておくと、このように

予告編でもわかりやすい編集をつくることができます。
これでふたりの方向性が同じだったら、遠く離れている感じは出ません。

ざっくりまとめるとこんな感じ。


で、東京へ向かってからのシーン以降でも
同じような方向性で画面づくりをしているのですが、
ネタバレしすぎるので有料エリアにおきます!


2.カミテとシモテ


上手(カミテ)、下手(シモテ)という呼び方があります。
映像業界や演劇界の人にとっては当たり前に使ってる言葉ですが、
一般的には馴染みはないかもしれません。

もともとは舞台の言葉で、

観客からみて右側が上手(カミテ)
観客からみて左側が下手(シモテ)


と呼んでいます。

舞台では基本的に役者は
上手から来て下手にはける、
ということになってるみたいです。

なんでかというと、
大多数の人の利き手に近い方向である
カミテ=観客の右側から来るもののほうが、
人間の心理的に受け入れやすい
という説。

それを裏付けるように、
大多数に人は心臓が体の左側にあるので、
シモテ=観客の左側から来るものは
人間の心理的に抵抗してしまう
、という説。

あとは個人的な仮説ですが、
舞台芸術ができた頃の日本は文章が縦書き、
つまり右から左へ流すものしかなかった
ので、
進行するという感覚としては右から左へいくのが自然だった
というのもあるような気がします。

まぁこれは横書きの浸透と、
右へスクロールしていくマリオの登場によって、
いまやごっちゃになってると思いますが。



ともかく、画面に対して

カミテ(右)から来る=受け入れやすい、安全、安心
シモテ(左)から来る=抵抗がある、危険、不安

こういうルールでつくったのは以下。

彗星衝突予想図のシーン / 衝突シーン

前回の記事でも書きましたが、
これは恐ろしいものなので、不安になる左からやってきます。

ちなみに西の方から飛翔してくるミサイルにも見えるように、
地理的方向性の意図もあります。


疎開施設に新しい子がやってくるシーン

弟はまだ相手を警戒しているので、相手は画面の左側にいます。


ヒッチハイクで不良の車をつかまえてしまうシーン

不安な存在なので、左から来たい。
なので、いちど通り過ぎてから

バックで画面左から入ってくるという動きにしました。


不良にカラまれてると、謎のオッサンが助けてくれるシーン

助けてくれる存在なので、安心できる右から入ってきます。


その後、オッサンとトラックで話すシーン

信じていい相手なので、右側にいる。
そのためにバックショットのみ。

※このつづきはネタバレが激しいので、有料ゾーンに隠します!※
ネタバレ上等な方、すでに観賞していただいた方、
ひきつづきご覧くださいー!

本編で確かめたい方は、9月23日(日)シネマート新宿にお越しください!!


はい、ここからはネタバレ全開でいきます。

1.岩手と東京
2.カミテ
とシモテ

まぜこぜでいきます。

東京で、岩手に帰ろうとするオッサンを説得するシーン

味方じゃなくなるかもしれなくて不安なので、左側にいます。


東京で見つけた兄に逃げようと説得するシーン

変わってしまった兄のことがわからなくて不安なので、兄は左に。
これは
東京=左へとどまろうとする兄と、
岩手=右へ逃げようと言う弟
の構図でもあります。


銭湯でオッサンが兄を沈めるシーン

説得のためとはいえ、
兄にとっては知らないオッサンに暴力をふるわれるので、
その不安を表現するためにオッサンは画面の左から来て、
左にいるまま兄を沈めます。


トラックの荷台で兄弟が話すシーン

ここでも兄=左、弟=右は守っています。


トンネルに逃げ込むシーン

東京→岩手ではないですが、
東京から逃げようとしているので、右方向へ向かっています。
設定的には千葉の木更津あたりです。


弟が兄を引っ張って逃がそうとするシーン

ここも兄=左、弟=右を守っています。
東京から離れようとする方向性なので、右へ逃がそうとします。


神社で兄とオッサンが話すシーン

兄にとってオッサンはもう脅威ではなく、
命の恩人になったので、兄の左ではなく右側にいます。


ふたりで東京へヒッチハイクするシーン

自暴自棄になっていた兄は
もとの安心できる兄に戻ったので、画面上初めて弟の右に来ます。
2人の体の方向は、ここから未来へ進むのでマリオ式で右向きです。


ラスト、心配して弟へ電話をかけるシーン

ここは冒頭、兄←弟へ心配して電話をするシーンの裏返しであり、
電話をかける(心配する)側と、
電話をもらう(心配される)側の逆転
がキモなので、
電話をかける人物だけを逆転させ、
構図的には冒頭と同じ兄=左、弟=右を守りました。
(弟は右を見てますが、画面内の体の方向性は左を向いています)


とまぁ、こんな感じです。

短編で壮大な話を駆け足でやっているので、
観ている方がすんなり話がわかるように
画面内の方向性はキッチリ決めてありました

という記事でした。

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映画『東京彗星』オンラインパンフレット

短編映画『東京彗星』の、公式サイトでも紙のパンフレットでもない、オンラインパンフレット。 通常の映画のパンフレットには入りきらない、またはハマらないような生々しい話、詳しい話などを書いています。
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