P02_映画の"オンラインパンフレット"をつくる / 初期プロット │『東京彗星』オンラインパンフレット

①映画の公式サイトって、みんな見ているんだろうか?
②映画のパンフレットって、みんな買っているんだろうか?
③映画のパンフレットの電子版って、なんで(あんまり)ないんだ?

とかいろいろな疑問があったので、
自分の映画『東京彗星』ではちょっと試してみようと思って
"オンラインパンフレット"をつくっていくことにしました。

noteのマガジンとして映画の公開まで連載してみようと思います。

さて、それぞれの疑問について。

はわかる。
パンフはコレクターズアイテムだし、
役者の写真集的な意味もある。
だからそもそも紙の方が圧倒的に商品価値がある。
あとは紙のパンフが売れ残っても困るからだ。たぶん。

もわかる。
役者のファンや映画ファンは買う。
けど値段も値段だしみんな買ってるわけじゃない。

問題はだ。

自分は映画好きなのに、
あんまし公式サイトから情報を得ることがない。
その映画が気にいったときだけ、パンフを買う。
あとはWikipedia。

公式サイトよりWikipediaの方が
よっぽど情報がまとまってて参照しやすい。
監督や役者の過去作にも飛べる。
こういうハイパーリンクがWEBのいいところなのに、
あんましそれを活かした映画の公式サイトをみたことがない。

僕がずっと感じていた疑問はそこだった。

ひとつの映画の参考書として

紙パンフ…詳しいことは書いてあるけどけど機能は弱い
公式サイト…ざっくり情報とリアルタイムニュースはわかるけど内容は薄め

せっかくいろんなところにリンクできるWEBなのに
情報的には"閉じてる"公式サイトが多い
なとは思っていた。

いちばん問題だと思うのはスタッフ紹介ページの薄さ。特に邦画。
スタッフ紹介ページがない映画もある。全員事細かに紹介しろとは言わないけど、スタッフロールに自分の娘息子の名前探して喜ぶ親もいるんだから、名前一覧くらいは載せてほしいところである。

作品の出来がよくない場合は、スタッフ的に名前のせてほしくないときもあるかもしれないけど。
集客のカギはほぼキャストってのもわかるけど。
もうちょっとつくった人たちを誇ってほしいなぁと思う。

というわけで、自分の映画『東京彗星』に関しては
思うところを改善してみようと思った次第。
で、まずは公式サイトを自分でつくってみた。

映画『東京彗星』公式サイト

自主映画なのと、
魂込めて映画つくった人の定番である借金まみれなので
予算組んでちゃんと誰かにお願いすることはできなかったから、
Ameba Owndを使ってひとりでつくってみた。

ビジュアルが整ってないから納得はしてないけど、
情報の整理の仕方としてはちゃんとやったつもりです。
以下ポイントを。

・凝ったモーションのためにいきなし読み込み待ちさせるな
・いきなし全画面で予告編強制視聴やめれ
・そもそも予告編何種類あるねん
・スタッフページを雑にするな
・リンク張れるものはリンク張れ
・なんでもかんでもトップページで全部やるな

ほとんど否定形だけど、その逆張りをしました。


・モーションなし!シンプルにして読み込み待ちさせない
・予告編は埋め込みで観たい人だけ再生
・そもそも予告編は2種1セットのみ
・スタッフページは公式サイトある人はリンク張った。仕事につながれ!
・キャスト、音楽、主題歌、協力してくれた人たち、張れるのは全部張った
・トップページは映画そのものの情報にしぼり、各セクションの詳しいことはそれぞれの項目で。

では、あらためてご覧ください。

映画『東京彗星』公式サイト

当然のことをやってるだけかもしれないけど。
公式サイトとしても情報量はそこそこ充実させたつもりだし、
紙のパンフもつくるつもりなんですが…そこで思ったんす。

WEBサイトは無制限なぶん、情報詰めすぎるととっちらかる
紙パンフは内容濃くつくれるけどページやら物理的制限があるし、リンクできない

両方の長所をもち、短所をおぎなう方法はないだろかと。

あった。noteのマガジンなら、できる。

というわけでこうしてnoteを使って
"オンラインパンフレット"をつくってみることにした次第。

"オンラインパンフレット"なら

紙パンフより濃いテキスト情報を、
紙パンフのような制限なしに公開できる。

公式サイトより充実したリンクを張りつつ、
公式サイトのようにリアルタイムに情報を更新
できる。

こういうわけです。

これから秋の劇場公開まで、毎週なんか更新していこうと思っています。

そして劇場公開で観てくれた人がこれを見つけて読んでくれたとき、
紙パンフともWEBサイトとも違ったコンテンツとして楽しんでもらえるように。

ネタバレ回避の制作過程公開をコツコツやっていきます。

ってことで、まずは今や読むのも恥ずかしい初期プロットを掲載しておきます。薄っぺらくて恥ずかしいのと、大いにネタバレなので有料ゾーンに隠します。


映画『東京彗星』
オンラインパンフレット_P02
【初期プロット】

プロットとは。
ストーリーの要約である。プロットはストーリー上の重要な出来事をまとめたものであり、重要な出来事とは、後の展開に大きな影響を与える出来事である。すなわち、プロットは出来事の原因と結果を抜き出したものである。ここでいう原因と結果とは、例えば「犬が歩く。棒にあたる。動物病院に運ばれる。治療を受ける。回復する」といったことである(Wikipediaより)

要はあらすじですね。これは制作が決まってからテキスト化した最初のプロットです。だいたい完成作と流れは同じですが、登場人物の数やディティールは違います。そして完成度が恐ろしく低いです。ここから叩いて叩いて、精度を上げて「完成プロット」ができて、そこから脚本執筆に取り掛かりました。これ読んで才能ないと思われるのは怖いし、これを公開するのは恥ずかしいけど、映画は既に完成しているし、これもオンラインパンフレットの醍醐味なので、さらしておきます。

東京彗星_プロット ver.1.0


時は2021年1月、東京。ショウ(9)が学校から帰る途中、腕のスマートウォッチから警報音が鳴る。「国民の保護に関するお知らせ」急いで友達と別れ、帰宅するショウ。入れ違いに見知らぬ男がショウの家から出て行く。帰宅して、伏せられた父の遺影(迷彩服)を戻し、テレビをつけると「1年後の2022年1月7日に東京に彗星が落下し、壊滅する可能性が40%」というニュースが。タバコを吸いながら動じない母(39)。「今日は外出ちゃだめよ。これで居場所わかるんだからね」スマホを見せる母はパチンコへ出かけて行く。スマートウォッチからLINEで兄に連絡を取るショウ。「お兄ちゃん、ニュース見た?」ネカフェでスマホを見ている兄・ソラ(20)「見てない」「見て」。ネカフェのPCで彗星のニュースを見るソラ。「やばいね」「お兄ちゃん、どうする?帰って来ないの?」「とりあえず帰らないけど、どうするかはわかんない。ショウは?」「僕も…わかんないよ」呆然とニュースを見るショウ。東京彗星衝突まで、あと365日。

オープニング。彗星衝突予想発表で混乱する日本の11ヶ月を、様々なニュース映像、SNS画像で描写。あと1ヶ月、衝突確率が80%に修正され、児童疎開計画が発表される。

2021年12月。ショウは疎開先の岩手県へ車で向かっていた。運転するのは、冒頭とはまた違う男。窓から見える無数のヒッチハイカーを見てショウが聞く。「お母さん、あれなに?」「ヒッチハイクよ」「ヒッチハイク…」
東日本大震災後につくられた被災者用の仮設住宅を再利用した児童疎開受け入れ施設に預けられるショウ。母は男と帰って行く。
施設での生活には馴染めず、終いには他の疎開児童に「お前んちの母ちゃん生活保護受けてパチンコ行ってるな」と意地悪を言われ、疎外されていくショウ。
ある夜、ショウはスマートウォッチを見る。母にはずっと既読無視されている。兄のソラにLINEするショウ。「施設で年賀状書いてるんだけど、住所教えて」「江東区豊洲○○…」「そんなとこ住んでたっけ?」「マンション買ったんだ」「え、お兄ちゃんは疎開しないの?」「おれは残るよ。東京がなくなる前に遊びに来る?」「行く」「冗談だよ。お前は生き残れ」「お兄ちゃん、死ぬの?」「だって生きててもしょうがないもん」「だめだよ」「もう俺にかまうな」
2021年大晦日、NHK大阪ホールで開催された紅白が終わり、施設のみんなは初詣へ。仮病で留守番することにしたショウは、食料をリュックにつめて施設を抜け出す。
新年の夜中の国道で、先日覚えたヒッチハイクをするショウ。つかまったのは1台のデコトラ。ドライバーのイカツイおっさん、ジョーが降りて来る。「なんだてめぇは」「東京まで、乗せてください」座り込んで少し話すショウと、ジョー。父は自殺、母は連絡がとれず、兄は東京で死ぬ気で…ひとりぼっちはいやだ、兄と母を助けに行きたいというショウに「おめーを捨てたクソ家族なんかほっとけよ」と言うが、「家族が死んで平気なわけないだろ!」と感情を見せるショウ。その言葉に「乗れ」とジョーはトラックに乗せてくれる。東京彗星衝突まで、あと7日。

※※※ここから先はだいぶ完成作品のネタバレになります※※※









兄から聞いた住所をカーナビに入れて、ジョーのトラックで東京に向かうショウ。なぜあと数日で彗星が落ちる東京へ今更向かうのかショウが聞くと、ジョーは答える。「おれは岩手の生まれでな。東日本のとき、東京からたくさん救援物資が届いてよ。だいぶ助けてもらった。今度は東京がヤバいと聞きゃあ、恩返ししないわけにはいかねぇだろ」「じゃあ、物資を届けに…なにが入ってるんですか?」「なにって、まぁ…いろいろだよ」
そこへショウのスマートウォッチに母から電話が。位置トラッキングでショウが移動していることがバレたようだ。「なにやってるのよ!あなたは生きてよ!せっかく今まで育ててきたのに!」突然スマートウォッチを取り上げるジョー。「こいつに生きろって言うならなぁ、そばにいてやれよくそ野郎!」と怒鳴ると、スマートウォッチを窓から投げ捨ててしまう。「あ…」トラックを止めてスマートウォッチを探すふたり。しかしスマートウォッチは車にひかれて壊れてしまっていた。
連絡手段を失った2人はサービスエリアへ。公衆電話の前でショウに自宅の電話番号を聞くジョーだが、当然ショウはそんなの覚えていない。「ふざけんな!しょんべん!」トイレへ行くジョー。そのやりとりを見ていた若者がショウに声をかける。「大丈夫?きみ誘拐されてるの?怖い人についてっちゃだめだよ。おれらが助けてあげるよ」ショウは否定するも若者たちはショウを連れて行こうとする。「ちがいます!離してください!ジョーさーん!」トイレから出て来たジョーが若者をぶっとばす。去ろうとする若者にショウは「ちょっと待って!」スマホを借りて、facebookで兄ソラのアカウントを探す。「LINEのIDとかわかんないの?」「わかんないから、facebookでメッセージだけ送らせてください」ソラはfacebookを全然やっていないようだったが、いちおう若者のアカウントから、「お兄ちゃんの家に向かってます。ショウ」とメッセージを送る。ジョーは「ツレに手出した罰だ、飯おごれ」と強引に若者たちとサービスエリアで食事をする。
かくかくしかじか話し、和解する皆。ジョーが若者たちになんで東京へ行くのか聞くと、こんな大イベント見逃すわけにはいかないと言う。衝突予想日に昼から渋谷でレイブがあって、そのあと運良く筑波山あたりまで逃げられたら、ギリギリ被害を受けずに東京がぶっ壊れるのを見られると。「おめぇ彗星が外れておっ死んだらどうすんだよ」「いいんですよ、どうせ生きてても未来ないですし。僕らもともとネットの自殺サイトで知り合ったんです。一緒に死のうとしてたら、彗星のニュースがあって、それなら見てから死のうって、仲良くなっちゃって」「むちゃくちゃだな最近の若いモンは…」。若者たちは「ショウくん、君は生きるんだよー!」と言い残し、別れて行く。
再び出発するジョーとショウ。「いまのはいいヤツだったからいいけど、東京はたぶん自暴自棄になった危ないやつらがいっぱいいる。もし襲われそうになったら、こうしろ。手出せ」と、合気道の要領で指をひねるコツを教えてくれるジョー。ショウがやってみると、意外とうまくいき、ジョーのハンドルが乱れる。「いい筋してんぞお前」と、今度はハンドサインを教えてくれるジョー。握りこぶしから親指と小指だけのばして、拳を合わせる。「よくやったぜ、って意味だ。覚えとけ」初日の出が車内に差し込む中、ハンドサインをしたまま眠りに落ちるショウ。混乱する東京の様子を伝えるラジオニュースのボリュームを下げるジョー。東京彗星衝突まで、あと6日。
ショウが起こされると、豊洲のタワマンの前であった。兄が言っていた住所だ。正直にインターホンを押す2人。もう防災センターも人がいない。インターホンに返事はない。しかも連絡手段もない。兄が外に出るか帰って来るかのタイミングで声をかけるために2人は張り込みをすることにした。
その日も、次の日も、兄は出入りしない。ピンポンしても出ない。持って来た食料もなくなった。コンビニには何もおいていないし、店員もいない。ラジオから流れるニュースも、いよいよ終末感が出て来た。そんな東京彗星衝突まで、あと2日の朝。ジョーはショウを連れて、炊き出しへ向かう。
公園でキリスト教団体がやっている炊き出しには、明日彗星が衝突するにもかかわらず脱出を諦めたホームレスや、ホームレスじゃないような人たちが並んでいた。そこでショウは炊き出しに並ぶ、足を引きずった兄を発見する。「お兄ちゃん!」「なにやってんだよショウ」「てめぇが兄貴か。マンション住んでんじゃなかったのかよ。嘘かコラ」「住んでますよ。でももうね、食料がないんですよ、どこにも」「お兄ちゃん、お母さんを助けに行かないと」「…それより2人とも、臭うよ…」東京彗星衝突まで、あと36時間。
炊き出しの飯を食って、ジョーがよく行くという銭湯に行くショウ、ソラ、ジョー。番台のおばちゃんは「3時で閉めるよ。5時に自衛隊のトラックで東京を出る。あんたたちが最後のお客さんだ。戦争も、震災も耐えてなんとかやってきたんだけどね、こんなかたちで終わるとはね…」と。
一緒に風呂につかる3人。ソラがジョーに聞く。「なんでショウを連れてきてくれたんですか?」自分の身の上を話し出すジョー。「娘がいたんだ。男手ひとりで育てた娘が。嫁に行って、孫ができて、もうすぐ生まれるってときだったのに…津波に流されちまった。生まれてりゃ、こいつぐらいだよ。ほっとけるわけねぇだろ」「そうだったんですね…」
風呂からあがって、ジョーが声をかける。「じゃあ、母ちゃん探して、東京から逃げるぞ」するとソラは「僕は行きません」「はぁ?」「あのマンションで、最後を迎えます」「なに言ってんだお前」「中学出ていろんな仕事点々として、全然金なくて、借金もして、足壊して力仕事もできなくなって、どん底だったんです。そんなとき彗星が落ちてすべてなくなるってニュースでやって…正直思いましたよ、ざまあみろってね。マンションが暴落して、金持ちどもが東京から逃げてって、生命保険に入ってそれを担保に借りられる変なローンがあるのを知って、それであのマンション買ったんです。500万ですよ?金持ちたちが必死こいて買ったマンションを、おれみたいなワープアが10分の1で買って、東京が終わるのを特等席で見れるとか、最高じゃないですか。この先生きてても這い上がれないんだったら、東京と一緒に死んですべてチャラですよ。ショウには悪いけど、おれは行かない。母さんもどうでもいい。おれ母さんが19の子供でね、よく言われてたんすよ、あんたのせいで成人式行けなかったって。そんなオレいらないでしょう。でもな、ショウ、お前は生きろよ。父さんの形見みたいなもんなんだから」とそこでジョーの鉄拳が飛ぶ。「じゃあいま死ね!いま死ねー!」とタコ殴り。銭湯の湯船に顔をつっこませる。ジタバタするソラ。止めるショウ。止めないジョー。「息を吸いたいか!吸いたいだろ!生きたいだろ!生きてるヤツはなぁ!生きなきゃいけねぇんだよ!風呂入って飯食って歯磨いてクソしてねろ!それだけでなぁ、先に死ぬよりはマシだろうが!」と言いつつまだ湯船に顔を押し込んでいるジョーの手を、ジョーから教わった指ひねりで止めるショウ。冷静に戻るジョー。「ショウ、お前…やるじゃねぇか」げほげほ言いながら復活するソラ。「死なないと…ローンが…」「んなもん生き残ってから考えろバカ」
こうして3人は母を助けに向かう。東京彗星衝突まで、あと33時間。
東京からはひと気がなくなっている。ショウと母が住んでいた家にも、誰もいなかった。ソラが電話をかけるも、母の電話は家の中にあった。ショウは父の遺影を、ソラは家族写真を持って家を出る。
デコトラに乗って母を探しまわる3人。だがどこにもいない。ラジオからはどんどん終末的なニュースが流れて来る。「どこか心当たりはねぇのかよ!昔住んでたとことか、親父と出会った場所とかよ。お前ら母ちゃんのこと何も知らねぇんだな。あんだろうよ普通、好きなもんとか」「あ…」ソラが思いつく。
3人が向かったのは、パチンコ屋。「ここにいたら本物のバカだぞお前らの母ちゃんは」と言うジョーだったが、誰もいなくなった店内に、母はいた。店員もいないのに、電気だけついたパチンコ屋で、放心状態でパチンコを打っていた。「店の人がさぁ、もう好きにしてって言うから、見てよこれ。大当たり」あきれたジョーは母をぶん殴ろうとするが、ソラとショウが止める。母をひっぱたいたのは、ソラ。「何すんのよ!」「逃げるんだよ!」「生き残ったってねぇ、あんたたちを育てるのはもう無理なのよ」「育てなくてもいいから、とりあえず生きててくれよ!」母をひっつかんでかつぎあげるジョー。こうして4人は再びデコトラに乗る。東京彗星衝突まで、あと6時間。
トラックでアクアラインを目指す4人。しかし、大渋滞。引き返す。筑波山あたりならと言っていた若者たちの言葉を思い出し、茨城方面へ向かう。アクアラインよりは空いている。そこへソラのfbに電話が。あのサービスエリアの若者だ。「あ!お兄さん!ショウくんと合流できましたか?」やっぱり怖くなって引き返したが、車が強奪されたらしい。途中で若者たちをピックアップすると、ジョーは運転席に残り、ショウ、ソラ、母、若者たちを荷台へ誘導する。「ここならなんかあっても前よりは安全だろ」。カラの荷台を見て、ショウ「救援物資は…?」ジョー「そんなこと言ってる場合かよ」扉を閉めるジョー。
荷台の中は真っ暗。スマホの明かりで会話する皆。若者が言う。「なんか僕ら…移民みたいですね」「脱北ならぬ脱東ですね」「笑えないね…」東京彗星衝突まで、あと3時間。
「出ろ!走るぞ!」荷台のドアが開く。「渋滞?」「ガス欠だ…」ラジオと懐中電灯を持って走るみんな。彗星衝突の時間がせまる。空に彗星は見えない。
見えるのは、そびえ立つ牛久大仏だけだ。
スマホのワンセグで見るニュースでは、3.11のときのような避難放送が流れている。ラジオでも、「逃げてください!」と連呼している。自衛隊すら去った渋谷では残った者でレイブがおこなわれ、皇居では自主警備隊が暴徒と戦っていて…各地の様子を伝えるニュースが響くなか、その時がやってくる。
巨大な流れ星のような光が過ぎ去ったあと、戦闘機のような爆音が響く。
東京の方へ抜けて行った光は、消えて行った。ニュースを見る。乱れながら画面が伝えるのは、新宿の夜空に巨大な光が横切る映像だ。アナウンサーが叫ぶ。「光が、光が見えました!東京彗星が到達します!到達します!まだ東京に残っているみなさん!逃げてくださ…」
沈黙が流れる。「どうなった?」ここからではわからない。ワンセグも電波が途絶えてしまった。生きているのはラジオだけ。
「…模様です。繰り返します。東京彗星はさきほど1月7日23時頃、東京湾に落下した模様です。ただいま東京湾全域に津波警報が発令されました。津波警報です。東京彗星の落下にともなう津波が発生する恐れがあります。東京に残っているみなさん、すぐに逃げてください」
「何メートルだよ?」「ここは大丈夫なのか?」混乱する皆。牛久にもサイレンが鳴り響く。山を昇って行くみんな。サイレンは響いている。警報と、逃げろコールのラジオも鳴っている…。
山のてっぺんの木の根元で、寝てしまっていたみんな。朝日を感じて起きる。
山を降りて、ラジオを聞く。東京がまるごと残ったこと。津波は来なかったこと。東京へ戻る車で上り線がさっそく大渋滞を起こしていることなどが伝えられている。
ショウ「助かった…」ソラ「生き残っちゃった…」母「ソラ、あんたマンション買ったんだって?そこ住ませてよ」ショウ「そうだよ、またみんなで住もうよ」ソラ「でもローンが…」母「なんとかなるでしょ」ジョー「とりあえず、東京戻るか」
牛久の道でヒッチハイクするみんな。通りがかった軽トラに乗せてもらう。ジョーは乗らないという。自分は相棒のトラックを迎えに行くと。ショウ「ジョーさん、ありがとう。ジョーさんスマホもってないから、連絡できなくなっちゃう」ジョー「なに、生きてりゃまた会えるさ。風呂入って、飯食って、歯磨いてクソして寝ろよ」。軽トラが出発する。荷台から手を振るショウ。ジョーはいつか教えたハンドサインで答える。「よくやったぜ、ショウ」

半年後。ソラが買ったマンションで3人暮らしているソラ、ショウ、母。
母は夜の仕事に行くために化粧している。ソラがエプロンして家事をしている。ショウが学校から帰って来る。父の遺影にも「ただいま」
夕方のニュースが流れる。見出しは「東京のホームレス 盗んだデコトラで…」。
東京のホームレスがキセルで岩手まで行き、デコトラを盗んで東京まで行き、返しに戻ったという。あのデコトラが映っていた。そして犯人の顔は、ジョーであった。住所不定無職、豊田春吉容疑者…。絶句する3人。母「これ、ジョーさん…?」ソラ「ジョーさん、って名前でもなかったってことか…」ショウ「ジョーさんだよ。ジョーさんは、ジョーさんだよ」

ソラNa「ジョーさんのことも、彗星のことも、おれたちは信じたものにいつも振り回される。だけど、ほんとうのことってのは、区別はつきづらくても、少し混ざってる。わかってるのは、今日、ひとりぼっちじゃないってことと、いま、とりあえず生きてるってこと、そして明日にはどうなるか、わからな…」
「次のニュースです。2022年6月22日、かにの日ということで豊洲市場ではかにの…」警報音が鳴る。「緊急地震速報です。強い揺れに警戒してください。緊急地震速報です」画面に映る地震速報。「東京都で地震 強い揺れに警戒」東京が真っ赤に染まっている。目を見合わせる3人。そして強い揺れが襲って来る。(終)

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映画『東京彗星』オンラインパンフレット

短編映画『東京彗星』の、公式サイトでも紙のパンフレットでもない、オンラインパンフレット。 通常の映画のパンフレットには入りきらない、またはハマらないような生々しい話、詳しい話などを書いています。
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