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北欧に根ざす、好奇的でクリティカルなスタンス②

(なんで写真がイーロンなのかはちゃんと記事を読んでね!)

続編です。

公式おすすめに掲載いただいたり、まさに今デンマークのDesign School Koldingで学ばれている平野さんにコメント頂いたりと、これはちゃんと書かねばと気を引き締めています。(平野さんの記事は下記からどうぞ!)


さて本題ですが、前回はダブルダイアモンドについてフォーカスし、様々な人と協力しながらデザインを進めていく(Co-Design)における共通認識としての土台、もしくはディスカッションのベースになる基本レシピのようなものだと紹介しました。

今日は、その共通認識をさらに形作っていく上で(つまりデザインを形にしていく上で)気をつけなければいけないバイアスについて見ていきます。


調査はリサーチャーがすべきもの?

近年はUXに対する認識も広がり、デザイナー教育の中でもインタビューやエスノグラフィー等が基本として行われるようになってきています。

僕もたまたまちょうどのタイミングでUX界では知らぬ人はいないであろう、安藤先生がやってきてくれたこともあり、3年生のタイミングで授業を受けることができました。(この授業が実は研究に対する興味を持ったきっかけでもありました)


最近ではUXリサーチャーという職業も比較的よく目にするようになりました。専門的にリサーチをしてくれる人が増えてきて、おそらく専門の業者?のようなものも生まれてくるでしょう。

しかしながら、ワークショップでは、調査は誰かが代理でやればいいものではなく、全員が調査の質に対して責任を感じ、同程度の理解と事実を共有することが重要であること、そしてそれぞれが別々の調査を行なったとしても、そのレビューは常に集合知としてまとめられた状態にあることが大切であることが指摘されました。これはリサーチャーという職業を否定するわけではなく、リサーチャーもデザイナーも(他の職種も)積極的に調査に関与すべきということです。

なぜ誰かが代理でやるべきではないのでしょうか?リサーチャーが調査を行い、それによって明らかになったことを共有する状態とは、どのような違いがあるのでしょうか?


イノベーションに必要な「第一原理」へのアプローチ

そもそも、なぜリサーチは必要なのか、という点から見ていきます。

ワークショップの中で取り上げられたのが、イーロンマスクが重視しているという、第一原理の観点でした。(はい、写真がイーロンマスクの理由でした!)

第1原理とは世界を構成する物事の中で、他のものから推測することができない命題のことをさします。

テスラやスペースXを率いるイーロンマスクは、推論ではなく、この第1原理に根ざすことで、今前の常識を覆すようなさまざまな事業を創造しています。

第一原理とは物理学的に世界を眺めることです。これはもっとも本質的な事実まで突き詰めて、そこから推論をするという意味です。非常に精神的なエネルギーを使います。
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イーロン・マスクはこの原理に則って世の中を次々に変えていっています。スペースXのロケットのコストを大幅に下げることが可能だと見抜いたのも、ロケットの打ち上げに必要な材料を市場価格から計算し直したからです。
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第一原理から思考するというやり方は世の中にあふれる「こうやったら成功する」といった成功の秘訣みたいなものの対極にあります。世の中の成功の秘訣はおおむね成功者が自分の成功体験を語り、そこから類推される法則のようなものを指しますよね。でも第一原理というのは物理学的な視点から見た本質的な要素から思考を組み立てるということです。そこには成功者の体験という主観的なものは一切含まれません。どこまでも冷徹に客観的事実を重視します。
http://elongeek.hatenablog.com/entry/2015/03/10/230718

彼の会社は、やたら人がやめていくことで有名ですが笑
それは徹底的に自分が第一原理に照らし合わせて納得しない限り、人のいうことは信用しないという点にあるのでしょう。思いつきで、こんなのあったらいいじゃん、という人では無いのです。常識破壊的なことを成し遂げていく彼の根本には、第一原理主義が根付いているのでしょう。
(しかしながら、幹部が4日前にも辞めてました…笑 これはこれで問題)


人は誰しも、無意識に結論づけようとしてしまう

なぜ第一原理的な考え方が必要なのでしょうか?

ワークショップの中で挙げられたのが、「Conclusion Bias」というものです。
これは、「問題が明確であると思い込み、それに基づいた解決策を考えてしまう」「推測したことが正しいと思い込み、事実として後工程に進んでいってしまう」というような結論づけようとするバイアスのことを指します。認知心理学の中では「性急な結論バイアス / Jumping to Conclusion(JTC) Bias」とも呼ばれいてる症状(これは統合失調症の症状として定義されているようですが、、)

ワイドショーなんかを見ていると、毎日いろんな事件が報道されていますが、事件の裏側を勝手に推論して、語ってしまうことは誰しもありますよね?(政治なんかまさにそんなのばっかりで、政治家がそんな議論ばっかりしてるので、与野党ともになんとかして欲しいところではありますが、、

特に日本はハイコンテクスト社会と呼ばれる、いわば暗黙の了解が多く存在する文化圏にいます。ローコンテキスト社会に比べても、相手の考えを推し量って行動する傾向は多く見られます。(それがプラスに作用したのが、いわばおもてなし、マイナス?の方に作用するのが最近よく聞く「忖度」ですね)

誰かが調査して上がってきた調査結果を見たとき、この結論バイアスが働いてしまうと(さらに言えば自分の持っているコンテクストと結び付くと)、人はその結果を信じ込みやすくなってしまいます。(逆に自分の持っていたコンテクストと違うと、その結果を無条件に批判してしまいます)

これが新しい何かを作っていこうとする上で、良い状態で無いということは誰しもわかると思います。

結論バイアスを避け、第一原理に基づいた思考を重ねていくためには、調査のフェーズには積極的に関与していくべきなのです。例え実際に関与できなくても、調査方法を検討したり、逆にできるだけ生に近いローデータをちゃんと見る、ということが重要であるということです。

常識を疑えという言葉をよく聞きますが、これは第1原理を意識せよということの下位概念であるということもわかります。常識を疑えば良いと思い、ただ突飛なことをしているのは、第一原理に根ざしてはいないのです。
(もちろんそんな人と一緒に何かをしているのは楽しいですが…)



でも、ずっと第一原理で動いてたら、なんだか疲れちゃいそうですよね…
そればっかり押し付けていたら、周りに人がいなくなっていっちゃいそうです。(そういやジョブズもそんなところありましたね。。)

少し長くなりましたが、次回はそんな厳しさを含んだアプローチをどう乗り越えていくのか、そのスタンスについて書いていこうと思います。

みなさんからいただいた支援は、本の購入や思考のための場の形成(コーヒー)の用意に生かさせていただき、新しいアウトプットに繋げさせていただきます!