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令和にクジャの尻を追いかけた話3

※ネタバレがあります※
※原作を既にプレイ済みの方だけお読みください※
※そうじゃない人間は今すぐFF9をプレイしろ※
※アルティマニア未読です※

この記事は腐女子が作成しています。なんでもありの人のみがお読みください。クレームやカップリングの指向など注文は一切受け付けません。
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クジャという男。顔は最高なのに行儀がとてもよろしくない。
顔100点、体100点、ファッション100点(人によっては0点かもしれない)、性格はドブカスゴミクズ、行いはマイナス100億点のようなキャラ。

銀の竜の背に乗って届けに行くのはだいたい死!街を破壊し、国を滅ぼし、無数の命を奪うクソ野郎なのには変わりがない。

なんの擁護もできない極悪非道キャラであり、プレイ時にはなぜここまで局所的に人気があるのかわからなかった。(こんなんでも銀髪長髪男性総選挙24位だった)

「きっと顔が良いだけで許されているんだ…どんなに惨い行いをしたとしても背景に悲しい過去と人に負けることのない容貌さえあれば何でも許されてしまうんだ…おのれルッキズム…おのれ顔ファン、ついでにスクウェア・エニックス…」と恨めしく思っていたのだが、事情は後半に差し掛かると変わってくる。

そうガーランドの登場である。
今までイキりにイキっていたクジャだが、ガーランドの登場によってそれまでの余裕が嘘のように焦り始めるのだ。敵味方を翻弄し、命を弄ぶ残虐なショーを楽しんでいたクジャは直接戦闘を行う機会はないものの、作中最強格として君臨していた。それなのに自分よりも強い上位存在が現れることで、突如その玉座から引きずり落されてしまう。そう、彼自身も役者として舞台に上がることになるのだ。

クジャというキャラクターの初見での印象は、冷淡で残虐なナルシスト。芝居がかった口調のいけ好かない奴だった。しかし物語が進むにつれてその仮面も剝がされていく。追いつめられると声を荒げ、他人に当たり散らし、しまいには自暴自棄になる。一応は強敵なのに、落ち着きがなく、威厳もなく、カリスマ性もないラスボスにあるまじき造形。(ラスボスではないのだが…)だけれどもそんな強さよりも弱さに焦点を当てたキャラクターであることにひどく心を打たれた。

クジャはどうしようもなく不安定で不完全で、どこまでも人間くさい。
だけれどもそこがいい。作中の中でも苦悩する人間として描かれている。

確かにやっていることは極悪非道なのだが、その成り立ちを知ってしまうとなんとも言えなくなる。ガイアに戦乱をもたらすことがクジャの役目だからだ。

クジャの説明をする時に必ず登場させないといけないのが、先述のガーランドと主人公のジタンである。

FF9の後半シナリオはまさしく世界観が一変する話であり、今までの常識が覆される展開となる。メインとなるのはジタンの出生秘話であり、そこから文字通り世界が広がることになるのだ。

主人公のジタンは普段は飄々としていて軽薄なところもあるものの、頼れる兄貴分でもあり、怒る時には怒る(それも自分のためではなく他人のために)正義感の強い熱血漢である。困っている人を見捨てられない情の厚さと、敵にも情けをかける懐の広さを併せ持つ魅力的な人物であり、仲間の中でみんなをグイグイと引っ張っていくというよりは、自然とリーダーになってしまうタイプで、みんながみんなジタンに惚れ込んで付いて来てしまうといった具合。別にジタンは強制もしないので、勝手にサラマンダー(仲間)が出て行っても文句は言わず、サラマンダーが困ったら助けにいくという流れになる。ジタンのリーダーとしての在り方はグループ内での調整役でもあり、過干渉も放棄もしないといった付かず離れずの心地よい距離感の人間関係を築いている。

ここまで来るとジタンのことをなんてよくできた人間なんだと思うかもしれないが、そのよくできたところが問題点なのだ。生粋の問題児であるクジャには暴れるといった手段が取れるので周囲も異変に気づきやすいが、優等生タイプであるジタンは周囲に異変を悟られまいとするので問題が表出化されにくい。むしろ自分のことより他人に気を遣うタイプで自分のことをおざなりにする、人からはよく頼られるのに、人を頼ることはできないという人間関係のギブアンドテイクが超下手な性格であるので、最後の最後まで自分一人で抱え込みドカンと噴出してしまう…

つまりジタンという人間は明るいムードメーカーに見えて、どこまでも心の領域に他人を踏み込ませないタイプの鉄壁人間なのだ。ナンパが好きなスケベ男という設定であるにも関わらず、深く入り込んだ関係は苦手で女の子と一線を越えたことがない。道中では意中の相手であるダガーと結婚することになるのだが、あれだけグイグイアピールしたにも関わらず、相手の方から来られると躊躇する一面もあり、何も考えていないように見えて、深く考え過ぎるところがある。そういう軽薄さの裏に隠れた、秘密主義者の一面や他人への警戒心の強さ、内部に抱え込んだ深い闇を知ってしまうと「う゛ぅ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん゛」と唸ることしかできなくなる。

ジタンが人に囲まれているにも関わらず、どうしてこんなにも生き辛く、また孤独かというとその出生が関わって来る。ジタンは元々孤児であり、育て親であるバクーによって拾われ、盗賊団タンタラスの一員として暮らすことになった。

つまりは自分のルーツというものを知らない。しかも種族が多様なガイアにおいても自分と同じような尻尾を持つ種族がいないとくる。また、ジタンは自分の強さをひた隠しにして来たキャラでもあった。おまけに頭の回転も早く身体能力も卓越している。そしてイケメンでもある。一見するとパーフェクトな人間像なのだが、そういう才能に溢れた自分というものにどこか恐怖を感じているように思える。クジャが集団の中で自分だけが優れていると主張したいタイプなのに比べると、ジタンは集団の中でみんなと同じように暮らしたいタイプである。それなのに周囲からかけ離れた自分、それも存在自体が不明である違和感に苦しんでいる。ジタンがコンプレックスを克服し周囲と真の意味で対等になるのは本当に最後の最後であるのだが、それまではナチュラルに仲間を見下すような言動が見られるところがキャラクターとしては面白い。ジタンはエリートゆえの傲慢さを兼ね備えており、そんなところが親であるガーランドからするとクジャに似ていると指摘されてしまう。

そう、今まで長々とジタンについて書いてきたのだけど(本当はクジャについてのみ書くつもりだった)それができなかったのは、クジャの人物像を知るにはジタンを考える必要があり、ジタンの人物像を知るにはクジャを考える必要があるからだ。

クジャの芝居がかった台詞やジタンの軽薄な態度はどれも本当の自分を隠すための演技や仮初の人格のようにも思えてくる。生まれ育った環境のせいで正反対に育ってしまったが、根っこの部分だけは共通しているのがクジャとジタンなのかもしれない。

クジャとジタンの実際の関係性はガーランドを親とした兄と弟なのだが、それ以上の深い関係にあると個人的には思っている。そもそもそう意図して作られ、また設置されていると感じる。二人は鏡写しのキャラクターでもあり、もう一つの可能性であり、魂の双子でも、もう一人の自分でもある。なので、二人の和解は自己愛への目覚めとも感じられるのだ。

二人について考えだすと文章が長くなるので今日はここら辺で割愛。

追記
羽生くんのブランケットを買いました。クジャのグッズ欲しいなぁ

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