【百科詩典】へいせいまっきのにほん【平成末期の日本】

悲観的な三島由紀夫がそれでも残るだろうと想定した経済大国の地位さえも徐々に失いつつある平成末期の日本に残っているのは、放射能で汚染された国土と、精気を失った人々の群れである。
日々入ってくるニュースは、この国の統治エリートたちのうち、「日本」を存続させようとしう意思を持っている者は少数派に違いないというきわめて苦々しい事実を告げている。
そして、これらエリート層の支配下にある「普通の人々」が、こうした支配に対して抵抗せず、違和感すら持っていないのだとすれば、生物としての最低限の生存本能の衰弱すら疑われる。
この状態が続くならば、平成日本を「自らの歴史」としてとらえる人々は存在しなくなるであろう。

〜白井聡『ポスト・ヒストリーとしての平成時代』