異世界花屋(5話・終話)
わたしは今日で15歳になった。
相変わらず、『花と薬草のお店アン』のお店に行っているのは変わらないけど。
最近では、お手伝いをさせてもらうようになった。
お手伝いと言っても、ちゃんとバイト代としてお金は貰っている。
お花と一緒にいるのがなにより楽しいから。
わたしも緑のエプロンを身にまとい接客をする。
実はアンに、内緒にしていることがある。
アンの旦那様、ミライさんの事が気になっている。
もちろん片思いなんだけど。
お手伝いさせてもらえなくなりそうだから絶対に内緒だ。
「今年はサクラは飾らないんですか?」
「あ~今年はね、マリー花をメインにやっていこうと思っているのよ」
マリー花は、マジックポーションを作るのに必要と言われている花で貴重品だ。
ミライさんはマリー花の植樹を成功させたので、このお店の看板にしようとしているみたいだった。
見た目はサクラの花にそっくりで色は真っ白だ。
「これはね、本物なの。以前に小さい木をもらってきて植えたのが増えたのよね」
大元の樹は極秘の所にあって、手に入れるのが大変だったそうだ。
昔は沢山あった木も今は確認されていない。
「そんな珍しい物を出して大丈夫なんですか?」
「確かにちょっと心配なんだけどね・・」
この花屋は冒険者がよく来ることもあって、ガラが悪い連中が目を付けて強盗されたりしてもおかしくはない。
今でも冒険者ギルドで依頼に出されているくらいなんだから。
『大丈夫だよ』
優しい声が聞こえた。
「あれ?アンさん何か言いましたか?」
「いいえ?何も?」
確かに何かハッキリ言葉が聞こえた気がしたんだけど。
まさかお花の言葉じゃないよね。
わたしはが聞こえる花の言葉は、いつもそんな気がするって程度だから。
マリー花の販売を実際始めて、心配することは何も起こらなかった。
貴重な花なので、胡蝶蘭(こちょうらん)と同じくらいの値段だ。
わたしが不思議に思っていると
『花の聖女様のいるお店なんだもん。悪い事を考えている人はこの店に近寄れなくなっているんだよ』
今度ははっきり聞こえた。
どうやら鉢植えの赤いガーベラが話しているようだった。
「聖女様って何?まあ、来れなくなっているのなら良かったけれど・・」
花に向かって話していると、アンさんが近づいてきた。
「あら、お花に話しかけてるの久しぶりね。最近無かったんじゃない?」
アンさんはわたしが、お花と話をしているだけと受け取ったみたいだ。
実際そうなのだけど。
つうか聖女って何?
わたしはガーベラの話をもっと聞きたくなり、購入して持ち帰ることにした。
「いつも優しい色のお花が好きなのに珍しいね。赤もいいわよね」
アンさんがガーベラを包装してくれる。
わたしはパステルカラーが好きなのだ。
ハッキリとした色の花は実際好みじゃない。
でも今回は緊急事態だから・・。
自分の部屋にガーベラを置き、耳を傾ける。
聞いた話によるとかなり驚くような内容だった。
これからわたしは、とんでもない事に巻き込まれていくことになるんだけど。
この先のお話はまた次の機会に。
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