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電子政府のつぎ?デジタルガバメントってなに?:電子政府案内 その5


はじめに
神長広樹と申します。現在エストニア、タリン工科大学電子政府学科修士2年生です。卒業も間近に控えたことからこの2年で学んだことをまとめてみたいと思いこのシリーズを始めました。形式は質問応答形式を採用し、なるべく引用元(多くは英語)をリンクまたは明記しますが、中には個人的な意見等も含まれる(その都度断ります)ことを留意ください。また各専門用語は英語中心となることをご了承ください。不備がある場合ご指摘いただけると幸いです。

前回の続きから

おさらい:電子政府ってなに?

電子政府(e-government)とはOECDの定義によれば「インターネットを始めとする情報通信技術(ICT)を用いることでより良い政府を実現すること」というものでした(電子政府案内 その1)。そう“より良い”政府を目指したのです。具体的には

1.ICTの導入によって政府内部の構造改革を行い、意思決定等のプロセスの効率化を図ること。
2.ユーザ目線(user-oriented)であること
3.透明性の確保を図ること(例、オープンデータなど)

です(上記同出典。他にも色々あります)。

デジタルガバメントはなにが違うの?

電子政府は、少し乱暴な言い方ですが、電子化を主眼に置いていました。つまり、今まであった公的サービスをICT導入によって電子化することで上記の1, 2, 3のようなことを達成しようといった感じです。

対してデジタルガバメント(digital government)は電子化はスタートラインとして(digital by default)、実質的な“公的価値”に焦点を当てようとするものです。OECDの定義を見てみましょう。

Digital Government refers to the use of digital technologies, as an integrated part of governments’ modernisation strategies, to create public value.
(Recommendation of the Council on Digital Government Strategies)

この公的価値(public value)は具体的には6つあって、

1) goods or services that satisfy the desires of citizens and clients

2) production choices that meet citizen expectations of justice, fairness, efficiency, and effectiveness; 

3) properly ordered and productive public institutions that reflect citizens’ desires and preferences

4) fairness and efficiency of distribution; 

5) legitimate use of resource to accomplish public purposes

6) innovation and adaptability to changing preferences and demands

と、市民(citizenあるいはpublic)に利点を還元しよう!、その際不公平や非効率になることは避けよう!、柔軟に(これからも続く)変化に対応できるようにしよう!というもので、今風に言えば

「デジタルガバメント?なにそれ?美味しいの?」

ー「はい!むちゃくちゃ旨味があります!我々全員に」と単にバズワードに乗っかったり、大きな箱物作って満足としないようにという教訓も含まれています。

まとめると、電子化って目的化してきたけど、そもそも市民のための政府だってこともう一度思い出そう、って感じ。

デ・ジ・タ・ル・ガ・バ・メ・ン・トっていいことなんだね?

うーん。その名称からだと本質的なことが汲み取れないから個人的には“人民のための政府”と言ってくれたほうが皆にわかりやすくていいと思っている。

ちなみに余談だが、電子政府(e-government)とデジタルガバメント(digital government)の間には、歴史的にはモバイルガバメント(m-government)というのが存在した。まあ、スマホで公的サービスを利用できるようにしましょう、というものだな。世界にはパソコン普及率よりもスマホ普及率が高い国があること、日常的にパソコンよりもスマホを使うことが多くなっていることなどを踏まえて、そのような名称、というかスローガンみたいなものが生まれた。

なお、2018年の早稲田大学電子政府・自治体研究所の調査によると日本はスマホの利活用化の観点が弱い。ただ、主観を述べるなら、そんな調査項目の一点の拡充を図るよりも

“利権のための政府”を“人民のための政府”に戻すことに政治は頑張って欲しい。


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