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シカゴマラソン「僕が注目するランナー ビダン・カロキ選手」 2019/10/13

シカゴマラソンに出場するランナーで、応援したいランナーがいる。
日本の実業団チームに所属するケニア人ランナー、ビダン・カロキ選手だ。(横浜DeNA所属)

ケニア人だが、日本人の魂を持ったランナーといっても過言ではないだろう。
高校1年生の時に来日してから、10年以上日本と接点を持って競技をしている。
NY駅伝で毎年のように見せていたゴボウ抜きで、ご存知の方も多いのではないだろうか。
日本人の魂を持ったケニア人選手といえば、
サムエル・ワンジル選手(仙台育英高出身、北京五輪金メダリスト)が印象深いが、ワンジル選手と同じ出身地、ケニアのニャフルルでカロキ選手は生まれている。

そんな彼について今回は書いていきたい。カロキ選手のことを知っているひとは多いと思うが、メディアが日本人ランナーのように彼のことを深く掘り下げることは恐らくあまりないと思うので、この機会に彼の良さを知ってもらえたらと思う。


僕とカロキ選手はかつてチームメイトで、実業団チームで3年間の短い期間ではあったが彼にはとてもお世話になった。彼は非常に面倒見の良い性格で、競技面でもよくアドバイスをしてくれて学ぶことが多かった。
今年は一時期彼のケニアの家に滞在させてもらって、トレーニングを行っていた。

(行きつけのお店で朝食をご馳走してくれたカロキ選手 いつものメニューと注文すると料理が出てきた…)

僕に限らず、カロキ選手は誰に対しても優しい対応をみせてくれる選手だと思う。
ニャフルルでは自分の練習グループを率いており、そこでは頼れるリーダーとしてメンバーと日々トレーニングを行なっている。まだ実績のないランナーを経済的にサポートしてあげたり、トレーニングのアドバイスを行なったりなど、多くのランナーから尊敬される取り組みを彼は意図せずに行なっている。
ケニアではレースへの出場チャンスさえ与えられていないランナーが多いのが現状で、金銭的な問題からエントリー費用が払えない、ランニングシューズやウェアが満足に用意できないということも多い。
そのような中でも、ひたむきに競技に取り組んでいるランナーが大勢いる。いつ巡ってくるかわからないチャンスを掴もうと日々厳しいトレーニングを積んでいる。カロキ選手のように競技力と経済力があるランナーが、まだ実績のない選手を助けている光景を見ると、チャンスが平等に与えられている日本で競技に取り組んでいる自分は恵まれていると感じた。

(標高2400mのニャフルルでトレーニングをするカロキ選手 この日は1000m(2'50)×12set)

(練習後は選手たちにアドバイスを伝える)

カロキ選手はよくいっていることがある。

「頑張ってトレーニングをしたら、きっといいことがある」
「我慢してやることが大切」

カロキ選手レベルの選手、あるいはケニア人選手でもそう言っていることに正直驚きがあった。トップレベルの選手ほど当たり前のことを継続する大切さを身に染みて知っているのかもしれない。
カロキ選手がケニアでハードなトレーニングをしている様子を目の当たりにすると、才能以前に努力で今の実力を積み上げてきていることを強く感じた。

また彼ほど成功をおさめていれば、母国ケニアではかなりのいい暮らしができる。
現に富を手にして誘惑に負け、走れなくなるランナーは多い。大金を手に入れることで、今までの生活とのギャップが生じてしまい、判断力が欠如してしまうのだ。現に今回トレーニングしていたイテンでも大金を手にして、酒に溺れ、稼ぎがなくなり困窮しているランナーの話を耳にすることがあった。

以前カロキ選手と話していたときに

「ちょっと成功してお酒をたくさん飲んだり、遊んだりして、走れなくなるのはケニア人も日本人も同じ」

ということを言っていた。
なにもケニア人に限った話ではないということを彼から聞いたときに、たしかにケニア人ばかりではないと自分の認識の甘さを感じた。
日本人でも己を律することができずに競技力が低下してしまう選手もいる。
カロキ選手は自分を律する能力が長けているし、物事を長期的に考えることができる。忍耐力もあるし、気持ちの切り替えも上手い。
競技以外の面でも尊敬する点は非常に多いと思う。

カロキ選手の良さを多くの人に知ってもらいたいと思い、今回ちょっとした彼とのエピソードを紹介させて頂いた。
サウナと水風呂が好きで、日本ではよく行きつけの銭湯に行き、地元のおじさんと笑顔であいさつを交わす彼を皆さんに知ってもらえたら嬉しく思う。
今回のシカゴマラソンでは前回大会優勝者のファラー選手をはじめ、強力なライバルたちがたくさんいるが、彼が日頃の成果を発揮し、ベストな走りができることを祈っている。

(ケニアにいる2人の娘と遊ぶカロキ選手 普段は良いパパ)

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