【百科詩典】てんのう【天皇】

今の日本社会を見ていると、この近代市民社会論のロジックはもう破綻していると思います。
「このまま利己的にふるまい続けると、自己利益の安定的な確保さえむずかしくなる」ということに気づくためには、それなりの論理的思考力と想像力が要るわけですけれど、現代日本人にはもうそれが期しがたい。
しかし、それでもまただわが国には「非利己的にふるまうこと」を自分の責務だと思っている人が間違いなく一人だけいる。
それだけをおのれの存在理由としている人がいる。
それが天皇です。

〜内田樹『街場の天皇論』