異世界花屋(1話)
わたしはサク10歳。
可愛いピンクの髪色は気に入ってるけど、身長が低いのが悩み。
最近花を見るのが楽しみになっている。
今日も、近所に出来た花屋さんに来ていて。
ここのお店は、買わなくても文句を言われないから好き。
お店の名前は『花と薬草のお店アン』
花と薬草を取り扱っている珍しい花屋さん。
店長のアンさんは、いつもニコニコしていて優しい。
花を見ているだけの、わたしにも優しくしてくれる。
色とりどりのカラフルなお花が、鉢に植えられて並んでいる。
「今日はお花と、どんなお話をしていたの?」
赤い髪に緑のエプロンを着たアンさんが、しゃがんでわたしに視線を合わせる。
わたしは身長が低いからね。
大きくなれば背が伸びるかな?
「マリーゴールドは、今日は暖かくて気持ちいいって言ってる」
アンさんはじょうろでお花たちに水をあげていた。
葉っぱの上の雫はキラキラと輝いていて、お花たちは気持ち良さそう。
ちょうちょもお花の香りにつられてやって来たみたい。
「うんうん。今日は暖かくて穏やかだね」
わたしは植物の言葉が何となく分かる。
こういうのスキルっていうらしい。
人それぞれスキルは違うみたいで、お仕事にする人が多いみたい。
眩しそうに、お日様を見るアンさんは可愛い。
いつも笑顔のアンさんだけど、背が高くて、髪の黒い男性が来ると、とても嬉しそうにしている。
楽しそうに笑っている。
男の人もアンさんと楽しそうに話している。
恋人なのかな?
何だか憧れちゃうな。
いつかわたしにも、そういう人が現れるのかな?
****
「サク何処へ行ってたんだい」
家に帰るとお母さんに聞かれた。
「近所の花屋さんへ・・」
お母さんはため息をつきながら言った。
「迷惑じゃなければいいけどね。今度、挨拶にお店に行ってみようかね」
多分大丈夫だと思うけど・・。
****
次の日、お母さんと花屋さんへ行った。
「いらっしゃいませ~ってあら」
ニコニコしながら、アンさんが話しかけてきた。
「いつも家の娘がすみません。ご迷惑になっていないですか?」
「気になさらなくても結構ですよ。サクちゃんと話していると和みますし」
「あれ?あんた、アンじゃないかぃ。じゃあ、作ったお店というのはここかい?」
「店長さん、お久しぶりです」
どうやら、お母さんとアンさんは知り合いだったようだった。
しばらく談笑した後、お母さんは珍しく観賞用の花を買って家に持ち帰った。
お家にお花がある~。
鉢植えの花じゃなくて、切り花というやつらしい。
花瓶に入れられたお花はキレイに咲いている。
赤と黄色のチューリップ、かすみ草、緑の葉も一緒に入っていた。
お花が家にあるだけで雰囲気が華やかになるから不思議だ。
でも長く生きられなさそうな気がする・・。
「お母さん、お花キレイだけどすぐ死んじゃうのかな・・」
お母さんはぎょっとして
「サクは賢いのかね。そのお花は数週間で枯れてしまうんだよ。鉢植えのお花ならもっと長生きするだろうけどね。将来はお花屋さんになりたいのかい?」
「わかんない」
「そっか。優しい子に育ってくれればいいよ」
お母さんは、優しくわたしの頭を撫でていた。
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