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渋谷の「谷底」で問い合う関係性を生み出す| 「SHIBUYA QWS」

今年の終わりに差し掛かる11月1日に、渋谷から世界へ問いかける、可能性の交差点、SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)が、同時に開業するSHIBUYA SCRAMBLE SQUARE の15階にオープンします。

今回オープンするSHIBUYA SCRAMBLE SQUAREの東棟は、東急東横線旧渋谷駅の跡地に誕生する、渋谷ではもっとも高い47階建ての、展望施設、オフィス、産業交流施設、商業施設により構成される複合施設です。
昨年秋に開業した渋谷ストリームに隣接し、12月オープンの渋谷フクラスや、来年1月に予定されている東京メトロ銀座線渋谷駅の移設など、2020年に向けて渋谷の景色は大きく変わっていきます。

ミミクリデザインでは、SHIBUYA QWSのコアプログラムの1つである「QWS Cultivation Program(キューズカルティベーションプログラム)」の開発を行なっています。

Cultivation Programは、ワークショップやイベント、アカデミックリサーチの支援などを通して、「問い」に惹きつけられた仲間たちと巡り会い、「問い」の可能性を社会へと広げていくことを目的とした、「問う」力や感性を耕すプログラムです。

SHIBUYA QWSのプログラムは、「出会う」「磨く」「放つ」の3つのフェーズに分かれており、Cultivation Programはその3つのフェーズにまたがるプログラムとして、施設の会員の方を中心に提供される予定となっています。

6月からはトライアルイベントとして、出会うフェーズを構成する4つのプログラムの体験イベントを渋谷周辺で開催し、様々な方々にQWSのコンセプトや活動の一端を体験していただいています。(その様子については以下のレポート記事をご覧ください!)

今回は、トライアルイベントを通じて見えてきた、SHIBUYA QWSやCultivation Programの可能性やビジョンについて、自分なりの視点で整理しようと思います。


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オープントライアルイベント#01
「問いへの入り口」

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オープントライアルイベント#02
「問いの哲学」


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様々な「まなざし」のスクランブル

ミミクリデザインでは、ワークショップやプロジェクトを構成する上で、問いをデザインすることを大切にしています。

商品開発にせよ、組織開発にせよ、人材育成にせよ、地域活性化にせよ、「大きな課題」をどのような「まなざし」で捉えて、解くべき「問い」を何に設定するかによって、プロジェクトのプロセスとアウトプットは劇的に変わります。

問いは、様々な事象をどういった角度から捉えようとするかという、まなざしのあり方であると言えます。例えば、人間が生きる意味を一つのテーマとしても、「人はなぜ生きなければならないのか」や「人は生きることで何を成し遂げることが可能か」というように、問いによってそこから見える視界は大きく変わってきます。


そもそも何に主眼を置いて見ようとするかという視点もまたそれぞれです。

視野は、自分がどの範囲までを影響範囲に置いているか。視座は、自分がどのポジションから判断しているか。視点は、自分が主題と考えているものは何か。

そういう風に考えると、色々なことに普遍化できそうに思える。他人と意見が相違するときは、まず3種類の要素のどれがズレているのかをチェックしたい。共通した足場を、築きやすくなると思う。


トライアルイベントでは、デザイナーやプランナーとして活躍している方はもちろん、コミュニティを運営する方や高校生まで、様々な人にご参加いただきました。そんな様々な人々が、「問い」を投げかけあい、語り合うことで、様々な「まなざし」が立ち上がり、深い対話が行われていました。

SHIBUYA QWSのコンセプトとして大切にされている要素の1つが、スクランブルすることです。

ありふれた日常から立ち上がる雑多な問い。それらが一つの場所に集積したら、どうなるのだろう。そしてそれらが、多様な個性や領域を越えた深い知性と出会い、スクランブルされたら、一体どんな化学変化が生まれるのだろう。


単にある方向からのまなざしでしか物事を捉えることができなければ、違ったまなざしの存在に気がつくことができず、偏見や固定概念から抜け出すことができなくなってしまいます。渋谷は多様性を重要視していますが、本当の意味での多様性とは、多様な性差を認めることや憲法を変えるか変えないかといった価値観のことではなく、多様な見方を尊重することであると思います。

「まなざしとしての問い」がスクランブルすることで、日常では気がつけなかった視界や考えに気がつくことができます。意見の相違を、価値観の違いとして捉え議論を避けるのではなく、違ったまなざしをスクランブルさせることで多様な見方を形成することが、本当の意味での多様性の尊重につながります。


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深く潜って対話する、問い合う関係性のディスコース

渋谷駅は、周囲を坂に囲まれ、谷底にあるということがよく言われます。
谷の地形が人を誘い、様々な方向から多様な人々が集まってくる。以前イベントでご一緒した関野らんさんの言葉を借りれば、そうした「地脈」が渋谷の多様性の源になっているともいえます。

そんな谷底に生まれる施設だからこそ、問いを通じて語り合う場としての意味があるはずです。

SHIBUYA QWSは、様々な活動を通して、社会に向けて問いを放っていくことを1つの目的に置いています。QWSチャレンジは、そうしたプロジェクトを企む人々を支援するプログラムです。

他にも多様な企業や大学、行政と連携して、様々なプログラムが提供され、そこからきっと数多くのプロジェクトが誕生してくると思います。

そして、QWSに根付き広がって欲しいと考えるもう1つの要素が「問い合う関係性のディスコース」です。

ディスコースは、様々な学術領域で用いられる言葉ですが、自分がアプローチしている「意味のデザイン」にも関連してくる言葉です。クリッペンドルフによれば、ディスコースとは、「組織化された話し方、書き方、しかるべき行動の仕方」と定義され、デザイナーが直面するデザインすべき人工物(人工物の軌道)の中で、最も上位に位置づけられたものです。[*1** **クリッペンドルフ(2009)『意味論的転回』]

QWSは、様々な問いや人がスクランブルし問い合う関係性をもたらす場とも言える施設です。トライアルイベントでも、普段とは違う雰囲気の中、普段とは違う人々と、普段とは違うスタイルでコミュニケーションを取っている姿が見られました。

もちろん哲学者や研究者のような人々は、普段からそうした問いを通じたコミュニケーションを好みます。しかし、ここに集う人たちは必ずしもそういう人たちばかりではないと思います。コワーキングスペース的に使おうとする人もいるかもしれませんし、イベントの時だけ訪れようとする人もいるかもしれません。普段の日常生活の中で、なかなか問いに意識を向ける人ばかりではないと思います。

しかし、そんな人でも、QWSに来たら、あるいはCultivation Programを受けたら、自分の持つ問いに意識が向き、他者の問いが気になり、そこにいる人々と問わずにはいられなくなってしまう。こうしたQWSならではのディスコースを生み出すことが、渋谷において、あるいは今日の日本において、とても重要な意味を持つような気がしています。

谷底に存在する渋谷の地で、様々な人々が日常ではなかなか語れない問いについて、互いに深く潜って対話しながら問い合う。こんな風景がコミュニティにおける当たり前の景色になっていったらいいなと思って、Cultivation Programの開発にメンバーと一緒に取り組んでいます。


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「あなたの問いは何ですか?」

こんな一言から始まる関係性が、きっとQWSには生まれてくるはずです。Cultivation Programのトライアルイベントは、すでに募集を締め切ってしまっていますが、もう2回分のイベントレポートも、SHIBUYA QWSのウェブサイトおよびFacebookページで後日公開されます。


会員募集も始まっていますので、気になる方は下記もぜひチェックしてみてください!


なかなかプロジェクトでバタバタしていて書けていませんでしたが、QWSについてや、ディスコースのデザインについて、そして研究会を行なっている「意味のデザイン」についてなどなど、今後もnote書いていきます。ご関心のある方は、ぜひnoteや(さほどためになることは呟いていない…)Twitterのフォローをぜひお願いします。


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