【百科詩典】へいせいのにほんじん【平成の日本人】

なるほど。平成の秘密がわかったぞ。
スマホを装備しインターネットにぶら下がることになったわれわれは、脳を外部化し複数のネットワークでつながることを通じて、一つの巨大な群れになった。
とすれば、多少貧しくても将来に夢がなくても特段に不満はない。
なにしろアイデンティティーが自分にでなく、群れにあるわけだから。
おそらく、この先、平成の次の時代の日本人は、群れどころか、社会性昆虫じみた自意識を獲得することになるはずだ。
働き蜂の社会は、ああ見えて生産性はわりと低いらしい。
幸せなのかどうかはちょっとわからない。
幸せかどうかなどという質問自体、彼らにとっては次元の低い話なのかしれない。

〜小田嶋隆「個人から『群れ』への進化した日本人」