情シスとプロセス管理

情シスは、その他本社機能(人事、総務、契約、マーコム等)の業務プロセスに対してどう関わっていくべきでしょうか。

皆さんの会社は、情シスとその他本社機能とどのような関係性をもってらっしゃいますか。

例えば、下記のようなパターンを見聞きします。

1)各部署に情シス担当やITに詳しい人はほとんど居らず、システムの話はほとんどすべて情シスが担っている
2)各部署にマクロが組めたりするシステム担当者が居て、普段はその担当者と情シスでシステムの話を行う
3)各部署と情シスのあいだでも異動があり、お互いに経験がある範囲では、共通言語があったうえで対話ができる

私の体感では、1)のパターンが大半なのではないでしょうか。あらゆる部署のシステム導入運用変更管理を行って、ID管理もして、ひねもすあっぷあっぷしているというかたちです。
私は元地方公務員(職員1000人規模の地方自治体)なのですが、そこでは3)のパターンが存在し、一部うまくいっていたという経験もあります。しかし、ジェネラリスト育成と銘打つことにより多様な異動が存在することでの+効果もあるものの、勿論専門性が身につけにくいというマイナス要素も強く、生涯雇用を前提とした長期的な育成の仕方をする余裕があるのでもない限り、難しいのが現状でしょう。

1)のパターンであると、実際に業務を行っている各部署にユーザーヒアリングをしてみても、何を優先してIT化をしていくのか、何が重要なのか、を考えるのに、mustとnice to have(「やらねばならぬ」と「あったら嬉しい」)の区別がついておらず、システムを導入する以前の会話からすごく時間がかかってしまったり、実際システムを導入してみたものの、前後で工数がどれくらい変わったのかがわかりにくく、社内での評価も難しいというのが弊社でもあった状況で、多くの企業が抱えている課題なのだと思います。
業務を変えることが嫌だという担当者の姿勢も、リソース不足のなかで自らの業務範囲を崩したくないという態度は合理性が無いとは言えません。

リソースは絶対的に不足しているからこそ、業務の優先順位をどうつけていくか、どこまで情シスが介入して工数をかけていくのが悩ましいというのが共有の悩みです。
こういった状態に対する特効薬、万能薬があればいいですが、そんなものはやはり存在しません。そのなかで、弊社で取り組み、効果が出てきているのは、昔ながらの「プロセス管理」です。

この当たり前のことを当たり前にやるところで、本社機能を効率化する糸口が掴めてきました。見えないものが見えるようになってきたという感覚があります。

具体的には、弊社では「RACIをベースとした工数管理」と、これをベースとした「改善状況の可視化」に取り組んでいます。

これにより、「工数が多くかかっているところ」や「テレワークを阻害している要因」を上長も含めてわかりやすく見えるようにすることで、システム化の優先順位を合意し、これを実行した結果としての工数を改めて確認していくというプロセスです。

順序としては、以下のように進めていきます。

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(1)RACI図の担当者による作成(excelやGoogleスプレッドシートベース)
(2)RACI図をヒアリングベースで完成させる
(3)RACI図のある程度の業務のまとまりをもって日々の工数管理をする
  (Excelでも勤怠管理システムの工数管理機能、Togglなどのクラウドツールなんでもいいと思います)
(4)各業務のまとまりにおける工数をBIツール等で可視化する
(5)可視化データをベースに定例ミーティングを行い、改善ポイントと優先順位をつけていく
(6)システム化、システムの改修、RPA等を通じて業務プロセスを変える
(7)RACIを更新する(→(3)に戻る)

RACIは、各業務内容における役割毎の責任分界点を可視化する思考フレームワークの一つです。責任範囲を、Responsible、Accountable、Consulted、Informedで定義することから、RACIと呼ばれています。

このRACI図を各業務部門に作成してもらい、そのうえで使用しているシステムやかかっている工数などのヒアリングを行います。そこでごく簡単な業務フローになるようにRACI図を完成させます。
そしてこのRACI図は業務俯瞰図として仕上がってきますので、これをベースに、各部署及び全社での業務IDとして定義し、それぞれの業務IDに対して何時間業務を行ったのかを工数管理をしていきます(ここの習慣づけをしてもらうために、各部門長と担当への粘り強い交渉が必要です)。

1か月、2か月工数のデータが集まってきたら、これを可視化し、部門長と会話をします。


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以上を通じて見えてきた主な効果は以下のようなものです。

①取り組むべきプロジェクトの優先順位や機能を各部門と合理的に合意できた(予算化までストレートに進むことができた)
②取り組んだ結果が工数の削減として定量化ができた
③各部門メンバーが工数を意識しながら業務を行うことで定常業務それ自体が効率化された
④各部門メンバーからこの業務をRPA等で改善できないかと提案があがってきている

残った課題もかなりありますが、最も大きな課題は下記です。
・結果的に自己申告であるため、適切な業務を選択しているか、工数が正しい入力であるかどうかにはかなりの個人差がある。
→プロセスマイニングツールの利用や、業務時間を計る客観的な仕組みをいかに作るかが積み残しとなっています。

皆さんもどんなプロセス管理をして、各部署の業務と関わっているのか、どのような悩みをかかえているのか、是非教えてください。

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