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北欧に根ざす、好奇的でクリティカルなスタンス③

前回の続きです。 


前回の投稿では、イーロンマスクも基本的なスタンスを置いている、第一原理について紹介し、リサーチのフェーズにおいて、なぜ全員がなるべくプロセスに関与すべきなのかを、Conclusion Biasなどを取り上げながら説明していきました。

今回書いていくのは、ワークショップの中で直接説明されたものではなく、ワークショップを通して気付かされた部分のお話になります。


第一原理… クリティカルな姿勢… 正直しんどい?

前回も書きましたが、常に第一原理を追い求めるというのは、かなり大変です。イーロンマスクのように周囲がついて行けなかったりもします。

何が正解かわからない世の中において、物事を批判的に捉え続けるというのは、なかなかできることではありません。

特に日本は、そういう思考プロセスに関する教育がしっかり行われているとは言えないのが現状です。優等生か、反発するか、何もアクションを起こさないか。


そう言えば先日後輩の木村朱里に、山田玲司さんの『非属の才能』という本を紹介してもらいました。現時点では下記から全文無料で読むことができます。(すごい)
まだ全ページ読めていませんが、周囲の空気を読まずに(全体性に属さずに、というニュアンスの方が正しいかもしれませんが)自分の意思を貫き通すというのは、そんなに簡単なことでは無いと思います。

常に物事に対してクリティカルな眼差しを向け、第一原理的な思考を貫くのは、とてもエネルギーのいることであり、ましてや暗黙の了解のハイコンテクストな社会で生きる私たちには、なおさらしんどいことなわけです。


厳しいアプローチを乗り越える鍵は、「好奇心」にある

今回気付かされたのは、厳しいアプローチを乗り越える鍵が、本質に対する「興味」つまり「好奇心」にあるということです。

Kaospilotのワークショップでも、はじめと終わりに、必ず車座になり、一人一人がなぜここに来たのかや、今日学び達成したいことについて聞かれます。それも端から順番にではなく、心の整理がついた人から話していくスタイルで、沈黙の時間も多く存在します。(これが講師陣には逆に驚きだったようでした)

しかし、ワークショップを進めるに連れて、そこに重苦しさは感じないものになっていきました。最後の方ではその沈黙の時間が心地良いとまで思うようになったのをよく覚えています。

これは相手に対して本当に興味を抱いているからこそ生まれる心地よさなんだと思います。

ワークショップで紹介された調査のポイントの中に、「調査は論じることが難しい — 議論を避けること」というものがありました。

要するに調査のフェーズでは結論を出すことが目的ではないとも言えます。だとすれば、調査の目的は、「本質への理解のための興味、好奇心を作り出すこと」と考えることも可能でしょう。


「興味や好奇心を作り出すための調査」という視点

好奇心は生じてくるものではなく、意図して生み出そうとするものだということです。そのために調査にさまざまな工夫をもたらすという意識は、あまり持てていませんでした。

調査に臨もうとすると、どうしても新しい解決策を切り口を見出そうとしてしまいます。しかしここではあくまでその後のプロセスに生きる、本質的な興味を作り出すことがまず必要なのです。

例えば写真を見ることで、その人の生活やさまざまな行為が読み取ることができます。興味を持てば、その人のことがもっと知りたくなります。
誰かの1日に密着すれば、その人の事がもっと知りたいと思うようになるでしょう。

本質的な問いを繰り返すことは、非常に辛い時間ですが、本質的な興味がそこにあれば、より深い問いを紡ぎだすためのエネルギーになります。これがその後の工程において、常にクリティカルなスタンスを持ち続けるための基礎体力となっていきます。

好奇心を持つということは、より深く知りたいということでもあります。この好奇心こそが、クリティカルなスタンスを支えるエネルギーだと考えます。


北欧に根ざす、好奇的でクリティカルなスタンス

KAOSPILOTを含めここ2年間、特にデンマークのアプローチに触れる中で、ずっと日本にはない何かを感じていました。彼らのワークショップでは、混沌とした状況において、常に本質的な問いをぶつけあい、より新しい理解を生み出そうと苦闘します。しかしそこには圧倒的な安心感があり、良い意味での居心地の良さがありました。

批判的な思考の中には、好意の原則というものが必要であるとされています。

批判(吟味、省察)を行うには、まずはその対象や問題をきちんと理解していなければならない。十分な理解の努力なしに行われる批判は、たんなる誤解や、挙げ足取りや、本質的ではない議論にしかならない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%B9%E5%88%A4%E7%9A%84%E6%80%9D%E8%80%83#.E5.A5.BD.E6.84.8F.E3.81.AE.E5.8E.9F.E5.89.87

この好意とは、まさに相手や事象に対する興味を指すものでしょう。


どんな事象にたいしても、どんな状況にあっても、常に好奇心をベースに批判的な思考が行えるかどうか

こうした好奇的な批判のスタンスを私たちはどれくらい持てているでしょうか?

また、好奇心を個人やチームの中に育むために調査を行なっていくという感覚を、私たちはどれくらい持てているでしょうか?

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戦略デザインリーダーシップや、KAOSPILOTのクリエイティブリーダーシップ、そしてデンマークを中心とした北欧のクリエイティブには、そうした地脈とも呼ぶべき好奇的でクリティカルなスタンスが存在しているように思えます。

こうした観点から、まずは日々の取り組みに興味を持ち、批判的に見直していくことが必要だと感じました。


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