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過去記事:Evernoteのクリエイティブディレクターから聞いたUI&ブランディングの話

注:2012-07-20に書かれた記事です。

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結構前ですが、ONLABでEvernoteのクリエイティブディレクターGabeがUIとブランディングの話をしてれました。そのときの話をざっくりまとめました。

Gabeは現在、スマートフォンやウェブを中心にしたメモをクラウド化するサービス"Evernote"でクリエイティブディレクターをしている。彼は元々は紙媒体出身で、いろんな分野のクリエイティブの仕事を経験してきた。

appleの仕事の話

アップルストア内のデザインとパッケージは、ただコンピューターを売るお店ではなく、その後もお客さんのサポートをしたり、使い方を教えたりする場所。“appleのユーザにどういったサービスを提供するか”という実践の場所。
Macbookのパッケージデザインに50もの案を、細かく検証してきた。

パッケージングにおいても、普通であればは外の見えている部分を使って、ターゲットとコミュニケーションしようとします。ですからそこにいろんな情報を詰め込むわけです。

appleは、この外側をビルボード(屋外広告に使われるでかい広告スペース)として使おうと考えました。なのでプロダクトのビジュアルとロゴがシンプルに主張するパッケージになっています。

そして「開けた後、どうなるか。」という部分で、何かもう少しお客さんを喜ばせる体験を提供できるんじゃないかと思った。

他にも、紙媒体での経験が今も役に立っている。その中で一貫しているのは、ブランディングに関わってきたということ。

Evernoteでは、全て0から携わることができた。UIではそのようなブランディングが、どう活きてくるのか。

見える部分だけを気にしていれば良いのではない。

・わかりやすいか
・安定しているか、動作が不安定ではないか
・楽しめるか、満足できる使用感を提供できているか
・プラットフォームに準じて作っているか

こういったことも良いUIの条件。

プラットフォームは、町のようなもの。だから、使うプラットフォーム(町)のルールにしたがって、良いプラットフォームの市民になりなさい。
むりやり自分たちのUIを押し付けないこと。すべて同じに見えないきゃいけないわけではない。(EvernoteはiPhoneではリッチな表現、Androidではフラットな表現を用いてUIをデザインしていた)

LESS IS MORE

ソフトウェアを作るというのは、小説を書くようなもの。
書こうと思えばいくらでも書けるが、一番難しいのは書き上げた1000ページをいかに300ページに落とし込むかというところである。その「300ページ」にいかに良いものを選べるかというのが難しい。

陥りやすい罠:「オプションとして入れてあげよう」

これをすることによってユーザーは何も便利になってない。
自分達が判断して選べなかったが為に、ユーザにとってより複雑になっているのだ。

陥りやすい罠2:「メニューにいれよう」

メニューは確かに入れやすい場所ではある。しかし、入れるべき場所がちゃんとわからないものはそもそも、あるべきではないのかもしれない。

陥りやすい罠3:「この機能が他のサービスと差別化できる部分だ」

これは単純に自分たちのサービスを「太らせている」だけである。ユーザみんなを喜ばせることはできない。だからサービスの中で明確な優先順位をもつべき。機能を追加する余裕をもたせるぐらいがちょうどいいのだ。

自分たちのサービスのコアとなる部分に追加すべき重要なものこそ追加するベき。

需要は発明の母

UIをミニマムなものにすることで、ユーザにコンテンツに集中してもらえる。
機能を追加することは重要ではない。コンテンツをヒーローにしてあげなさい。

TIP:モバイルデバイスでは特にユーザがどこからどこにいくのか、遷移がわかりやすくすると良い。

ナビゲーションもそのため使われる。どこからきて、今どこにいるのか
私のものはどこにいったのか、どこにあるのか。Evernoteではトランジションのアニメーションをいれて、感覚的にコンテンツの遷移を表現している。

という感じの内容を話していただきました。

スタートアップ界隈のデザイナーが知っておくべきはタイポグラフィ

懇親会でGabeと話す機会があり「紙媒体の仕事から関わってきたクリエイターとして、今のスタートアップ業界にいる紙媒体のデザインを経験していないデザイナー達に必要だと思う点はどんなことでしょう?」という質問をしました。

というのも、自分がデザインを始めたときは、ギリギリ紙媒体の広告が主流でしたし、ウェブデザインも制約が多く、ようやくウェブにお金をかけるということが理解されて来たタイミングでした。なので、紙媒体のデザインから学びました。その経験が自分の中で未だに「何がきれいで、何がよくないのか。」という感覚の基礎になってるんですが、それを通らずウェブの制約の中でやりくりすることしかわからない場合、それはデザイナーと呼べるのかなと思ってたいからです。

僕なんかがいうのは厚かましいんですがGabeさんはそれこそ、その紙媒体中心の場所からスタートアップ業界のど真ん中の会社に入ったクリエイティブディレクターでしたので、どのようなことを思っているのか興味があったのです。

で、Gabeさんは一番足りないと思う部分は”タイポグラフィー”だといっていました。今でこそWEBは使えるフォント、サイズ、文字間、行間などの制限が多い為、文字のデザインができない人が多いと。そこのベースがあるとないとの違いは大きいということでした。

確かに、色も、位置も、今はかなり急激によくなってきましたが、制限が多かったので。デザインとしてきれいなものをとことん突き詰めてセンスを磨く紙媒体での経験がないと、そのセンスをウェブだけで養うのは難しいのかもしれませんね。

幸い、日本のデザインはタイポグラフィーもすごい拘ったものが多いですし、大御所の方々のデザインにいつでも触れることができますから、そこに積極的に触れて、自分でもつくって印刷してみて、感覚を覚えていくのがいいのかもしれないですね。自分も紙媒体での感覚に常に触れつつ、新しい分野に挑戦していきたいです。

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