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【この本】ジョジョ5部アニメ終了「ロス」の人にオススメの物語

ジョジョ第5部の「後日譚」

さきほど「ジョジョの奇妙な冒険」第5部のアニメが終わった。

最終回は午後8時のゴールデンタイム帯で1時間という特別枠で放送。OPから誠に気合いの入った作りで、制作陣の情熱が「言葉」でなく「心」で理解できた!という感じだったが、ラストはラスト。毎週欠かさず見ていたジョジョファンとしては寂しい限りだ。

「ああ、来週からはジョルノもブチャラティも、スタンド使いたちの異能バトルももう見られないのか」

と、「ジョジョロス」になるファンも多いのではないか。

私もその一人だが、ファンの一人として「ジョジョロス」に苛まれるであろう諸氏にオススメしたい本がありこれを書くことにした。なぜか?

実は、第5部にはまだ続きの物語があるのだ。

主人公、ジョルノ・ジョバーナが組織「パッショーネ」をボスから乗っ取ったあのラストからおよそ半年後の後日譚が。物語の主人公の名はパンナコッタ・フーゴ。物語の中盤でジョルノ達と袂を分かったあの少年だ。今回はこの物語を紹介する。

作者は人気作家の『上遠野浩平』

この後日譚(また実は前日譚でもあるのだが)は原作の荒木先生とはまた別の書き手によって紡がれる。著者は上遠野浩平。電撃文庫ブームの火付け役を担った『ブギ―ポップは笑わない』(この小説もまたオススメなのだが)の作者であり、言わずと知れた人気作家である。勿論力量は十分。そして何より重要な点は、この作品が「ジョジョ愛」に溢れていることだ。作者はジョジョの物語に「胸の奥を鷲掴みにされるような恐ろしさと陶酔を感じていた」という。その作者によって紡がれたが故に、この物語はジョジョの世界観を決して壊すことはなく、寧ろその世界観の奥行きをさらに深め、そればかりか魅力をさらに高めることに成功しているのだ。

物語は本編の半年後 舞台はやはりイタリア!

どんな物語か?それは最序盤で作者によって語られる。

これは、一歩を踏み出すことができない者たちの物語である。将来になんの展望もなく、想い出に安らぎもない。過去にも未来にも行けず、現在に宙ぶらりんにされている者たちが足掻いているーそのことについての奇譚である。(本文から引用)

そう。これは、あの場面で一歩を踏み出すことが出来なかったあのフーゴの、その後の物語だ。細かいストーリーをここで語るのは野暮というものであり、余計なお世話なのだが、「推薦図書」という括りで書いているので、何がオススメなのか?物語の概要をお伝えしよう。

物語の始まりは本編のラストから半年後ー

舞台は本編と同じイタリアだ。
主人公のフーゴ、一度はジョルノ達と袂を分かったあの少年は本編ラストから半年後「人から裏切り者と蔑まれ、恥知らずと罵られる」境遇に追い込まれている。その彼がいかなる運命辿りつくことになるのか?それがこの物語の軸だ。

そしてこの物語ではボスを亡き者にしたジョルノ、ミスタ、ポルナレフ、そしてトリッシュのその後も描かれる。さらには本編で命を落としていったブチャラティやアバッキオ、ナランチャらとの出会い=本編の前日譚も明らかにされる。そして本編をどれだけ読み込んだのだろうか、作者は本編のあの名シーンの数々に独自の解釈を吹き込み、物語に奥行きを持たせていく。ジョジョのファンであればページを繰るのが止まらないであろう。最高にハイ!ってやつになれるはずだ。

敵は本編では描かれなかった「あのチーム」

ジョジョの奇妙な冒険を何の漫画だと分類するのか議論の余地はあろうが、やはり主軸は「バトル」である。そうであるからには魅力的な「敵」が必要だ。ではこの後日譚の「敵」は?詳しくは書かないが、フーゴの前に立ちはだかるのは本編にもちらりと出てきた「あのチーム」である。一体何者か?是非ご一読頂きたい。その敵もやはり、魅力的だ。
物語のある段階で敵の1人はフーゴに語りかける。

** 「君はきっと、こんな風に考えている――〝間違いたくない、常に正解を選びたい〟と――だがその考え自体が、すでに、すでに勘違いをしているということだ」**

さらにその「敵」は語る。

「人生はつまるところ――〝理不尽〟だ。・・・うまく行かないのが人生だ。まずはそれを受け入れることだ。そこからすべては始まるのだ。たとえ他人が自分に期待していることをしてくれなくとも、予想と異なる行動に出ても、それを認めることだ。君のようにすぐにキレて周囲に当たり散らすのは最悪だ。それでは何も生まれない。そこには荒廃しかない」(以上引用)

この言葉にフーゴは思い悩む。葛藤する。そして彼が突き当たる困難はこれだけではない。さらに強力な「敵」も出現し、壮絶なバトルを繰り広げる。フーゴはそれを乗り越えられるのか?そしてその試練の先に「恥知らず」と呼ばれる境遇のフーゴが、スタンド「パープルヘイズ」と共にどこに辿りつくのか?

私はこの作品を以前から知っていたが、手に取ったのは第5部のアニメが始まってからだ。そして読みだすとページを繰るのが止まらなくなった。もしあなたがジョジョのアニメに嵌った「ジョジョファン」であるならば、めくるめく読書体験ができること請け合いだ。

ほかにもある人気作家によるジョジョスピンオフ作品

余談になるが、人気作家と「ジョジョの奇妙な冒険」のコラボ小説シリーズはこの作品だけではない。乙一、舞城王太郎、西尾維新という錚々たる作家陣がスピンオフ作品を書き下ろしている。「VS JOJO」というシリーズだ。この中で私が読んだのは乙一の『The Book』。

これも凄い・・・天才作家と呼ばれたあの乙一からして書きあげるのに数年の歳月を費やしたというのだからその意気込みがいかほどであったか伝わってくるではないか。まあ、この本の推薦は後日に譲るとして、こうしたシリーズがまたジョジョの世界を広げていく。

多くの人を引き付ける物語とその世界観は多くの別の書き手によってさらに広げられていく。『スターウォーズ』しかり、『宇宙英雄 ローダン』しかり。別の書き手によってまた別の物語が描かれるというのは、ジョジョサーガもそういったマスターピースのひとつなのだろう。

「ジョジョ」の作品の魅力は尽きることはない。(了)


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