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高校生に「脳内映画型講演会」で挑んだゾ

母校である法政大学第二高校でちょっとした講演的なものをさせてもらってきました。

で、自分の経歴や現在の仕事をパワポやkeynoteを使ってただ理路整然と語るのもなんかしっくり来なかったので…「脳内映画型講演会」に挑んでみました。

この記事は、その原稿を公開してみたうえで、結果的に僕の偏った自己紹介になれば、という趣旨であります。結果、ほぼ"こっ恥ずかしい自己紹介"となりました。

脳内映画型講演会、とは。

自分の過去の経験や決断を語るタイプの講演会ってふつう、話す人が自分を主語に「私は〜」と一人称で話しますよね。出来事を話すときも、もちろん一人称だから「私はそのときこう思ったから、こういう決断をした」と説明できます。

僕はまがりなりにも短編映画や映像をつくったりしてるので、映画や映画の脚本のように、制限をかけてやることにしました。その制限とは、

①三人称で
②そのときの気持ちや思いを説明する言葉は使わず
③カメラで映せるものの描写だけ

で、語ってみようと思ったのです。
まぁこれ、ただの【脚本の鉄則】なんですけど。

とにかくこのルールに従って、脳内に映画というか映像を思い浮かべてもらい、脳内で観た映像だけで、気持ちや思いが伝わるかどうか、という挑戦です。

うまく説明するだけならなんとなくできそうな気がしてたので、どっちかというとこっちも初挑戦で、うまくいくかわかんない手法で挑んだ方が真剣勝負っぽくていいかな、と。すべったらすべったで、「すべってたなー」と思ってもらったうえで、「でもなんか汗かいて真剣にはやってたようだ」と思ってもらえれば。言葉より行動で人の印象は決まる、ってのも映画的だし。SAVE THE CAT!

相当こっ恥ずかしい自分語りみたいなもんなので、ご注意を。

いざ、講演会本番。

場所は高校の大ホール。劇場みたいな新築です。ここにたくさん集まってくれた生徒さんの前で、お話しさせてもらいました。

まずは司会の生徒さんが僕の簡単な経歴を紹介してくれます。

「卒業生の洞内広樹さんは、

1998年、法政大学第二中学校に入学、
2004年、法政大学第二高校を卒業、
2008年、法政大学国際文化学部を卒業後は、
広告制作会社でCMやミュージックビデオなどの監督をされています。

演劇の脚本を手がけた後に制作した短編映画『東京彗星』が、数々の映画祭でノミネートや受賞を果たしました。

それでは洞内さん、今日はよろしくおねがいします」

ありがたい紹介文。

僕は待機していたステージ脇から出ていき、マイクをとって「洞内でーす。1985年生まれの33歳でーす」と軽く自己紹介したあと、

「僕がこの学校でどう過ごしたかを、映画風にお話しようと思います」

と言って、全員に目を閉じてもらいました。

これから僕が話す話は、頭の中に映像を思い浮かべながら聞いてください、と前置きして、「脳内映画型講演会」のはじまりです。

目を閉じてもらったまま、マイクで以下の原稿を読み上げました。
読み上げたら20分くらいでしたけど、文字だと5000字くらいです。それではどうぞ。笑わないでくださいね。

○青空
真っ青な青空にテロップ〈1990年・神奈川県相模原市〉
カメラがドローンのように下がっていくと、幼稚園の全景。おはなしを読むひとりの園児の声が聞こえてくる。カメラは、〈たけ組〉と窓に書かれた教室に入っていく。園児たちはみんな座っているが、ひとりの男児がその前に立って、紙芝居を持ち、みんなに話を聞かせている。紙芝居は、売っているようなものではない。画用紙に、つたない絵でウルトラマンが描かれている。
「こうして、ウルトラマングレートはM78星雲に帰っていきました」
拍手が起こる。先生にも褒められ、得意げに紙芝居を仕舞う男児。他の子たちより頭が大きい。男児はほかの園児たちの輪にもどっていき、座る。「すげーじゃん!」と友達に肩をたたかれる。広樹は顔を赤くしながら、得意げで満足げな表情で、窓の外の青空を見ている。

真っ青な空が画面いっぱいに映し出される。そこからカメラが下がっていくと、学生たちの呼び込みの声や、運動部の掛け声が聞こえてくる。そこは、法政大学第二中学・高校。敷地内には生徒だけでなく、女子高生や一般人もたくさん歩いていて、賑やかだ。玄関の看板には、〈1997年度二高祭・二中文化祭〉と書いてある。ひときわ頭の大きい小学生が、母親に連れられて歩いている。小学生が母にねだる。「あのさー、受験までもう映画観ないって決めたけどさ、12月にやる『タイタニック』だけ観に行っちゃだめ?」「いいよ。広樹はジェームズ・キャメロン好きだもんね」「よっしゃー」
もっさりした男子高校生が、親子に声をかける。「映画好きなんですか!ぼくたち映画研究部で、映画つくったんで是非みてください!」広樹「え、映画って、つくれるんですか?」「つくれるよ!観てくださいよー、「ナトナエル」っていう映画なんですけど」「観る!」広樹はもっさりした男子高校生についていく。

○真っ暗な生物実験室
スクリーンで映画が上映されている。もっさりした男子高校生が主演の、もっさりした映像。それを観ている広樹。

○生物実験室外の廊下
洞内親子が生物実験室から出てくる。母「どうだった?」広樹「おれこの学校にする」母「いきなりどしたの」広樹「あれなら、おれのほうがおもしろい映画つくれる。この学校に入って、おれも映画つくる!」

カメラは洞内親子を離れ、廊下の窓を抜け、ぐんぐん移動していく。校内を進んでいくにつれ、文化祭を賑わす一般客や女子高生たちの姿や声が、うっすらと消えていく。カメラは中学の教室へたどりつき、ドア上の札をアップにしたところで止まる。札には「2年2組」の文字。教室の中から、まだあどけない中学生の声が聞こえる。「じゃあテロリスト役やりたい人〜?」

○中学2年2組の教室・内
教壇に立って仕切っている中学生がいる。ひときわ頭が大きい。黒板には〈2組文化祭企画 映画 ファイナルドラフト(洞内広樹監督作品) 配役会議〉と書いてある。「お前、テロリスト役ね」。チャイムが鳴る。中学生になった広樹は「来週から放課後撮影するからよろしくねー!」と呼びかける。教室の脇で、先生がノートを見ている。ノートにはびっしりと、カメラアングルやセリフが書かれている。絵コンテである。先生が広樹に声をかける。「洞内くん、これ400カットもあるけど、撮りきれるの?」「撮りきりますよ!1日40カット撮れば10日で終わります」「まぁまかせるけど、無理しないようにね」「はーい」笑顔の広樹のアップ。広樹の声が映像にのる。「よーい、スタート!」

○学校内で撮影する広樹たちのモンタージュ
廊下。広樹がビデオカメラを持って友達にあれこれ指示を出している。中学生たちがサングラスに黒服姿で、エアガンで銃撃戦を演じている。
廊下、教室、図書館。教員室での撮影では、広樹は先生たちにも指示を出している。「はい、カットー。先生演技カタいよ、もう1回」と指示を出す広樹の笑顔。

○法政二中高の校舎外観
一般客や女子高生で溢れている。玄関の看板には、〈1999年度二高祭・二高文化祭〉と書いてある。

○特別棟の教室
模造紙の垂れ幕で〈2年2組 映画ファイナルドラフト〉と書いてあるが…お客は誰もいない。親っぽい人が、受付の長机で暇そうに菓子パンを食べている生徒に声をかける。「この映画もう観られないんですか?」生徒は答える。「すんません、まだ編集中っす」親っぽい人はがっかりして去っていく。生徒はばつが悪そうに親っぽい人を見送ると、向かいの部屋に歩いていき、ドアをノックする。ドアには〈編集室〉と書いてある。「ほらないー!」

○編集室の中
ドアノブががたがた回されているが、開かない。内側から鍵が閉まっている。向こうから声が聞こえる。「出てこいってー、もういいからさー」。その部屋にはビデオデッキやテレビモニターがたくさんあって、配線でつながれている。編集卓につっぷして号泣しいている生徒の後ろ姿。校内放送が聞こえてくる。「1999年度二高祭・二中祭は、間もなく午後4時で、終了です。ご来場いただき、まことにありがとうございました…」

放送の声が小さくなっていく、画面は黒くフェードアウト。

○中学2年2組の教室・昼
広樹が教壇に立ってみんなに頭を下げている。みんなは「どんまいどんまい」と、優しい態度。責めるやつはいない。チャイムが鳴り、みんなが教室から出ていく。生気がない広樹が、先生に謝る。「1週間も学校休んで、すいませんでした。僕はもう映画監督を引退します。二度とつくりません」先生は少し笑って、広樹の肩に手をやり、鍵を渡す。鍵には〈編集室〉と書いてある。驚き、顔をあげる広樹に先生は優しく言う。
「洞内くん、完全版つくろうよ」

○編集室のモンタージュ
広樹が他の生徒と一緒に、配線を変えたり、編集卓を操作したり、VHSテープを入れ替えたりしている映像が重なっていく。編集卓にはいろんな映画のサウンドトラックCDと、B'zのベストアルバムがおいてある。熱心に編集卓をいじっている広樹。画面はフェードアウト。

○中学2年2組の教室・内
生徒のかわりに保護者たちが椅子に座って、天井のスミ、ある1点を観ている。天井にぶらさがる、テレビである。スタッフロールと共にB’zの『さまよえる蒼い弾丸』が流れ終わると、保護者たちは、いちおう拍手する。教壇の前に広樹と先生が立っている。先生「というわけでまぁ文化祭には間に合わなかったんですが、ついにこのクラスの映画が完成しました。ご鑑賞ありがとうございました」広樹も深く頭を下げる。広樹の母、まわりの保護者に頭を下げまくっている。

カメラは飛んでいくように教室を出ていく。敷地を抜け、小杉門前へ。枯れた木々はいつのまにか桜の花が満開になっている。いつのまにか学生たちも溢れている。アメフト、サッカー、剣道など体連はそれぞれのユニフォームを着て、歌舞伎町の客引きばりにビラを配っている。制服姿の文連の生徒たちは、部の旗を持ってひかえめに勧誘している。
正門の看板には〈2001年度 法政二高入学式〉と書いてある。
その人混みの中をかき分けるように、高校生になった広樹が走って抜けて、校舎に入っていく。

○高校教員室前
広樹がノックして、入る。「1年3組洞内広樹です。映画部の顧問の先生いますか」別の先生に「あそこ」と指示された席へ向かっていくと、定年間近のおじいちゃん先生がいる。広樹が声をかける。「今日入学した1年の洞内です。先生。映画研究部は勧誘やらないんですか?」おじいちゃん先生は答える。「映研はしばらく部員がいなくてね、今年いっぱいで私の定年とともに廃部にするんだよ」広樹は驚いて「は?僕入部しますよ!」「でも誰もいないよ」「僕が部長になりますって!」「わかったわかった、じゃあ部室へ案内するよ」おじいちゃん先生は鍵を持って立ち上がる。

○部室棟
おじいちゃん先生と広樹は薄暗い階段を登って、廊下に出る。部活名の表札がついた簡易なドアがたくさん並んでいる。科学部、鉄道研究部、文芸部…中からは学生たちの声がするが、ひと部屋だけ声が聞こえてこない部屋がある。ドアの表札には…〈映画研究部〉。「ここだよ」と言っておじいちゃん先生が鍵をまわし、ドアを開け、広樹が中に入る。「うおー…」6畳間くらいの、縦長な部屋。8ミリフィルムの上映機と、フィルム缶がほこりをかぶっている。書類もたくさん。机が1つ、椅子が何個か。おじいちゃん先生がいろいろ説明してくれるが、耳に入ってこない様子の広樹はせまい部室内を歩き回っていろいろ見ている。奥の長机には、ブラウン管テレビとビデオデッキ。横にはVHSテープも積まれている。広樹は1本のテープを見つけ、取る。ラベルには〈ナトナエル〉と書いてある。広樹は「おれなら、もっとおもしろい映画つくれる…」とつぶやき、おじいちゃん先生を振り返り、言う。「先生、3年で全国へ行きますから」おじいちゃん先生はにこにこと「おお、頼もしいな。じゃ、鍵返しといてくれよ」と言って、部屋を出る。廊下に出たおじいちゃん先生は「映画ってインターハイあるのかな…」とつぶやきながら去っていく。

部室内の洞内は雄叫びをあげる。「よっしゃああああ!」他の部室から「うるせー!」と怒られる。と、そこへノックする音が。
広樹がドアを開けると、中学の同級生が立っている。広樹は驚いて「お前映画好きだったの?なんで二中時代に言ってくんないんだよ」と肩を組むが同級生は冷静に「おれは単純に映画が好きなだけ」広樹は気にせず、「まぁでも超頼もしいわ。ひとりかと思ってたから。俺今日から部長だから、お前はマネージャーやって」「はいよ」「じゃあ新入生を勧誘しにいこう!」同級生はあくまでも冷静だ。「おれらも新入生だけどね」

○日差しの強い青空
セミが泣いている。運動部の声が響く。カメラは部室棟の廊下に入っていく。〈映画研究部〉の小さい表札があったところには、派手な手描きでデカデカと〈HOSEI MOVIE CLUB〉の看板がかかっている。中から広樹の声がする。
「誰かさー、いないの?女優目指してるやつとか」

○映画部の部室・内
模様替えされて、綺麗になっている。壁が映画のポスターで埋め尽くされている。机を囲んで、広樹と同級生のほかに、5人の学生が増えている。みんな半袖シャツ姿で、コピーされた絵コンテの束を読んで、打ち合わせしている。ひとりが答える。「でもおれらみんな二中だから女っつっても小学校の友達しか…」広樹は答える。「いいよ小学校の友達で。女子でギャルっぽい子4人ね。よろしく。夏休みで撮りきって、二高祭で流すから」「はいはーい。わかったからはやくガクショ行こうぜ」席を立ち、部室を出ていくメンバーたち。

○暗い視聴覚室
スクリーンに反射した光が、冬服を着た女子高生たちと一般客の顔をチカチカ照らす。スクリーンに映し出されている映画は、広樹やほかの映画部メンバー、先生、そして女子高生も出演している。

○視聴覚室・外
「映画やってまーす!おもしろいっすよー!」広樹や映画部のメンバーが呼び込みをしている。向かいの音楽室では音楽部のバンド演奏の音が鳴り響く。映画部員たちはそこから出てきた女子高生を視聴覚室に流そうと必死だ。
しかしぽつぽつと、視聴覚室から女子高生が出ていく。気まずそうに広樹たちに会釈して去っていく。彼女たちどうしで話している声。「長すぎじゃない?」「ね。別に私たち映画観に来てるわけじゃないし」広樹はそれを聞いてハッとする。

○物理実験室
人で埋まっている。30人くらい。みんな冬服。前に立って話す広樹。付き添うのはおじいちゃん先生ではなく、パーカーにデニム、スニーカー姿の兄ちゃん先生だ。広樹が話す。「去年の映画はは50分と、ちょっと長すぎたんで、今回は原点回帰して男子だけでバリバリのアクションで、30分以内。呼び込んだ女子高生が最後まで絶対に席を立たない映画をつくります。1年生はショッカー的な悪の手下役でよろしく」

○学校内で撮影している広樹たちのモンタージュ
廊下や化学実験室で銃撃戦の撮影をしている広樹たち。畑中がこぐ自転車のケツに後ろ乗りして、自転車チェイスを前から撮影したり。市役所のエレベーターで撮影したり、夜の屋上で撮影したり。

○広樹の家・リビング・夜
スミのテーブルに設置されたデスクトップパソコンにminiDVカメラをつなぎ、広樹がAdobe Premiere 6.0で編集している。窓から日光がさしはじめる。広樹は机につっぷして寝ている。

○暗い視聴覚室
スクリーンに反射した光が、冬服を着た女子高生たちと一般客の顔をチカチカ照らす。スクリーンに映し出されている映画は、スタッフロールが終わったところだ。拍手が起こる。席は埋まったまま。

○視聴覚室・外
一斉に客が出てくる。客同士で「おもしろかったねー」「最後まで観ちゃったね」と言いながら去っていく。広樹はそれを聞いてガッツポーズ、メンバーたちとハイタッチすると、呼び込みに戻る。「映画観てくださーい!おもしろいですよー!」

○広樹の家・リビング・夜
広樹がパソコンに向かってAdobe Permiere6.0で編集作業している。母が声をかける。「なにつくってるの?」「卒業式のオープニング映像。なんか盛り上げるやつつくってって頼まれた」「そう、あんまし夜更かししちゃだめよ」「はいー」「あとさ、志望学部、なんで変えたの?ずっとメディア社会学科だったのに」「うーん、おれ映画しかつくってこなかったじゃん。大学でも映画つくろうと思ってメディ社にしてたけど、映画づくりしか知らないやつの映画っておもしろくならなそうじゃん。視野広げたいというか。全国も行けたし、1回映画から離れてみようと思って。それに、映画ってつくっても伝わらなかったり、頭の中の映画と実際の映画が違ったり、なんか翻訳に近い気がしてて。だから、留学できて、全然違う価値観の人たちとどうコミュニケーションとるかっていうのを学ぶ国際文化学部がいいと思った。おれ成績いいから第一志望に書いたら絶対行けるし。うしし」と言うと、振り返って広樹はまた編集に没頭する。

○体育館の前

木々は枯れている。看板には〈2003年度法政二高卒業式〉と書いてある。生徒や保護者たちが中に入っていく。

○体育館・内

生徒、先生、保護者たちで埋まっている。合計1000人近くいて、かなりざわついている。その中で、パイプ椅子に座り、落ち着かない様子の広樹。小刻みに体が浮いている。「洞内なにぴくぴくしてんの?」「ドキドキしすぎて、ケツに鼓動が伝わりすぎて、結果体がバウンドしてる」「なんでそんな緊張してるん?」「だって、こんなたくさんの前で映像流すの初めてだし…」「お前の映像流れんの?やばいじゃん超楽しみ」
やがて、体育館の電気が消える。野獣のような歓声が上がるなか、ゆっくりとスクリーンが降りてくる。

〜ここでいちど目をあけてもらって、実際の映像と、当日の様子を撮影したものを上映しました〜

盛大な拍手。広樹の母も父も、保護者席で号泣している。先生たちも何人か泣いている。広樹ももちろん、席で号泣している。まわりの友達が「すげーじゃん!」と広樹の肩を叩く。広樹は泣きながら言う「おれ、絶対に一生映像でやってくわ…!」

○15年前の体育館→現在の体育館(ホール)
画面が溶け合っていき、古かった体育館がだんだん、建て替えられた現在の建物に変わっていく。体育館はきちんとした座席付きのホールになっていて、たくさんの生徒が座っている。しかし、15年前の野獣のような男子たちだけではない。落ち着いた男子たちに混じって、制服を来た女子もいる。後ろの方の席で見守る先生たちは、あの頃より少し老けているが、印象は変わらない。
そこにテロップ〈2019年1月26日〉
司会の生徒に呼ばれ、ステージ脇から男が出ていく。ひときわ頭が大きい。彼はマイクを持って軽く自己紹介したあと、こう言う。
「僕がこの学校でどう過ごしたかを、映画風にお話しようと思います。」

はい、こんな感じです。
なんか「天使なんかじゃない」のラストシーンみたいになってしまった。

【注釈】
※全部実話ですが、ディティールは盛ってます
※実際は先生の名前とか固有名詞連発してました
※○であらわしたシーン名は実際には「場面変わって、」と読み上げました
※高1のときの「全国いく」はなんの想定も根拠もなかったハッタリです。自宅リビングのPC前での「全国いったし」ってのは、この当時高校生の映画甲子園がなかったので結果的に大人の自主映画人たちにひとり混ざることとなった、第6回インディーズ・ムービー・フェスティバル入選をさします。このとき出会った先輩たちはいまどうしているんだろうか…。

んで、こっからは目を開けてもらって、普通の講演です。このお話を、

①三人称で
②そのときの気持ちや思いを説明する言葉は使わず
③カメラで映せるものの描写だけ

でやったことを種明かしし、それが映画なんですよ、とかっこつけてまとめたうえで、以下のポイントをつらつらと(しかしけっこう必死で)話しました。

・途中、大学の学部選びの理由についての説明長台詞は、なんかうざったかったでしょ、だから全部説明する長台詞ってよくないよねー

・最初に1985年生まれです、と言ってから話し始めてテロップで〈1990年〉と出れば、必然的に「5歳頃かな、幼稚園か」とわかりますよね、観客に提供する情報の順番や適切なタイミングに気をつけてますー

・大学、社会人期を省略したのは「何を見せるか」だけでなく「何を見せないか」も映画づくりだから、今回は「見せない」ことにしたんですよねー

で、最後。

カメラで映されたものの積み重ねで描く以上、「映画は他人事である」。でも観た人が「自分ごとに感じる」ことがうまくいくと、想像上のいろんな人の人生や冒険を思い出として脳内にインストールすることができて、それは現実の人生に実体験のようにフィードバックできるんだよねー。

というお話でシメました。

楽しかったのは僕だけなんじゃないか、という不安が拭えないまま、これにて記事を終わります。

法政二中高のみなさん、ありがとうございましたー。

【付録】
講演会で紹介した、映画好きなら"読むといいかもよ本"リスト

〈総合〉
純丘曜彰「エンターテイメント映画の文法」
是枝裕和「映画を撮りながら考えたこと」
富野由悠季「映像の原則」

〈監督〉
ジョン・バダム「監督のリーダーシップ術」

〈脚本〉
シド・フィールド「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」
ブレイク・スナイダー「SAVE THE CATの法則」シリーズ
ロバート・マッキー「ストーリー」
カール・イグレシアス「感情から書く脚本術」
リサ・クロン「脳が読みたくなるストーリーの書き方」
橋本忍「複眼の映像」
三谷幸喜「三谷幸喜創作を語る」
貴志祐介「エンタテインメントの作り方」

〈撮影〉
ジェニファー・ヴァン・シル「映画表現の教科書」
グスタボ・メルカード「Filmmaker’s eye」

〈編集〉
ウォルター・マーチ「映画の瞬き」
ジェフリー・マイケル・ベイズ「BETWEEN THE SCENES」

〈高校生的にこれ読むと熱いんじゃないか本〉
明石ガクト「動画2.0」
前田裕二「メモの魔力」

恥ずかしながらトリュフォーとヒッチコックの映画術は未読なんです。
読まなきゃ。




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また映画つくりたいですなぁ。夢の途中です。