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ソーシャルスティグマ(社会的負の烙印)とは?

コロナウイルス(COVID-19)が世界に蔓延する中で、様々な社会課題も浮き彫りになってきました。その中に「コロナ差別」という課題があり、沖縄県の条例案の中にも「り患者等への不当な差別的取扱、誹謗中傷をしないことを明示」という形で組み込みが検討されています。

そこで注目したいのが「ソーシャルスティグマ(社会的負の烙印)」の考え方です。ソーシャルスティグマとは、「ある特定の特徴をもつ個人や集団を、ある特定の病気と誤って関連付けること」とされています。そしてこれをきっかけに、

・コロナに罹ってしまった、またはその可能性がある人への差別的行為・プライバシーの侵害
・コロナ対応している医療従事者やその家族に対する
差別的行為・プライバシーの侵害
・クラスターが発生した施設や個人への差別的行為・プライバシーの侵害

などが起こってしまいます。

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周りで感染してしまった人がでると、自分や家族が感染していないか知りたい、そのために学校や会社などで「陽性になった人が誰か」と探り合う。その守りの行動は当たり前の防衛かもしれません。

また、世の中には無責任な行動で感染する人がいたり、感染中の心無い行動で感染を拡大させる人もいます。この人たちへの苛立ちも正直あります。

ただ、こういった感染してしまった人を特定しようとする行為が、結果的に社会的結束を弱め、有害な固定概念の形成に拍車をかけてしまいます。

またWHOが「研究により伝染病に関するスティグマと恐怖が対応を妨げることが明らかになっています。」と、このページ下部にリンクした資料内でも明記しています。

感染拡大防止のためだけではなく、これから長引くかもしれないコロナウイルスとの共存時代においては、ソーシャルスティグマをよく理解して、感染してしまった人を気遣い「寄り添える社会」であることがまず必要だと感じます。

感染してしまった人たちは新たな不安に悩まされます。誰かに移してないか。回復した後にもとの生活に戻っても変な目で見られないか。もしあなたが感染してしまった時にどう思うか、これを想像してみることが寄り添うことへの第一歩かもしれません。

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この「ソーシャルスティグマ」を理解するために、国際赤十字連盟、UNICEF、WHOが合同で作ったガイドがあります。「私は差別なんてしていない」と思っていましたが、読んだことで反省すべき言葉遣いなどがありました。

対象者は、政府や報道機関、地域の組織とされていますが、私たちが知ることにも意味があるのではないかと思います。非公式ながら日本語に翻訳されているので、ぜひ一度ご覧ください。

以下、資料より一部抜粋です。リンクと資料は最下部にアップしています。

社会的スティグマとは?

保健医療に関する社会的スティグマとは、ある特定の特徴をもつ個人や集団を、ある特定の病気と誤って関連付けることを指します。感染症流行時には、特定の人々が疾患と直感的に結びつけられることによって、レッテルを張られ、固定観念を持たれ、差別を受け、阻害され、その社会的地位が損なわれることになります。

このような扱いは、疾患を抱える人々だけでなく、介護者、家族、友人、地域社会にも悪影響を与える可能性があります。病気ではないのに、スティグマの対象となる集団と関連する特徴をもつ人々もスティグマに苦しめられる可能性があります。

現在のCOVID-19の流行は、特定の民族的背景を持つ人々に留まらず、ウイルスに接触したと思われる人に対しても、社会的スティグマや差別的な行動を引き起こしています。

COVID-19は、何故これほどのスティグマを引き起こしているのか?

COVID-19に関連したスティグマのレベルは、主に以下の3つの要因に基づいています。

1)新しい、未だ不明な点が多い疾患であるということ
2)私たちはしばしば未知のものを恐れるということ
3)その恐怖を「他者」と関連付けるのは容易であるということ

一般の人々の間に混乱、不安、恐れがあることは理解できることですが、残念なことに、これらの要因が有害な固定観念を形成することに拍車をかけています 。

どんな影響があるのか?

スティグマは、社会的結束を弱め、特定の集団の社会的孤立を促進し得ます 。これにより、ウイルスが広がりやすくなる状況に寄与する可能性があり、 その結果、より深刻な保健課題が引き起こされ、感染症の流行を制御することがより困難になる可能性があります 。

スティグマは、
• 差別を避けるために疾患を隠すよう人々を駆り立て
• 人々がすぐに医療を受けることを阻害し
• 人々が健康的な行動をとる意欲を損なわせます

社会的スティグマへの対処方法

これまでの研究で、伝染病に関するスティグマと恐怖が対応を妨げることが明らかになっています。信頼できる医療サービスや推奨事項に対する信頼を築き、影響を受けた人に共感を示し、疾患そのものを理解し、人々が自身や家族の安全を保つために効果的で実用的な手段を採用することが効果的です。

病気と闘い、恐怖やスティグマに拍車をかけるのを防ぐための効果的な行動を人々が取れるよう支援するには、COVID-19 についてどのように伝えるかが重要です。病気やその影響を、オープンに、正直に、効果的に議論し、対処できる環境を作る必要があります。

複雑な社会的スティグマへの対処と回避に関して、いくつかのヒントを以下に示します。

1. 言葉を大切に:新型コロナウイルス感染症について話すときにすべきこと、すべきでないこと
2. それぞれの役割を果たす:スティグマを追い払うためのシンプルなアイデア
3. コミュニケーションのヒントとメッセージ

言葉を大切に

コロナウイルス病について話すとき、特定の単語(例:疑い例、隔離など)や言い回しが、人々にとって否定的な意味を持ち、差別的態度を助長させることがあります。

これらは既存の否定的な固定観念や憶測を持続させ、疾患と他の要因との間の誤った関連性を強化し、広範な恐怖を生み出し、病気を抱える人々の人間性を否定する可能性があります。

これによって、スクリーニングや検査、隔離を避けるよう人々を駆り立てる可能性があります。メディアを含むすべてのコミュニケーションチャンネルでは、人々を尊重し、力を与える「一人一人を大切にする言葉(’people-first’ language)」を使うことを推奨します。

メディアで使用される言葉は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する一般的な言葉づかいやコミュニケーションを形成するため、特に重要です。

否定的な報道は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疑いのある人々や患者、その家族、流行の影響を受けたコミュニティがどのように認識され、対応されるかに影響を及ぼす可能性があります。

包摂的で差別のない言葉遣いが、HIV、結核、豚インフルエンザ2などの大規模な流行を制御するのにどう役立つかについて、多くの具体例があります。

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この続きは、以下PDFにてご覧ください。(リンクはWHOの設定に依存していて、表示が一部崩れています。PDF自体もアップします。「covid19-stigma-guide_JP」が日本語版です。)

病の恐怖に駆り立てられる状況ですが、「私はコロナになりました。」と言っても差別なく支えあえる世界を目指し、ゆいマスクプロジェクトは活動してまいります。