『静かな小舟』より

子どもとは〈生まれながらのよそ者〉である。この点に関して、ルイーズ・ブリュレの供述文は疑いの余地がない。「この世に産み落して以来息子には会ってはいなかったので、今の姿を見せられても自分の子かどうか分からない」ルイーズ・ブリュレによるこの見解は、われわれ一人ひとりの起源についての核心を突いている。時代や国籍がなんであれ、子どもとはひとりのよそ者なのだ。そもそも人類の運命全体が、死という未知の存在に託された、産み落された未知の存在なのだから。わたしが今、ここに転記している資料をアルレット・ファルジュから受け取ったのは、カレイやにんにくの効いたビュロ貝をビュシー通りで彼女と一緒に食べていた頃だ。わたしはそのとき決めたのだ、ルイーズ・ブリュレが乳飲み児たちの運搬人と呼んだものを、運命と呼ぶことを。


パスカル・キニャール 小川美登里 訳『静かな小舟』(水声社)

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