2019病児保育研究大会まとめ 1

2019年7月14-15日に岩手県で開催された病児保育研究大会のメモです。
お聞きした発表に解釈を混ぜて記載しておきます。

会頭の山口淑子先生のご講演には残念ながら間に合いませんでしたので聴講できませんでした。

主催は病児保育協議会、協議会であってあくまで学会ではないんですね。何かこだわりがあるのでしょうか。

協議会会長講演 大川 洋二先生

「病児保育はどこに向かうのか」

> 病児保育の歴史
 1960年代 東京都世田谷区、大阪府枚方市・寝屋川市、青森市で病児保育の原型が始まった。
 1990年代に厚労省(当時は厚生省?かな?)
 1991年 病児保育協議会発足
 エンゼルプランにより病児保育事業開始
 2007年 厚労省病児病後児保育要項
 2012年 内閣府子ども子育て支援法の公布
     病児保育は法定13事業として認められた。
 2013年 子ども子育て会議発足
     病児保育専門士制度

 今後は地域子ども子育て支援関連法定13事業から分離して保育園・認定こども園と同等の対応を目指していきたいとのこと。この点に関しては、"一般保育の処遇は改善されつつあるが病児保育は取り残されている"とおっしゃっていたので、病児保育事業の経済的な自立やそこに関わる保育士さん達の地位向上を目標とされておられるようです。ゆくゆくは病児保育専門士にはインセンティブをつけられるようにしていきたいとのことです(我々も専門医にインセンティブ設計が欲しいです)。

 厚労省の指針により病児保育施設に対する処遇は基礎分と加算分は増えたが、自治体によってはまだ反映されていない所もあり地道な交渉が必要である。

(この辺りに関しての考察は病児保育協議会の機関誌「病児保育研究」第6号に掲載予定です)

 経営観点からは
 > 利用実績人数に応じた支払いが都市部に向き
 > 定員に応じた支払い(定額制)は地方に向く
しかし実際は逆になっていることが多い。今は黒字の内部留保が認められておらず、13事業からの脱却が必要とのこと。
**
 > これからの社会のあり方**
 疾病構造の変化により医療は予防医療にシフトしてきた。この背景には人口構造の転換があり

多産多死から
多産少死を経て
少産少死に至った。

これからは少産良育を目指していきたい。

病児保育はそのためのプラットホームとして利用されることを期待している。虐待防止やレスパイト、医療ケア児と課題はある。母の休息、孤立感から連帯感へ促せるような環境の提供。

病児保育自体のニーズは高まってきており今ある施設を有効利用する事が大事。すなわち利用率はあげていきたい。そのためには広域利用も大事。利用率が上がることで収支は良くなる。

広域利用に関連した私の発表に関してはこちらのnoteにまとめました。

AIと保育に関しても触れられておりました。基本的にはAIが取って代われるものではなく、人間にしかできないこと、これをきちんとやっていこうというメッセージでした。

AIに関しては私の研究分野でもあるので興味があります。病児保育だとできそうなのは悪化の予測のあたりでしょうか。感染症を考慮した部屋割りに関しては、現在ベテランの保育士さんが行なっている正解パターンを用いて深層強化学習を行うことで現状の振り分けのクセまでを含んだ自動化ができるのではないかと考えています。

感想

 さすが長年開業医の立場から小児医療に貢献され、病児保育事業にも尽力されてきた大川先生、圧巻の口演でした。後に続く一人として見習いたいものです。
 病児保育は歴史のある事業ですが、意外と認知されていなかったり使われていなかったりするのが現状です。子育てをしながら就労するという共働き世帯には環境が整備されれば非常に強い味方になると思うのでぜひ現場の処遇改善、利用者の使いやすさの向上に向かって進めていければと思います。

長くなったのでその1 として続きを書きます。

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