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ロボット掃除機の「人間マッピング」に大失敗した話

はじめまして!株式会社マイベストで掃除機と季節・空調家電を専門にコンテンツ制作をしている22卒・社会人2年目の田丸大暉(@maru_whitegoods)です。

このたび、弊社で毎年恒例となっているアドベントカレンダーの執筆という大役を拝命し、筆を執らせていただきました。今年のテーマは「マイベスト社員が選んだ、会社のおもしろいところ」ということで、僕が主な業務として取り組んでいる「検証の企画」について、ロボット掃除機でボツになった検証を一例に綴っていきます。


まずは前提として、どのような心構えで検証の企画を行っているのか軽く紹介させてください!

マイベストで検証の企画をするということ

このnoteを読んでいる方であればすでにご存知かと思いますが、株式会社マイベストは国内最大級の商品比較サービス「mybest」の運営をしています。商品を実際に買ってきて、ひとつひとつ徹底的に比較。どれがユーザーにとって本当におすすめできるモノなのか、ひたすらに探し続ける日々を送っています

新商品の追加に耐えられる、再現性のある検証を

mybestがほかの類似サービスと異なる点として、商品のデータベースを構築しているという点が挙げられます。たとえばスティッククリーナーだったら、フローリングでどのくらいのゴミを吸えるのか。カーペットならどうなのか。重さはどうだろう。うるさくはないだろうか?最近はロボット掃除機よろしく数週間分のゴミを集め、溜めておけるダストステーションを搭載した機種なんてものもあります(便利ですね)。

こういった要素を「ユーザーにとっておすすめできるか」を合言葉に重みづけをし、ひとつひとつ定量的なデータとして蓄積。新商品が発売されてもまったく同じ基準で検証し、同一のランキングに追加できるように設計されています。毎回データがブレないように、再現性が重要視されるわけですね。

スティッククリーナーの比較コンテンツ。公開当初は22商品でしたが、同条件で商品追加を重ね12/5時点で52商品に到達しています(画像クリックで当該コンテンツにジャンプ可能です)

だからこそ大事な、そしてしばしば事件が起きる「プレ検証」

前述のとおり、一度確定させた検証方法は新商品が追加されるたびに同じ手法が取られます。どこか変更を行いたい場合は過去の全商品をやり直す必要があるため、検証の企画は戻しが発生しないよう慎重に取り組む必要があるのです。

なので、新しく検証方法を考えたあとはそれが本当に適切か、実現可能なのか数商品ピックアップして本番さながらの検証をします。社内では「プレ検証」と呼ばれており、たいていはこの結果を踏まえてブラッシュアップを行っていくわけですが、たまに突き抜けすぎて「この検証は現実的にできません!ボツです!」という結果になることも…。今回は、そういったボツになった検証についてお話していきます。

ロボット掃除機の「人間マッピング」事件

今回任された商材は、「USロボット掃除機」。USとついているのは、mybestは昨年よりアメリカに本格進出しているため。アメリカで販売されている商品を日本に手配して比較検証を行い、コンテンツを制作しています。

国内のロボット掃除機はすでにコンテンツが出来上がっており、検証方法は構築済み。しかし、今回のアメリカ版では現地のユーザーニーズにあわせて検証方法を微調整したり検証方法そのものをアップグレードしたりして、あわよくば国内版にノウハウを逆輸入したいという裏テーマもありました。

ロボット掃除機のマッピング能力を一律に比較したい

当時の僕はそのように考えていました。なぜなら、ロボット掃除機の掃除性能は吸引力とマッピング能力に因数分解できるから。いくら吸い込みが強くても、部屋中を網羅できなければ吸い残しが生じます。逆に吸引力はそこそこでも、壁際や家具の脚まわりを逃さなければ満足できるのではないか?という算段です。

でも、どうやって?

とはいえ、どうすれば多くの商品を平等に比較できるのでしょうか。一部の高価格帯商品はスマホ連携機能を有しており、掃除完了後にスマホアプリからロボットが通った軌跡を確認可能です。しかし、ここに表示されたルートを彼らが寸分違わず通ったのかはわかりませんし、メーカーによって多少の誤差はあるでしょう。まして、スマホ連携機能がない商品だってごまんとあります。

スマホ連携に対応したロボット掃除機のなかには、マップや掃除の軌跡を表示できるものも。
同じ部屋で検証していますが、表示される情報量の差は歴然です

だから、人間マッピング

ロボット掃除機のマッピング能力を平等に比較したいなら、僕自身が、人間が目視でマッピングするしかない。その結論にたどり着くのに、そう時間はかかりませんでした。方法は次の通り。床にロボット掃除機の半径とほぼ同じサイズである15cm四方のマス目を大量に作成し、ロボット掃除機が上を通ったらチェックをつけていくというものです。

非常に泥臭い検証ではありますが、検証に泥臭さはつきもの。これなら、ロボット掃除機の機能に頼らず統一された条件で比較ができるはず…!善は急げ、さっそくプレ検証してみました。

そして2時間後

ひたすらにマス目を引く作業。周囲の箱はロボット掃除機をせき止めるバリケードです

まだ、マス目を引いていました。長い…長すぎる。それもそのはずで、4.5m四方の範囲にできる15cmのマス目の数は全部で900マス。そのためには58本ものラインを引く必要があるのです。さすがに全部引くとそれだけで日が暮れるので、いったん1/3ほど作ったところでロボットを試運転させることにしました。いざ、検証開始!



ここで、完全に想定外の事態が起こりました。ロボット掃除機があまりにも速すぎたのです。目で追いながら通過したマスにチェックをつけるなんて、到底できそうにありません。あたふたしているうちに、ロボット掃除機は縦横無尽に駆け回り、マス目作成の努力をあざ笑うかのように去っていきました…。

こうして、人間マッピングは運転開始からわずか10秒でボツになるのでした

その後のロボット掃除機

失敗に終わった人間マッピング。とはいえ、ロボット掃除機にとって部屋中を隈なく網羅できるかという要素は重要です。そこで、家具の脚まわりやカーテンの奥などのロボット掃除機が完璧に掃除しづらい場所に一定量のゴミを撒き、何gの吸い残りが発生するか測定するという検証に切り替え。

ほかにも、ロボット掃除機が家具を傷つけないか調べるために振動を記録する装置で0.5秒ごとの衝撃値を測定するなど、「ロボット掃除機の性能」を定量的に比較するため試行錯誤を繰り返しました(これもプレ検証時点では0.05秒ごとに測定していたのですが、記録シートがパンクしてとんでもないことになりました笑)。

衝突回避性能の検証の様子。テーブルの脚に振動を記録する装置をくくりつけています

こうしてできあがったコンテンツがこちら。苦労して作ったからこそ、形になったときの喜びもひとしおです。

こちらも画像クリックで当該コンテンツにジャンプできます(英語です。国内版はこちら

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました!ロボット掃除機は比較的 検証のイメージがつきやすい商材だと思いますが、家電といういちジャンルだけをとっても冷蔵庫・石油ファンヒーター・ワインセラーなど「どうやって比較するの?」というものもユーザー目線で徹底比較するのがmybest。

ちなみに今僕はアメリカ向けの商材としてアップライト掃除機の企画を進めています。ほかに前例のない比較検証ばかりだからこそ失敗もありますが、手探りで模索してできること、それを会社が推奨してくれることがマイベストで検証の企画をするおもしろさだと感じてます。

mybestのコンテンツの裏側にある検証について、少しでも興味を持ってもらえたら幸いです!

また、マイベストでは各職種について積極採用中です。
少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひご応募ください!


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