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パリで警察と「イエローベスト」デモとが衝突する真っ只中にいた

パリで土曜日に行われたイエローベストのデモと警察との衝突はかなり暴力化し、逮捕者200人超、6万人もの警察と国家憲兵隊が出動したと言われている。自分はその真っ只中にいた。

最近の動向と同じく穏健な形で終わるかと思って見に行ったのだが、キリスト教のイースターに重なったこと、また大火災に遭ったノートルダムへの大富豪らによる高額寄付に対する怒りが高まっていたこともあり、今回のデモは再び激しさを増した。

警察側の暴力性はかなりのものだった。

催涙ガスを散布するだけでなく、スタングレネードという巨大な爆発音によって一時的な目のくらみ、難聴、耳鳴りを発生させる兵器が何度も用いられた。実際に自分の右耳にもしばらくの間かなりの違和感が残った。

また、数十人のグループで一人の人間を追い回したり、警棒で叩く、足で踏みつけるといった場面にもしばしば出くわした。

デモの一部は最終的に巨大な自由の女神像があるレピュブリック広場に閉じ込められる形になった。警察や憲兵隊によって広場に通じる全ての道が夕方まで封鎖されたのだ。

デモ参加者は様々な主張やフラッグを掲げていた。ラディカルな人々もいたが、その大半は普通の人たちであるように見えた。

フランス全土で行われるイエローベストのデモは、その多くがFacebookのイベントとなっており、誰もが参加できる。

若者だけではなく、高齢の人々も参加していた。非白人の姿も見られたが、それほど多くはなかった。むしろ、少ないなという印象だった。

掲げられる主張は極めて雑多であったが、恐らく一致しているのは反マクロン、反エリート、デモクラシーを普通の人々に取り戻す、といったところだと思う。

ある男性は偽物のデモクラシーではなく真のデモクラシーを求めていると言っていた。それは、水平的で、よりフラットなものなのだという。

元投資銀行家のマクロンがエリートの象徴として嫌われていることは頭では理解していたが、それがどれほどのものかということは、実際にデモの中を一緒に歩いてみるまでは実感できていなかった。

話を聞いた女性は、家賃が払えないためにパリの郊外を離れて公営住宅に引っ越したと言っていた。彼女自身は一着うん十万円もする高級なアパレルブランドの製作部門で働いているという。

デモ参加者に対して文句を言っているおばさんがいた。すぐに口論が始まり、取り囲むデモ参加者たちが「キャピタリスト!キャピタリスト!(資本家の意)」と集団で罵声を浴びせていた。

道端でデモを眺めていた一人の老人に話しかけると、ユーロになったことで、景気が悪くなっても紙幣を刷って刺激することができないからね、と言っていた。

あなたはアンチユーロなのですかとさらに聞くと、いやそうではないんだよ、いいことだってあるからね、とも言っていた。

恐らくたくさんのメディアがいた。以前に警察が放ったゴム弾で片目を失った「英雄」に対して、テレビのクルーがインタビューをしていた。

というよりも、ほぼすべてのデモ参加者がメディアと化していた。誰もがスマホで写真や動画を撮影していた。SNSなどで実況をしていた。警察の暴力もあらゆるカメラが捉えていた。

パリは春とは思えないほど暑く、みな半袖姿で練り歩いていた。もちろん、その多くは黄色いベストや黄色いモチーフを身につけていた。そして定番となっているいくつかの歌を繰り返し繰り返し歌っていた。

蛍光のイエローはとてもよく映える。

誰もがメディアと化した時代において、ここまでの盛り上がりを見せているデモの象徴がこのイエローであったことは偶然とは思えない。

イエローは圧倒的に写真映えがする。反対に、警察のブラックと濃紺は写真映えがしない。

少なくない参加者は缶ビールを持って歩いていた。たばこも吸っていた。真剣さや緊張感もあった、涙も恐怖もあったけれど、一番よく見たのは楽しさや誇らしさのような表情だった。つまり、笑顔だった。

道端では負傷した人々の手当を白いヘルメットをかぶった医療ボランティアたちが行ったり、広場に閉じ込められた人々にレストランの店員が水を振る舞ったりしていた。

一人の老人は誰かが捨てた空のペットボトルを拾って、それに水を入れてもらっていた。誰もが喉が乾いていた。今こそ商機とばかりに広場でケバブの屋台を出す人々もいた。

夕方、広場の封鎖が解除され、昼からずっと閉鎖されていたメトロもようやく動き出した。

疲れ切って広場の端にへたり込んでいた私も立ち上がり、広場からホテルへ、非日常から日常へと戻ることにした。

イエローベストが始まってこれで23週目。今回は特に激しいものだったとはいえ、彼らはこれを毎週やっているのだ。

読んでくださりありがとうございました。写真や動画がたくさんあるので、どこかで上手にお見せする方法を考えています。

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3月13日に『ふたつの日本』という本を出しました。お読みいただけたらとても嬉しいです。

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望月優大

85年生。日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。3/13発売の近刊に『ふたつの日本「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)。現代ビジネス、Newsweekなどに寄稿。株式会社コモンセンス代表として非営利団体等への支援にも携わっている。

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コメント1件

フランスの格差は対岸の火事ではありません。日本も猛烈な勢いで、上と下になっている。もう、中間層が豊富だった事は、完全に過去になってしまった。持ち過ぎず、分け合えば良いと本当に思う。
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