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プロダクトチーム全体のUXに対する意識をオフサイトで底上げする方法

こんにちはシードステージのスタートアップとして、クリエイターのためのポートフォリオプラットホーム「foriio」を開発・運営している株式会社1ne studioの山田寛仁です。

結論から書きます。

プロダクトチーム全体のUXに対する意識を底上げする方法。
それは「オフサイトの宿泊費をケチらない。」です。

以下、ちょっと長くなりますが説明していきます。
自分たちのプロダクトチームは、ちょっと特殊な構成になっており、
・日系ブラジル人のバックエンド
・マレーシア、アメリカ、バイリンガルの日本人のフロントエンド
と私の5人。

それぞれが非常に異なるバックグラウンドを持っているため、
UIやUXに対する知識も理解度もスタンスもバラバラ。
足並みを揃えるための方法として、各々セミナーに参加したり課題読書を渡したりと色々な取り組みがあると思いますが、そういった取り組みはどうしても時間がかかります。2、3ヶ月かかってようやく揃い始めた感覚が出てくる‥。ましてやグローバルなチームであれば尚更。
でも、それでは僕たちシード期のスタートアップとしては遅すぎます。

私たちのサービスを使っていただけるユーザーはいわゆる、
プロとして商業的に活動する「クリエイター」。

そうすると
・ディテールが綺麗なUIの設計
・作品を尊重し取り扱う場の設計
の双方のレベルをデベロッパーも含め一緒に高めていかなければいけません。本来ここでアートディレクター・デザイナーである自分が、隅から隅までチェックを重ねながらQAをしていくべきなのですが。去年の頭からいきなりぶち当たった壁がありました。

初めての資金調達を回しながら、開発も見ていくということが想像以上にハードでしたし、今もハードです。現実的に全てをオンボーディングし教える時間がない。今までと同じような取り組み方はできない。そのことを前提にUXに対するリテラシーをより易しく高めてもらうために、起業時にまず以下のことをしました。

リーンスタートアップを全員に読んでもらう
・環境優先でオフィスを選ぶ

リーンスタートアップについては言わずもがなですが、この二つを最初にしたことで、デザインに対して泥臭くチャレンジすることに対する覚悟を持ってもらえました。また、毎日働く環境が本来僕らのラウンドのスタートアップであれば小さくて狭い古いマンションの一室なところを、リノベーション済みの打ち合わせスペース付きでトイレも綺麗な場所にしたことで、働いているみんなも「どんな所で仕事をするか。」という所からデザインも気にしてるんだなと感じ取ってもらえるようにしました。毎日働く環境が綺麗で過ごしやすい場所だったら、心の趣きも違うだろうと。

今、即整えられるROIが一番高く即効性がある仕組みは「環境」にあると考え、まずそこにこだわったのです。

そして1年経った後、クリエイターは広告なしで順調に増え、次の資金調達も無事にまとまったタイミングで、ここまで頑張ってくれた開発陣へのThanksgivingの気持ちと次への作戦会議の機会として2回目のオフサイトを企画した。(1回目の様子はこちらから

この時、MVPをリリースしサービスを伸ばしてきた上で”ここから”目指すべき、提供すべき体験の目標値を上げたい。視座を変えたいと思った。

人は慣れてしまえば、今の自分の環境に甘んじてしまってこれでいいと思ってしまう。今が悪い体験でないのであれば尚更だ。だけどそれでは僕らは事業として成長できない。ではその気の引き締め直しをどうやったらできるのか。考えた結果が2回目のオフサイトでした。

特に、今回のプロダクトチームのフォーカスは完全に「UX」だった。それと「お疲れ会」的な意味も合わさったのも合間って、箱根の数百年の歴史がある旅館「松坂屋本店」を予約しました。少し値段は張ったけど中途半端にお金を使って合宿するより、行った事を本当に喜べる価値のある場所を選びたかったから。

その結果、大正解だったと断言できます。プロダクトチーム以外も含む全員がその旅館のおもてなしに感動しました。

下記がユーザーフロー的に整理した、旅館の部屋で一息つくまでの流れです。

1. 僕たちの到着時間を把握し迎い入れてくれた

バスを降りて、薄い霧の中旅館の方に歩いていく。すると、外で傘を持った旅館の仲居さんが待っている。私たちの名前を知っていて「お待ちしていました。」と傘を差し出し、入り口まで案内。

2. 到着したら、まず休ませてくれる

限界では旅館のマネージャーの方がお出迎えで、下駄に履き替えて中に通される。ここでカウンターにいきチェックインを済ませるのではなく、まずロビーの椅子と綺麗な長いローテーブルがある間に通され「お座りください。」と。

3. シームレスな気遣いと旅館のコンセプトの刷り込み

仲居さんが荷物を預かってくれ、「まず一息」とお茶とモナカの和菓子を差し出してくれた。ここで「本旅館は、江戸の世から親しまれており歌川広重の浮世絵にも描かれるほどの歴史のある旅館でして、明治の西洋と和の文化が入り混じっているのが特徴になります。」と。そして、「今お食べになられたお茶とモナカも当旅館の特徴を表したものです。」と旅路の疲れを癒しながらこの旅館のコンセプトを教えてくれた。その後座っているところで、チェックインを済ませ、部屋に向かう。

4. どう寛げるか丁寧に教えてくれる

部屋に着くと、仲居さんは部屋の隅々まで丁寧に説明をしてくれる。部屋のそれぞれの場所の説明、浴衣の着方(夜は寒いから半纏を羽織るようアドバイス)、各アメニティの説明、ご飯、お風呂の時間。

正直、こんなに丁寧に説明されたのは初めてだった。大抵付いてきてくれたとしても入り口まで。入り口で軽く説明されて後はごゆっくり…が大抵のパターンである。おそらく僕らのチームも見た上で旅館なれしていない人だと判断しあえて丁寧に説明してくれたのだろう。

旅館というのは、最初のオンボーディング、つまり最初の1泊が命だ。その体験が良かったかどうかで、レビューがどうなるか変わるし、他の人に進めてもらえるかどうかが決まる。なので、初めてのお客様の一泊に命をかけているのだとおもった。その1泊の内に提供したい体験に合わせて旅館の規模設計しているようにすら思う。不明な点や、不満な点を生まないように丁寧に接し説明する事を心がけている。

まず、チームは全員ここに驚いていた。みんなここまで丁寧に旅行で扱われたことは滅多になかったようだ。

この時点で、ここを選んで良かったとおもった。自分がおもてなしに感動したというのもあるけど、このみんなが共通で体験した良いおもてなしの思い出は一つの僕らの中の「スタンダード」にできると確信したからだ。自分がいちいちなぜ、こういうUIにした方が良いのか、なぜここまでやった方が良いのかを説明せずとも「あの時〜までやってもらった時、嬉しかったよね?」と言えるのだ。それで終わる。こんなに強い学習体験はない。

その後、メンバー全員でボードゲームをして仲を深めつつ、少し休憩をしたのち夜ご飯の時間に。これも全て丁寧に説明してくれて、料理も全てとして美味しくて、みんな只々出てくる品に感動多しながら食べていた。

食事が終わった時僕はある事を試した。
自分の箸の置き位置を、自分に合わせて左利き用に置き直した。

最初のおもてなしの丁寧さを見ていた僕は、「これはもしかすると。」と思ったのだ。

その夜のアイデア出しとミーティングが終わり、お風呂も入り、その後24時間いつでも飲めるドリンクバーが用意されている所で、去年から一緒の開発組2人と(本当はもう1人いるのだが、彼はアメリカに帰っていて参加できなかった。来年はぜひ一緒にいきたい)、そして今回新しくジョインしたフロントエンドのあやさんと一緒に今までの話や、これからのforiioの展開の可能性についてゆるりと話し合った。控えめに行って最高だった。スタートアップが日々奮闘している中の束の間の休息だったし、ゆっくりと向き合って「ご苦労様。」「You guys deserve this」と伝えられた瞬間だった。

ぐっすり眠れた次の日の朝、僕らはまた朝ごはんを食べに食堂へ。


僕が昨日座った席に着くと、あることに気づく。


そう。変わっていたのだ。
僕の席の箸だけ、左利き用に向きが変えられていた。

その事をチームに話すと、驚き感心していた。

すかさず、このような考え方が僕らのプロダクトでも活かされるべきだと話した。

この体験。

相手は何をしたら喜んでくれるか。
どういう事を言われたら嬉しいのか。

通常だと
・他の事例
・フレームワーク
・データ

からアイデアを紡ぎ出すし、プロダクトマネージャーやUI・UXを任されている人が担当することが多い。だけどシード期では手が回らないタイミングが必ずでてくる。そういう時に役立つのはそれぞれが共通の実体験として何か特別なサービスを受けた方が効果的だ。共通のベンチマークをもてた上で動けると、UX担当が不在でも、どう行った事を心がけるべきなのか、どこまで痒い所に手が届く状態にすべきなのか。ルール化していない所にも応用が効く。

これが、オフサイトはケチらずにみんなで最高の体験を経験すべき理由だ。

それと、初期の数人のチームではUXはUIや実務的デザインとあまり深く結びつけない方が良い。

初期のフェーズにおいてUser Experienceとは、
・ユーザーヒアリング&インタビューでの応対の仕方だったり
・お問い合わせ・バグ報告が来た際の気遣いだったり
・チーム間のコミュニケーションだったり
・外部との打ち合わせの時の話し方だっったり
・イベントに参加するときの他の参加者との接し方だったり

も含まれている。
というか「Do things that  don't scale」のフェーズの場合、ほとんどこれらの場合の方がチームが取り組めるう顧客体験に繋がる。(もちろん、最終的にはプロダクト次第なのだが。)

プロダクトを0-1で作っているフェーズにおいては、投資家がチームや創業者を見るのと同様、人がプロダクトなのだ。だからこそ、こうゆう体験を通して、どう人をもてなすのが良いのかという感覚を実体験を元に鍛えることがUXの底上げに大きく貢献するものだと思う。

ぜひ初期の少人数のスタートアップで、UXを重んじたいチームには美味しい定期的な飲み会よりも、オフサイトの素敵な旅館に対して投資してほしい。世界変わるから。

読んでくれて、ありがとうございます!

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