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「六道警備隊」第三話

第三話  「韻を踏む虎」
人間界  地藏公園
女子高生  吉祥 麗がお地蔵様にお参りをし、何かをお願いしている
麗「お地蔵様、私を助けて下さい。悪い奴等に追われています」
お地蔵様「・・・・」沈黙をしている
麗「助けてくれたら・・・私も愛子みたいに、お地蔵様にキスします」
お地蔵様「・・・・」顔を赤らめる『ポッ』
そこにガラの悪いヤクザ風の輩が二人登場する。一人は白い上下のスーツに黒シャツを着用、スキンヘッドで体格の良い男
もう一人は迷彩のミリタリージャンバーに焦げ茶のチノパン、軍事風ブーツを履き金髪で長身の男
ジャック馬場「見つけたぞー吉祥 麗!」傭兵風の男が麗の肩を掴む
牛丸十兵衛「探したぞー、社長がお呼びだ!」」白いスーツの男が
麗の右腕を掴む
お地蔵様を見て一言「おっ、俺と同じスキンヘッドじゃねーか
イカシテルゼー」ニヤッと笑う
お地蔵様 心の声「一緒にするなボケ!こっちは浄髪じゃ!」怒り心頭
震えで持っていた錫杖のリングが鳴る『シャリーン・シャリーン』
ジャック馬場「兎に角、事務所まで来てもらうぜー」左腕を組み引っ張る
吉祥 麗「キャーお地蔵様!助けてー」大声で懇願する
牛丸「バッカー地蔵が動くか!」右腕を組み、強引に公園の前に駐車
していた黒塗りの外車に乗せ連れ去る
お地蔵様「この前、韻虎達がヴァルナから救出した娘じゃ、一体何があったのじゃ?」錫杖のリングが鳴り続ける『シャリーン・シャリーン』

 
人間界  蛇島プロダクション
繁華街の路地を入り雑居ビルが軒並み続く、薄汚い三階建てのビルに
『蛇島プロダクション』の看板
社長室に入る、ジャック馬場、牛丸十兵衛と強引に連れ去られた吉祥 麗
馬場「社長、吉祥 麗を連れて来ました」一礼をする
蛇島龍平「牛丸専務、馬場常務、ご苦労様!」
「困るなー麗ちゃん、仕事サボっちゃー」オールバックに銀縁眼鏡
縦縞のダブルのスーツ、一見インテリ風だが目つきが鋭く狡猾そうな男が
黒革の一人用ソファーの上座に足を組み座っている
下座の三人掛けソファーに麗を挟み馬場と牛丸が着席する
麗「私、この仕事辞めます!」開口一番、毅然とした態度で呟く
馬場と牛丸が麗を睨みつけ何か言おうとする
蛇島「ふーん・・・」落ち着いた態度で麗を睨みつける
麗「アイドルになれるって言うから契約したんですけど」
「AV出演なんて、聞いていません!それに私まだ高校生です」
キッパリと言う
耳の穴を穿りながら、話を聞く蛇島『ホジ・ホジ』
蛇島「だから、ガキは困るんだよ。ちょっと辛い事があると
直ぐ尻をまくる」
「契約書にも書いてあるだろ、PVのPはプロモーションじゃなくてプレービデオなんだけどー」契約書を見せ、その部分を指で叩く『トン・トン』
蛇島「今から撮影開始だ!タイトルは『現役女子高生、監禁、電流攻め』」
馬場と牛丸が麗の肩を掴み三階のスタジオに連行しようとする

『ピッカーゴロゴロゴロ』雷鳴が響き渡る
蛇島プロダクションビルの一階玄関前に人影が映る
玄関のドアが、蹴破られ誰か入って来る『ドッカーン』
チンピラA「なんだ、なんだ?」少し慌てた様子
チンピラB「はっ、新人の男優さん?今、取込み中だけど」振り向き驚く
そこには、金棒を持ち、閻魔王庁の着物を纏った虎頭羅刹の韻虎が
仁王立ちしている
危険を察知したチンピラ達は木刀を持って韻虎に襲い掛かる
『ビリー』『ビリー』チンピラAとチンピラBを金棒で返り討ちにする
倒れこむチンピラ達、口から泡を吹き、全身が痙攣している
『ビリ・ビリ・ビリ』
韻虎「人間の致死電圧、42(死に)ボルトは抑えてやったでガゥオー」「しばらく筋肉が痙攣して動けないガゥオー!」眼光炯炯な表情
 
事務所二階で一階が騒がしい事に気付く牛丸達
牛丸「何だ、何だ?下が騒がしいぞ!」
馬場「ちゃんと見張っているのか?奴らは」
蛇島「警察か?牛丸専務、ちょっと見て来て下さい」少し焦った様子
『バーン‼』いきなり社長室のドアが開き、韻虎が入って来る
韻虎「♪ズッイ・ズッイ・ブッ殺がーし 脳ミソズッイ ♪閻魔に追われてドッ・ピン・シャン ♪死んだーら 何処行くの?イエーイ♪」
ラップで韻を踏み登場
「生前、殺生、偸盗および、邪淫の罪を犯した者は衆合地獄に堕ちるで
ガゥオー!」

地獄絵巻 衆合地獄の絵図
「ここには美女のいる樹木がある。罪人はその美女めがけて樹木を
よじ登るが、葉が刀の様に鋭く罪人の体を切り刻むでガゥオー」
「それでもようやく樹木に達すると、美女はもう地上に居るでガゥオー
ほかにも圧殺、肉体の擦り潰しなどの刑もあるでガゥオー」

牛丸「あんた、何者だ!堅気じゃねーな。ジャック気を付けろ」
日本刀を上段に構える
馬場「へへ、元傭兵、俺の攻撃、躱せるかな?」サバイバルナイフで構える
後方で黒革のソファーに座り静観する蛇島、不敵な笑いを浮かべている
麗 心の声「えっ?韻虎さん。なんで?私を助けに来てくれたの?」
驚いた様子だが少し嬉しそう
馬場が一歩踏み込みサバイバルナイフで韻虎を突き刺そうとするが
一瞬先に韻虎が馬場の脇腹に一撃を喰らわす
『ピッカー』電気ショックで失神し倒れる馬場『ビリービリーバッタン』
韻虎「♪窮鼠の鼠がー猫噛んでチュー♪」「♪チュー・チュートレイン♪」
余裕でラップの続きを歌う
背後から牛丸が、日本刀を上段から振りかざし、韻虎を切ろうとする『シューン』
韻虎が振り向き、金棒で日本刀を受け止る『ガッーキーン』
鈍い金属音がするが金棒から電流が流れ牛丸は堪らず日本刀から手を放す『ビリービリービリー』
牛丸「うっ、手が痺れる」日本刀は金棒の一振りで天井に突き刺さる
『グッサ』
韻虎「♪鬼の金棒でー脳天割れたのーだーあーれーイエイ♪」手が痺れ
無防備の牛丸の脳天に金棒が炸裂『ビリビリビリ』
スキンヘッドが電球の様に点灯する 『テカッー』

蛇島が左腕で、麗にヘッドロックをし、右手で拳銃をこめがみに当てる
韻虎「韻を踏む虎。地獄界の獄卒、韻虎でガゥオー。阿修羅族は何処だ?」
蛇島「何処の族だ?そんな奴、知らねーな。しかし、あんた強いな」
「俺と組まねーか?ギャラは弾むぜ」
「女子高生じゃなく、俺が電流攻めに遭っちゃ、堪らないからな」
麗を見つめニヤニヤする
金棒の先端を、蛇島の顔面に向け静止する韻虎「・・・」終始無言
蛇島「なっ?何のつもりだ」威圧感にビビる
次の瞬間、テーブルに金棒を振り落とし真っ二つに叩き壊す
『ビシュー・バキッー』
テーブルにあった吉祥 麗の契約書が破れ、金棒の電流で火が付き
燃えカスとなる『ボオッ』
蛇島「けっ契約書が・・・」一瞬顔が青ざめる
笑みを浮かべる麗「あっ、ありがとう韻虎さん」
蛇島「なっなんだーあんたの女だったのか?」悟ったよう表情で
麗の背中を押し韻虎の元へ
蛇島「ハハハ・・・もう手は出さないよ。嘘ついたら針千本
飲んでもいいぜ」苦笑いをする
韻虎「生前、嘘をついたら地獄で舌を引っこ抜かれるでガゥオー」
真顔で答える
韻虎の胸元に飛び込み、ガッチリと受け止められ顔を赤らめる麗『カッー』
韻虎「もう一度聞く!本当に阿修羅族を知らないでガゥオー?」
「ここで阿修羅反応が出たでガゥオー」問いただす様に聞く
蛇島「だから、そんな族は知らないね。見つけたら連絡するよ」
蛇島 心の声「地獄会の極道、韻虎?どこの組の者だ?」冷や汗を垂らす
蛇島に背中を向け、麗の肩を抱き出口に向かう韻虎と麗
麗 心の声「三度も私を助けてくれた。これって運命?」
赤面する『カッ・カッ』
蛇島が黒革のソファーに座りスーツの中に手を入れゴソゴソしている
韻虎「舌の根も乾かぬうちに、背後から撃つつもりでガゥオー」
振り向かず呟く
蛇島「うっ!たっ煙草だよ。蛇だけにヘビースモーカーなんてねー」煙草とライターを出し火をつける「あんた!後ろにも目があるのか?」慌てふためく様子

 
すっかり日が落ち、薄暗い地藏公園のベンチに座り
缶コーヒーを飲む韻虎と麗
麗「韻虎さん、三度も私を助けてくれて、ありがとうございます」
一礼をする
韻虎「お礼なら、そこに居るお地蔵様に言うでガゥオー」
お地蔵様の方を見る
麗「えっ、お地蔵様?あっ、そうか私、悪い人から助けて下さいって
お地蔵様にお願いしたんだった」お地蔵様の方を見る
韻虎「それに、たまたま蛇島に用事があって、あの事務所に出向いただけでガゥオー」どこかよそよそしい態度
 つれない態度の韻虎を見て、この前の事を思い出す麗
 
回想シーン
ヴァルナ「待ってくれ、その生娘は、お前にやる」
「お前が喰らえば寿命が百年増えるぞー」「だから、見逃してくれー」
韻虎「麗ちゃん、もう大丈夫でガゥオー」近づいて頭を撫でようとした瞬間
麗「・・・」さっきの恐怖から立ち直れない様子
麗「・・・いっ、嫌っ、触らないで・・・」
「お願いです、私を食べないで下さい」震えながら懇願する
韻虎「えっ?何っ?ガゥオー」同様する
馬頭「さっきのヴァルナの言葉が残っているでバヒーン、これは相当のトラウマでバヒーン」
回想シーン終了

韻虎「それじゃー用が済んだから帰るでガゥオー」立ち上がり帰ろうとする
麗「この前は、失礼な事言って、ごめんなさい!」立ち上がりお辞儀をする
韻虎「はっ?何でガゥオー?」一瞬何のことかわからない様子
麗「お願いします。また会って下さい。・・・お友達からでも」
握手を求め告白する
韻虎「いやいや、それは無理でガゥオー
住む世界が違いすぎるでガゥオー」麗に背を向ける
麗 心の声「そうか・・・裏社会いや地獄界の人だもんな」
「でも、諦めきれない。私にとって白馬の王子様だもん」
麗「それじゃー明日。お礼をしたいので十六時にここで会って下さい
約束ですよ!」
韻虎「いや、約束はできない。お礼ならお地蔵様にしてくれ」
そのまま立ち去る
二人の様子を見守るお地蔵様
第三話 完

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